デイヴィッド・クラーク (英語 :David Clark Company, Inc.)は、アメリカ合衆国 、マサチューセッツ州 ウースター に本社を置く音響機器 製造会社。ヘッドセット のほか、宇宙服 、耐Gスーツ などの特殊服や医療、安全製品など、主に航空宇宙 および産業用保護具 の設計と製造も行う[ 2] 。
第二次世界大戦中 に連合軍 の戦闘機パイロットがブラックアウト を防止する目的で使用された初となる標準的な耐Gスーツとバルブ の設計開発を皮切りに、1941年 から航空機搭乗員に関する保護具の開発と製造に携わっている[ 2] 。
歴史
マサチューセッツ州ウースターにある同社は、1935年 にデイヴィッド・M・クラークによって設立された。夜間授業を受ける代わりに高校3年生で中退することを親に認めさせ、同時に繊維 会社を立ち上げるための資金援助を受けるため親を説得している。繊維事業として特殊下着 用のユニークなニット 素材の開発からスタートし、1950年 までは「シアーズ・ベスト」と名付けられたブラジャー など下着の製造を専業としていた[ 1] 。
ある時、戦闘機のパイロットが極限機動状態で失神 していることを知り、強く締め付ければ解決するのではないか?と直感し、サッカーボール を利用した空気袋を男性用ガードル に縫い付けた商品「ストレートウェイ」を開発し、巡回セールスマンに持たせ陸軍省 に届けさせている。初歩的な商品ではあったが、興味を引くには十分な試作品となり、結果、ブラックアウト問題が解決されたことで採用が決定された[ 1] 。
航空宇宙や通信関連の製品を製造するまでに発展したデイヴィッド・クラーク・カンパニー(DCC)は、約215,000平方フィート (20,000m2 )の作業エリアを持つ4階建てのビルに入居している。
製品
デイヴィッド・クラーク製ヘッドセット
ヘッドセット
DCCは、ブームマイクを搭載したノイズ減衰型 の通信用ヘッドセット システムで知られ、製品の色からグリーンヘッドセットの愛称で呼ばれる。1975年から製造が開始されラインナップに加わっている。
Gスーツおよび宇宙服
デイヴィッド・クラークが開発した初期の宇宙服
NASA とアメリカ空軍 向けの圧力/宇宙服と生命維持システムを設計および製造している[ 3] 。1940年 代にNASAのロケット研究機ベルX-1 用の部分与圧 服を、1950年 代には研究機 D558-2 およびノースアメリカン X-15 用の完全与圧服を開発した。DCCのX-15スーツの設計は、NASAのジェミニ計画 で実施された最初の船外活動(EVA)で宇宙飛行士 が着用した宇宙服を含み、その後のすべての全圧スーツの基礎となっている[ 2] 。また、F-15戦闘機 やB-1爆撃機 の乗組員のための統合生命維持装置の開発チームにも参加する[ 3] 。
DCCは初期の耐Gスーツを開発する際、メイヨー・クリニック の医学博士アール・ウッド (英語版 ) 研究室と密接に協力している。当初の目的は、急降下爆撃 演習の際に発生する高G状態 によるブラックアウトを防ぐためであった[ 4] [ 5] [ 6] 。ウッドと同僚によって研究された高G力時の失神の生理学的原理により、空気袋を利用した静脈 の血流を下肢に流れるのを防ぐGアクティベート単圧スーツは1943年 にリリースされ、1944年に改良が施されている。空中戦 に於いて非着用のパイロットと比べ、着用したパイロットは倍近い撃墜対被撃墜比率 を挙げたことで、このスーツは連合軍にとって重要な利点であると見做されている[ 1] 。1946年 以来、DCCはアメリカ国防総省 の高高度偵察機(ロッキード U-2 / SR-71 )プログラムの支援を受けたことで、1980年 代後半に新世代の与圧服の開発を齎している。その結果、生まれたのが S1034 PPA(Pilot's Protective Assembly)スーツとなる。S1034PPAはそれ以降、アメリカ空軍と国防総省の標準圧力スーツとなっている。また、NASAでもDCCによって開発されたランチ・エントリー・スーツ (英語版 ) やアドバンス・クルー・エスケープ・スーツ (英語版 ) などの各種宇宙服が使用され続けられている[ 2] 。
脚注
^ a b c d “DAVID CLARK: 70 YEARS OF FLYING UNDER PRESSURE ”. AOPA (2013年1月24日). 2022年7月9日 閲覧。
^ a b c d “HISTORY ”. David Clark Company. 2022年7月9日 閲覧。
^ a b Statement of Lt. Gen. Otto J. Glasser, Deputy Chief of Staff, Research and Development, Headquarters, U.S. Air Force , Department of Defense Appropriations for Fiscal Year 1972, pp. 706, 835.
^ Wood, E. H.; Lambert, E. H. (1946-01-01). “The effect of anti-blackout suits on blood pressure changes produced on the human centrifuge”. Federation Proceedings 5 (1 Pt 2): 115. ISSN 0014-9446 . PMID 21066536 .
^ Lambert, E. H.; Wood, E. H. (1946-07-01). “The problem of blackout and unconsciousness in aviators”. The Medical Clinics of North America 30 (4): 833–844. doi :10.1016/s0025-7125(16)35922-3 . ISSN 0025-7125 . PMID 20992942 .
^ Wood, E. H.; Lambert, E. H. (1946-09-01). “Effects of acceleration in relation to aviation”. Federation Proceedings 5 : 327–344. ISSN 0014-9446 . PMID 20999477 .
関連項目
外部リンク