「デンジャー・ゾーン 」(英 : Danger Zone )は、ジョルジオ・モロダー が作曲、トム・ホイットロック (英語版 ) が作詞、米国のシンガーソングライターであるケニー・ロギンス がレコーディングし、1986年 にリリースされた曲。この曲は、同年のアメリカ映画『トップガン 』のサウンドトラックアルバムからシングルカットされヒットした曲の一つであり、そのアルバムはサウンドトラックアルバムとしては、同年に最も売れたのみならずこれまでで最も売れたものの一つである[ 1] [ 2] 。Allmusic.com によると、このアルバムは「80年代半ばの典型的作品と今でもみなされており」、そのヒットは「当時のポップチャートを席巻していた、けれん味のある芝居がかった音作りを特徴づけている」[ 2] 。
背景
映画プロデューサーのジェリー・ブラッカイマー とドン・シンプソン 、および音楽監督のマイケル・ディルベックは、『トップガン』用として300以上の曲を用意していた。彼らは空母でのオープニング・シーンのラッシュ(編集前のフィルム)に使う曲を吟味していたが満足するものが無く、ブラッカイマーはサウンドトラック・プロデューサーのジョルジオ・モロダー に何か作って欲しいと頼んだ。モロダーはトム・ホイットロック (英語版 ) の助けを借りながら「デンジャー・ゾーン」を書き、ジョー・ピズーロ (英語版 ) がデモを録音した。サウンドトラックの配給元となるコロムビア・レコード は、プロデューサーらの許可を得て、自らのレーベルに属するアーティストで「デンジャー・ゾーン」を演じさせてほしいとモロダーに求めた[ 3] 。
当初は TOTO がこの曲を演じることになっていたが、『トップガン』のプロデューサーらと TOTO の弁護士らとの間で法的な折り合いがつかず、その話は流れた[ 4] 。2018年の AXS TV のインタビューでケニー・ロギンス が語ったところでは、当初はジェファーソン・スターシップ にこの曲が提供されるところだったが、結局プロジェクトから外されたとのことである[ 5] 。
コリー・ハート も「デンジャー・ゾーン」の演奏を持ちかけられていたが、どうせなら自作曲を演奏したいとして辞退した[ 6] 。また、2022年にロギンスがインタビューで語ったところでは、REOスピードワゴン のヴォーカリスト、ケヴィン・クローニン (英語版 ) も曲のキーが高すぎるとしてオファーを断ったとロギンスに話していたという。なお、ロギンスの見解として「おそらく当初の第一候補は世界屈指のハイトーンヴォイスの持ち主であるスターシップ のミッキー・トーマス だった気がするが、担当弁護士と折り合いが付かずに話が流れたのではないか」と述べている[ 7] 。
結局、映画プロデューサーらはロギンスに曲を提供し、ロギンスはレコーディングへの同意を即断した[ 4] [ 8] 。ホイットロックはロギンスのエンシノ の家を訪ねて詞を渡し、ロギンスは即興で自ら詞を追加した[ 3] 。「デンジャー・ゾーン」は Billboard Hot 100 で2位にまでつけたが、ピーター・ガブリエル の「スレッジハンマー 」に阻まれて1位には届かなかった。この曲はロギンスにとって、1984年に1位となった「フットルース 」に次ぐヒットとなった。2008年のインタビューでロギンスは、「デンジャー・ゾーン」はアーティストとしての自分を代表する作品ではないと述べた[ 8] 。
2018年にロギンスが TMZ からの取材で語ったところでは、『トップガン マーヴェリック 』で使うための新バージョン制作について彼は主演のトム・クルーズ と議論しているとのことだった[ 9] 。しかし最終的に、オリジナルのバージョンが使われることになった。ロギンスの話によると、第一作の曲を聴くことで当時と同じ感覚を呼び起こしたいとクルーズは望んでいたとのことである[ 10] [ 11] 。
概観
1980年代のハードロック バンドであるジャイアント のリードシンガー兼ギタリストのダン・ハフ (英語版 ) が、本曲でギターを担当した。ベースラインはヤマハ・DXシリーズ のシンセサイザーで演奏された。テナー・サクソフォーン が曲の終わり近くに追加されている。本曲は1986年7月26日の週に全米 Billboard Hot 100 の2位となった。FM東京 の青山悌三 は本作品について「フットルース で実績のあるケニー・ロギンスのリズミカルで迫力のある唄い方、エネルギッシュな音作りは、(トップガン の)オープニングにふさわしく、われわれを映画の世界へストレートに導いてくれる」と評している[ 12] 。
ミュージック・ビデオ
ミュージック・ビデオは、1986年5月に曲のプロモーションの一環で公開された。監督はトニー・スコット で、ロギンスが歌う姿とともに、スコット自身が監督した映画『トップガン』からもいくつかシーンが挿入された。
クレジット
チャート
週間チャート
年間チャート
認定
脚注
^ Denisoff, R. Serge; Romanowski, William D. (2011-12-31) (英語). Risky Business: Rock in Film . Transaction Publishers. ISBN 9781412833370 . https://books.google.com/books?id=KeDOCwAAQBAJ&q=best+selling+soundtracks+top+gun&pg=PT446
^ a b “Top Gun [Original Motion Picture Soundtrack - Original Soundtrack | Songs, Reviews, Credits | AllMusic]”. AllMusic . 2017年5月19日 閲覧。
^ a b “Back to the 80s: Interview with Tom Whitlock, co-writer of 'Take My Breath Away' & more – Kickin' it Old School ”. 2016年1月19日 閲覧。
^ a b “Top Gun (Soundtrack) ”. TOTO Official Website (2007年4月29日). 2022年6月3日 閲覧。
^ AXS TV (29 May 2022). Kenny Loggins Reveals How "Danger Zone" from Top Gun Came to Life . YouTube . 2022年6月3日閲覧 。
^ “Corey Hart ”. Encyclopedia of Music in Canada (2013年12月16日). 2019年8月26日 閲覧。
