『セヴェランス』(英語: Severance) は、アメリカのSFサイコスリラー・テレビドラマシリーズである。ダン・エリクソンの原案に基づき、ベン・スティラーとイーファ・マッカードル(英語版)が監督、アダム・スコットが主演を務めた。仕事中の記憶と私生活の記憶を分離する「セヴェランス」という手術を受けた会社員、マーク・スカウトを主人公とする。
第1シーズンはApple TV+で2022年2月18日に配信を開始し、映像、美術、音楽、演技などの面で批評家と視聴者から高い評価を得た。2022年4月、第2シーズンへの継続が決定した。
あらすじ
謎めいた製薬企業「ルーモン産業」は、「セヴェランス」と呼ばれる外科手術を用いて、一部の社員の仕事と私生活の記憶を分離している。「セヴェランス」を受けた社員の一人であるマークは、会社の中と外の両方から、その裏に潜む陰謀を解き明かしていく。
キャストと登場人物
主な登場人物
※括弧内は日本語吹替。
マーク・スカウト
演 - アダム・スコット (前田剛)
ルーモン産業の「マクロデータ改良部」に勤める、「セヴェランス」を受けた社員。妻のジェマの死を未だに乗り越えられずにいる。
ディラン・ジョージ
演 - ザック・チェリー(英語版) (草野峻平)
マークの同僚で、「セヴェランス」済み。仕事の対価として会社から与えられる「褒美」を楽しみにしている。[1]
ヘリー・リッグス
演 - ブリット・ロウアー(英語版) (渋谷はるか)
ピーティの代わりとして、「セヴェランス」を受け、マクロデータ改良部にやって来た新人社員。
アーヴィング・ベイリフ
演 - ジョン・タトゥーロ (坂東尚樹)
マークの同僚で、「セヴェランス」済み。会社の規則にとことん忠実だが、バートと出会い、互いに惹かれていく。
バート・グッドマン
演 - クリストファー・ウォーケン (立川三貴)
「セヴェランス」済みの「視覚デザイン部」の部長。アーヴィングに惹かれている。
セス・ミルチック
演 - トラメル・ティルマン(英語版) (中務貴幸)
マークたちが働く「分離フロア」の管理職。
ケイシー
演 - ディーチェン・ラックマン(英語版) (鷄冠井美智子)
「分離フロア」の健康カウンセラー。
ハーモニー・コベル
演 - パトリシア・アークエット (深見梨加)
「分離フロア」におけるマークの上司。私生活では、「セルヴィグ」という偽名を名乗り、マークの隣の家に住んでいる。
デヴォン・ヘイル
演 - ジェン・チュロック(中村綾)
マークの妹。子供を身ごもっている。後に出産し、「エレノア」と名付ける。
リッケン・ヘイル
演 - マイケル・チェルナス(英語版)
デヴォンの夫。自己啓発本「君らしくあれ」の著者。
その他の登場人物
ピーター・キルマー(ピーティ)
演 - ユル・ヴァスケス(谷昌樹)
「セヴェランス」済みのルーモン社員。マークの同僚であり親友だったが、謎の理由で辞職する。
ダグ・グレイナー
演 - マイケル・カンプスティ(英語版)(岡田雄樹)
「分離フロア」の警備部長。社員たちからは恐れられている。
ナタリー
演 - シドニー・コール・アレクサンダー
ルーモン社の広報担当。役員会からのメッセージを社員に伝える連絡係でもある。
キア・イーガン
演 - マーク・ゲラー
ルーモン社の創業者。社内では彼に対するカルトじみた個人崇拝が行われている。既に故人ではあるものの、彫像や絵、映像などでその姿を見ることができる。
ジェイム・イーガン
演 - マイケル・シブリー(英語版)
ルーモン産業の現社長。
ニーナ
演 - ジョアンヌ・ケリー
ピーティの元妻。
ジューン
演 - キャシディ・レイトン(高橋雛子)
ピーティの娘。ミュージシャンで、ルーモン産業を批判する曲を歌っている。
ギャビー・アルテタ
演 - ノーラ・デイル
アンジェロ・アルテタ議員の妻で、妊婦。
アンジェロ・アルテタ
演 - イーサン・フラワー
ルーモン社から支援を受けている州議会議員で、セヴェランスの合法化を支持している。ギャビーの夫で、ギャビーとの間に3人の子供をもうけている。
ルガビ
演 - カレン・オルドリッジ
ルーモン社の元社員で、ピーティを「再統合」した人物。
劇中のアニメーション内でのキア・イーガンの声役として、ベン・スティラーがカメオ出演している(クレジット無し)。[2]
エピソード一覧
制作
企画
