テトラヒドリドアルミン酸ナトリウム

テトラヒドリドアルミン酸ナトリウム
識別情報
CAS登録番号 13770-96-2 チェック
PubChem 26266
EC番号 237-400-1
特性
化学式 H4AlNa
モル質量 54 g mol−1
外観 白色固体
密度 1.24 g/cm3
融点

183 °C, 456 K, 361 °F (分解)

溶解度 THFに可溶 (16 g/100 mL、室温)
危険性
安全データシート(外部リンク) External MSDS
引火点 -7 °F (-22 °C)
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

テトラヒドリドアルミン酸ナトリウムまたは水素化アルミニウムナトリウムナトリウム水素化物で化学式NaAlH4で表される物質である。発火性の白色固体であり、テトラヒドロフランには溶解するがジエチルエーテル炭化水素系の溶媒には不溶。可逆的に水素を吸収して保存できる水素吸蔵物質として検討されており[1]、有機合成のための試薬としても用いられる。テトラヒドリドアルミン酸ナトリウムは水素化アルミニウムリチウムと同様に、四面体構造のテトラヒドリドアルミン酸アニオン ([AlH4]-) とナトリウムカチオン (Na+) からなる塩である[2]

生成方法と反応

テトラヒドリドアルミン酸ナトリウムは、トリエチルアルミニウムを触媒として高圧水素雰囲気下、200°Cでナトリウムとアルミニウムを反応させることによって得られる[3]

テトラヒドリドアルミン酸ナトリウムをジエチルエーテルに懸濁させた溶液を塩化リチウムと反応させることで一般的な試薬である水素化アルミニウムリチウムを与える。

テトラヒドリドアルミン酸ナトリウムは下記の反応式のように、例えばのようなプロトン性の物質と急速に激しく反応する。

濃硫酸とは、以下のように反応する。

用途

水素吸蔵物質

テトラヒドリドアルミン酸ナトリウムは、水素を吸収し貯蔵する水素吸蔵物質としての研究が行われている[4]。水素の放出は以下の反応による。

テトラヒドリドアルミン酸ナトリウムを200℃に加熱することで、最大で自身の重量の7.4 wt%の水素を放出することができる。水素の吸収速度は遅く、最大容量の水素を吸収させるには数分かかる。この水素の放出および吸収はチタンによる触媒作用を受ける。

有機化学

テトラヒドリドアルミン酸ナトリウムは、水素化アルミニウムリチウムや有機反応における水素化ジイソブチルアルミニウムと同じぐらい強い還元剤である。水素化ホウ素ナトリウムよりも還元力が強く、これはテトラヒドリドアルミン酸の Al-H 結合が水素化ホウ素のB-H 結合よりも弱く極性の高い結合であるためである。テトラヒドリドアルミン酸ナトリウムは水素化リチウムアルミニウムのように、エステル類をアルコールにまで還元させることができる[5]

安全性

テトラヒドリドアルミン酸ナトリウムは非常に燃えやすい。室温において乾燥した空気とは反応しないものの、湿気には非常に敏感である。水と接触すると、発火もしくは爆発する。

出典

  1. ^ 門野良典、下村浩一郎 (2009-03-05). “水素吸蔵物質NaAlH4中での「水素結合」 : ミュオンで明らかになった格子間水素の振る舞い”. 日本物理學會誌 64 (3): 192-196. 
  2. ^ J. W. Lauher, D. Dougherty P. J. Herley "Sodium tetrahydroaluminate" Acta Cryst. 1979. volume B35, pp.1454-1456. doi:10.1107/S0567740879006701
  3. ^ Peter Rittmeyer, Ulrich Wietelmann “Hydrides” in Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 2002, Wiley-VCH, Weinheim. doi:10.1002/14356007.a13_199
  4. ^ Zaluska, A.; Zaluski, L.; Ström-Olsen, J. O. (2000). “Sodium Alanates for Reversible Hydrogen Storage”. Journal of Alloys and Compounds 298 (1–2): 125–134. doi:10.1016/S0925-8388(99)00666-0. 
  5. ^ Melinda Gugelchuk "Sodium Aluminum Hydride" Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, 2001, John Wiley. doi:10.1002/047084289X.rs039