^ Wood, Mikael (2022年5月26日). “Loggins rides into 'Danger Zone' once more” . Los Angeles Times . https://www.latimes.com/entertainment-arts/music/story/2022-05-26/kenny-loggins-danger-zone-top-gun-maverick-tom-cruise
^ a b Springfield News-Sun "Kenny Loggins Will Cut Footloose at Kuss: singer's adaptability has kept career going since '70s" October 9, 2008 p.B1
^ “Kenny Loggins is recording a new version of "Danger Zone" for Top Gun: Maverick ”. Consequence of Sound (2018年6月7日). 2018年8月22日 閲覧。
^ “Kenny Loggins Re-Recorded ‘Danger Zone’ for ‘Top Gun: Maverick’ — Why the Sequel Passed On It ” (英語). Variety (2022年5月31日). 2022年6月6日 閲覧。
^ Lenker, Maureen Lee (2022年5月31日). “Kenny Loggins recorded a new version of 'Danger Zone' that wasn't used in Top Gun: Maverick ” (英語). Entertainment Weekly . 2022年6月6日 閲覧。
^ 青山悌三「名画に名曲ありき・・・」『トップガン劇場パンフレット』東宝出版・商品販促室、1986年12月6日。
^ Kent, David (1993). Australian Chart Book 1970–1992 (illustrated ed.). St Ives, N.S.W.: Australian Chart Book. p. 180. ISBN 0-646-11917-6 N.B. The Kent Report chart was licensed by ARIA from mid-1983 until June 12, 1988.
^ “Kenny Loggins – Danger Zone (song) ” (ドイツ語). GfK Entertainment. 2019年12月10日 閲覧。
^ “Kenny Loggins - Danger Zone ”. charts.org.nz. 2022年6月1日 閲覧。
^ “Kenny Loggins - Danger Zone ”. hitparade.ch. 2022年6月1日 閲覧。
^ “Official Charts Company ”. Official Charts Company. 2019年12月10日 閲覧。
^ “Billboard > Kenny Loggins Chart History > Hot 100” . Billboard . https://www.billboard.com/artist/kenny-loggins/chart-history/hsi/ 2019年12月10日 閲覧。 .
^ “Billboard > Kenny Loggins Chart History > Mainstream Rock Songs” . Billboard . https://www.billboard.com/artist/kenny-loggins/chart-history/rtt/ 2019年12月10日 閲覧。 .
^ “Kenny Loggins ”. 2022年6月1日 閲覧。
^ “IRMA – Irish Charts ”. Irish Recorded Music Association . 2022年6月4日 閲覧。
^ a b “NZ Hot Singles Chart ”. Recorded Music NZ (2022年6月6日). 2022年6月4日 閲覧。
^ “Kent Music Report No 650 – 29 December 1986 > National Top 100 Singles for 1986 ”. ケント・ミュージック・レポート , via Imgur.com. 2019年12月10日 閲覧。
^ “1986 The Year in Music & Video: Top Pop Singles”. Billboard 98 (52): Y-21. (1986-12-27).
^ "Danish single certifications – Kenny Loggins – Danger Zone" . IFPI Danmark. 2021年10月1日閲覧 。 Click on næste to go to page 9909 if certification from official website
^ "Japanese single certifications – Danger Zone" (Japanese). Recording Industry Association of Japan . 2016年12月27日閲覧 。 Select 2016年4月 on the drop-down menu
^ "British single certifications – Kenny Loggins – Danger Zone" . British Phonographic Industry . 2021年11月16日閲覧 。
外部リンク
スタジオ・アルバム
未来への誓い (1977)
ナイトウォッチ (1978)
キープ・ザ・ファイア (1979)
ハイ・アドヴェンチャー (1982)
ヒューマン・ヴォイス (1985)
バック・トゥ・アヴァロン (1988)
リープ・オブ・フェイス〜愛を信じて (1991)
リターン・トゥ・プー・コーナー (1994)
アンイマジナブル・ライフ (1997)
ディセンバー (1998)
モア・ソングス・フロム・プー・コーナー (2000)
イッツ・アバウト・タイム (2003)
ハウ・アバウト・ナウ (2007)
オール・ジョイン・イン (2009)
ライヴ・アルバム
アライヴ (1980)
アウトサイド・フロム・ザ・レッドウッズ (1993)
コンピレーション・アルバム 楽曲 関連項目