デンジャー・ゾーン (ケニー・ロギンスの曲)

デンジャー・ゾーン
ケニー・ロギンス楽曲
収録アルバムトップガン オリジナル・サウンドトラック英語版
英語名Danger Zone
リリース1986年5月13日
録音1986年1月
ジャンルロック
時間3:36
レーベルコロムビア
作詞者トム・ホイットロック英語版
作曲者ジョルジオ・モロダー
プロデュースジョルジオ・モロダー
その他収録アルバム
トップガン マーヴェリック: オリジナル・サウンドトラック

デンジャー・ゾーン」(: Danger Zone)は、ジョルジオ・モロダーが作曲、トム・ホイットロック英語版が作詞、米国のシンガーソングライターであるケニー・ロギンスがレコーディングし、1986年にリリースされた曲。この曲は、同年のアメリカ映画『トップガン』のサウンドトラックアルバムからシングルカットされヒットした曲の一つであり、そのアルバムはサウンドトラックアルバムとしては、同年に最も売れたのみならずこれまでで最も売れたものの一つである[1][2]。Allmusic.com によると、このアルバムは「80年代半ばの典型的作品と今でもみなされており」、そのヒットは「当時のポップチャートを席巻していた、けれん味のある芝居がかった音作りを特徴づけている」[2]

背景

映画プロデューサーのジェリー・ブラッカイマードン・シンプソン、および音楽監督のマイケル・ディルベックは、『トップガン』用として300以上の曲を用意していた。彼らは空母でのオープニング・シーンのラッシュ(編集前のフィルム)に使う曲を吟味していたが満足するものが無く、ブラッカイマーはサウンドトラック・プロデューサーのジョルジオ・モロダーに何か作って欲しいと頼んだ。モロダーはトム・ホイットロック英語版の助けを借りながら「デンジャー・ゾーン」を書き、ジョー・ピズーロ英語版がデモを録音した。サウンドトラックの配給元となるコロムビア・レコードは、プロデューサーらの許可を得て、自らのレーベルに属するアーティストで「デンジャー・ゾーン」を演じさせてほしいとモロダーに求めた[3]

当初は TOTO がこの曲を演じることになっていたが、『トップガン』のプロデューサーらと TOTO の弁護士らとの間で法的な折り合いがつかず、その話は流れた[4]。2018年の AXS TV のインタビューでケニー・ロギンスが語ったところでは、当初はジェファーソン・スターシップにこの曲が提供されるところだったが、結局プロジェクトから外されたとのことである[5]

コリー・ハートも「デンジャー・ゾーン」の演奏を持ちかけられていたが、どうせなら自作曲を演奏したいとして辞退した[6]。また、2022年にロギンスがインタビューで語ったところでは、REOスピードワゴンのヴォーカリスト、ケヴィン・クローニン英語版も曲のキーが高すぎるとしてオファーを断ったとロギンスに話していたという。なお、ロギンスの見解として「おそらく当初の第一候補は世界屈指のハイトーンヴォイスの持ち主であるスターシップミッキー・トーマスだった気がするが、担当弁護士と折り合いが付かずに話が流れたのではないか」と述べている[7]

結局、映画プロデューサーらはロギンスに曲を提供し、ロギンスはレコーディングへの同意を即断した[4][8]。ホイットロックはロギンスのエンシノの家を訪ねて詞を渡し、ロギンスは即興で自ら詞を追加した[3]。「デンジャー・ゾーン」は Billboard Hot 100 で2位にまでつけたが、ピーター・ガブリエルの「スレッジハンマー」に阻まれて1位には届かなかった。この曲はロギンスにとって、1984年に1位となった「フットルース」に次ぐヒットとなった。2008年のインタビューでロギンスは、「デンジャー・ゾーン」はアーティストとしての自分を代表する作品ではないと述べた[8]

2018年にロギンスが TMZ からの取材で語ったところでは、『トップガン マーヴェリック』で使うための新バージョン制作について彼は主演のトム・クルーズと議論しているとのことだった[9]。しかし最終的に、オリジナルのバージョンが使われることになった。ロギンスの話によると、第一作の曲を聴くことで当時と同じ感覚を呼び起こしたいとクルーズは望んでいたとのことである[10][11]

概観

1980年代のハードロックバンドであるジャイアントのリードシンガー兼ギタリストのダン・ハフ英語版が、本曲でギターを担当した。ベースラインはヤマハ・DXシリーズのシンセサイザーで演奏された。テナー・サクソフォーンが曲の終わり近くに追加されている。本曲は1986年7月26日の週に全米 Billboard Hot 100 の2位となった。FM東京青山悌三は本作品について「フットルースで実績のあるケニー・ロギンスのリズミカルで迫力のある唄い方、エネルギッシュな音作りは、(トップガンの)オープニングにふさわしく、われわれを映画の世界へストレートに導いてくれる」と評している[12]

ミュージック・ビデオ

ミュージック・ビデオは、1986年5月に曲のプロモーションの一環で公開された。監督はトニー・スコットで、ロギンスが歌う姿とともに、スコット自身が監督した映画『トップガン』からもいくつかシーンが挿入された。

クレジット

チャート

週間チャート

「デンジャー・ゾーン」の週間チャート
チャート(1986年-1987年) 最高位
オーストラリア(ケント・ミュージック・レポート[13] 14
カナダ(RPM 7
ドイツ(GfK[14] 12
ニュージーランド[15] 12
スイス[16] 6
イギリス[17] 45
アメリカ(Billboard Hot 100[18] 2
アメリカ(キャッシュボックス 4
アメリカ(ビルボード・メインストリーム・ロック)}[19] 7
「デンジャー・ゾーン」の週間チャート
チャート(2022年) 最高位
Billboard Global 200[20] 151
アイルランド(IRMA[21] 90
ニュージーランド(RMNZ[22] 13