ベン・スティラーは、本作の配信が開始される5年以上前に第1話の脚本を読み、「自分が関わった作品の中で一番長い作品」と評した。脚本は、もともとダン・エリクソンがサンプルとしてRed Hour Productions(英語版)に提出したもので、企画責任者のジャッキー・コーンによりスティラーの手に渡った。スティラーは、職場コメディ(英語版)を思い起こさせる作風に好感を覚えたと語った。[4]2017年1月、スティラーはアダム・スコットを主演として起用した。[5]2019年11月、Apple TV+はセヴェランスをスティラー監督、スコット主演で制作すると決定した。[6]スティラーは第1話のみ監督する予定だったが、制作開始後に監督するエピソードを増やした。[7]
2020年1月、パトリシア・アークエット[8]、ブリット・ロウアー(英語版)[9]、ジェン・チュロック、ザック・チェリー(英語版)がキャストに加わった。[10]トラメル・ティルマンは2020年2月[11]、ジョン・タトゥーロとクリストファー・ウォーケンは2020年11月[12][13]、ディーチェン・ラックマン(英語版)は2020年12月にキャストに加わった。[14]タトゥーロは、「長い付き合いだから、わざわざ友達のふりをしなくて済む」という理由で、バート役にウォーケンを薦めたと語った。 [15] 2022年4月6日、Appleはシリーズの第2シーズンへの継続を決定した。 [16]
セヴェランスに影響を与えたとされる作品には、クリーピーパスタのThe Backrooms、ゲーム『The Stanley Parable』、映画『トゥルーマン・ショー』などが挙げられる。[17]
撮影
COVID-19のパンデミックにより、制作開始は2020年3月まで延期された。[4]第1シーズンの撮影は、2020年11月、アメリカ大統領選挙の翌日に、『タムウォーター』という仮題のもとニューヨークで開始された。[18][19]第1話の冒頭部分は2021年1月6日に撮影された。[19]2月にナイアックで、3月にキングストンとビーコンで数日間撮影が行われた。[20] [21]4月、撮影はニュージャージー州の中部に移動し、主にルーモン社の本社として登場したBell Labs Holmdel Complex(英語版)で行われた。[22] [23]撮影は2021年6月23日に終了を予定していた。 [24]1960年代、1970年代、1980年代の企業の外観を混ぜ合わせることで、本作の独特の雰囲気を作り上げたプロダクションデザイナーのジェレミー・ヒンドルは、モダニスト建築家のエーロ・サーリネンの設計に影響を受けてデザインしたと語った。[23]小道具係は古いコンピューターを実際に機能するように修復し、演者が設定に慣れるために、実際に作品内で登場人物が行う作業を実行できるようにした。[25]
評価
批評
セヴェランスは、批評家から賞賛を受けている。批評集積サイトのRotten Tomatoesでは、89人の批評家による支持率は98%、平均点は10点満点中8.5点となっている。サイトの総評は、「大胆で、神秘的で、会社組織における労働の危険性に新鮮な洞察をもたらす。セヴェランスには全てが揃っている」としている。[26]また、Metacriticには31件のレビューがあり、加重平均値は83/100で「全体的に好評」となっている。[27]
受賞
2022年の第26回ウェビー賞にて、主演のアダム・スコットは最優秀俳優賞を獲得した。[28]
関連項目
脚注
- ^ Weldon, Glen (February 17, 2022). “In the thriller 'Severance,' Adam Scott's humanity hangs in the (work-life) balance”. NPR. March 28, 2022閲覧。
- ^ Travers (April 10, 2022). “Severance: Ben Stiller and Dan Erickson Explain Everything They Can About Season 1 — Q&A”. Indiewire. April 13, 2022閲覧。
- ^ “Shows A-Z – Severance on Apple+”. The Futon Critic. December 18, 2021閲覧。
- ^ a b Aquilina, Tyler (February 19, 2022). “Ben Stiller talks Severance's long road to TV and the challenge of work-life balance”. Entertainment Weekly. https://ew.com/tv/ben-stiller-severance-interview/ March 7, 2022閲覧。.