年間チャート

「デンジャー・ゾーン」の年間チャート
チャート(1986年) 最高位
オーストラリア(ケント・ミュージック・レポート[23] 62
アメリカ(Billboard Hot 100[24] 42

認定

「デンジャー・ゾーン」が受けた認定
国/地域 認定 認定/売上数
デンマーク (IFPI Danmark)[25] Gold 45,000double-dagger
日本 (RIAJ)[26]
Digital single
Platinum 250,000*
ニュージーランド (RMNZ)[22] Platinum 30,000double-dagger
イギリス (BPI)[27] Platinum 600,000double-dagger

* 認定のみに基づく売上数
double-dagger 認定のみに基づく売上数と再生回数

脚注

  1. ^ Denisoff, R. Serge; Romanowski, William D. (2011-12-31) (英語). Risky Business: Rock in Film. Transaction Publishers. ISBN 9781412833370. https://books.google.com/books?id=KeDOCwAAQBAJ&q=best+selling+soundtracks+top+gun&pg=PT446 
  2. ^ a b Top Gun [Original Motion Picture Soundtrack - Original Soundtrack | Songs, Reviews, Credits | AllMusic]”. AllMusic. 2017年5月19日閲覧。
  3. ^ a b Back to the 80s: Interview with Tom Whitlock, co-writer of 'Take My Breath Away' & more – Kickin' it Old School”. 2016年1月19日閲覧。
  4. ^ a b Top Gun (Soundtrack)”. TOTO Official Website (2007年4月29日). 2022年6月3日閲覧。
  5. ^ AXS TV (29 May 2022). Kenny Loggins Reveals How "Danger Zone" from Top Gun Came to Life. YouTube. 2022年6月3日閲覧
  6. ^ Corey Hart”. Encyclopedia of Music in Canada (2013年12月16日). 2019年8月26日閲覧。
  7. ^ Wood, Mikael (2022年5月26日). “Loggins rides into 'Danger Zone' once more”. Los Angeles Times. https://www.latimes.com/entertainment-arts/music/story/2022-05-26/kenny-loggins-danger-zone-top-gun-maverick-tom-cruise 
  8. ^ a b Springfield News-Sun "Kenny Loggins Will Cut Footloose at Kuss: singer's adaptability has kept career going since '70s" October 9, 2008 p.B1
  9. ^ Kenny Loggins is recording a new version of "Danger Zone" for Top Gun: Maverick”. Consequence of Sound (2018年6月7日). 2018年8月22日閲覧。
  10. ^ Kenny Loggins Re-Recorded ‘Danger Zone’ for ‘Top Gun: Maverick’ — Why the Sequel Passed On It” (英語). Variety (2022年5月31日). 2022年6月6日閲覧。
  11. ^ Lenker, Maureen Lee (2022年5月31日). “Kenny Loggins recorded a new version of 'Danger Zone' that wasn't used in Top Gun: Maverick” (英語). Entertainment Weekly. 2022年6月6日閲覧。
  12. ^ 青山悌三「名画に名曲ありき・・・」『トップガン劇場パンフレット』東宝出版・商品販促室、1986年12月6日。 
  13. ^ Kent, David (1993). Australian Chart Book 1970–1992 (illustrated ed.). St Ives, N.S.W.: Australian Chart Book. p. 180. ISBN 0-646-11917-6  N.B. The Kent Report chart was licensed by ARIA from mid-1983 until June 12, 1988.
  14. ^ Kenny Loggins – Danger Zone (song)” (ドイツ語). GfK Entertainment. 2019年12月10日閲覧。
  15. ^ Kenny Loggins - Danger Zone”. charts.org.nz. 2022年6月1日閲覧。
  16. ^ Kenny Loggins - Danger Zone”. hitparade.ch. 2022年6月1日閲覧。
  17. ^ Official Charts Company”. Official Charts Company. 2019年12月10日閲覧。
  18. ^ “Billboard > Kenny Loggins Chart History > Hot 100”. Billboard. https://www.billboard.com/artist/kenny-loggins/chart-history/hsi/ 2019年12月10日閲覧。. 
  19. ^ “Billboard > Kenny Loggins Chart History > Mainstream Rock Songs”. Billboard. https://www.billboard.com/artist/kenny-loggins/chart-history/rtt/ 2019年12月10日閲覧。. 
  20. ^ Kenny Loggins”. 2022年6月1日閲覧。
  21. ^ IRMA – Irish Charts”. Irish Recorded Music Association. 2022年6月4日閲覧。
  22. ^ a b NZ Hot Singles Chart”. Recorded Music NZ (2022年6月6日). 2022年6月4日閲覧。
  23. ^ Kent Music Report No 650 – 29 December 1986 > National Top 100 Singles for 1986”. ケント・ミュージック・レポート, via Imgur.com. 2019年12月10日閲覧。
  24. ^ “1986 The Year in Music & Video: Top Pop Singles”. Billboard 98 (52): Y-21. (1986-12-27). 
  25. ^ "Danish single certifications – Kenny Loggins – Danger Zone". IFPI Danmark. 2021年10月1日閲覧 Click on næste to go to page 9909 if certification from official website
  26. ^ "Japanese single certifications – Danger Zone" (Japanese). Recording Industry Association of Japan. 2016年12月27日閲覧 Select 2016年4月 on the drop-down menu
  27. ^ "British single certifications – Kenny Loggins – Danger Zone". British Phonographic Industry. 2021年11月16日閲覧

外部リンク