- ^ Lane (February 18, 2022). “Severance: Ben Stiller and Adam Scott on the Long Road to Making the Apple TV+ Thriller Series”. Collider. March 7, 2022閲覧。
- ^ White (November 8, 2019). “Apple Signs Severance, Workplace Thriller Series From Adam Scott & Ben Stiller”. Deadline Hollywood. November 2, 2020閲覧。
- ^ Zaid (February 7, 2022). “Geek Interview: Ben Stiller And Adam Scott On How Apple TV+'s Sci-Fi Severance Is Closer To Reality Than One Thinks”. Geek Culture. March 12, 2022閲覧。
- ^ Andreeva (January 6, 2020). “Patricia Arquette To Star In Severance Apple TV Series, Reuniting With Ben Stiller” (英語). Deadline Hollywood. March 18, 2021閲覧。
- ^ Andreeva (January 29, 2020). “Severance: Britt Lower To Star In Apple Drama Series” (英語). Deadline Hollywood. March 18, 2021閲覧。
- ^ Petski (January 31, 2020). “Severance: Jen Tullock & Zach Cherry To Star In Apple Drama Series” (英語). Deadline Hollywood. March 18, 2021閲覧。
- ^ Petski (February 26, 2020). “Severance: Tramell Tillman To Star In Apple Drama Series” (英語). Deadline Hollywood. March 18, 2021閲覧。
- ^ Petski (October 30, 2020). “Severance: John Turturro To Star In Apple Drama Series” (英語). Deadline Hollywood. March 18, 2021閲覧。
- ^ Petski (November 2, 2020). “Severance: Christopher Walken Joins Apple Drama Series” (英語). Deadline Hollywood. March 18, 2021閲覧。
- ^ Petski (December 3, 2020). “Severance: Dichen Lachman Joins Apple Drama Series” (英語). Deadline Hollywood. March 18, 2021閲覧。
- ^ Deckelmeier (February 17, 2022). “John Turturro, Zach Cherry & Britt Lower Interview: Severance”. Screen Rant. March 7, 2022閲覧。
- ^ Maas (April 6, 2022). “Severance Renewed for Season 2 at Apple TV Plus”. Variety. April 6, 2022閲覧。
- ^ Francisco (February 24, 2022). “Severance reveals the 'scary' and 'surreal' underbelly of office work in 2022”. Inverse. March 6, 2022閲覧。
- ^ “How to Get Cast in Ben Stiller's Tumwater” (英語). Project Casting (January 15, 2021). March 18, 2021閲覧。
- ^ a b “Severance: Apple TV+'s new thriller didn't have a smooth ride during production” (英語). AppleMagazine (February 27, 2022). March 1, 2022閲覧。
- ^ Muchnick (February 25, 2021). “Three TV shows have been filming in Nyack this week. Here's what's happening” (英語). The Journal News. March 5, 2021閲覧。
- ^ Pineiro-Zucker (March 9, 2021). “Apple TV+ series Severance filming scenes in Kingston this week” (英語). The Daily Freeman. March 9, 2021閲覧。
- ^ Hoffman (April 13, 2021). “Apple TV+ Television Series Severance Filming In New Jersey” (英語). 95.9 The RAT. May 12, 2021閲覧。
- ^ a b Stefansky (February 24, 2022). “How Severance Made Its Office Prison Look so Inviting”. Thrillist. March 1, 2022閲覧。
- ^ “Film and TV Projects Going Into Production”. Variety Insight. February 18, 2022閲覧。
- ^ Contreras (February 17, 2022). “How the 'Incredibly Real' Severance Set Transported Adam Scott to Corporate America”. E! Online. March 7, 2022閲覧。
- ^ "Severance: Season 1". Rotten Tomatoes. Fandango Media. 2022年4月21日閲覧。
- ^ "Severance: Season 1". Metacritic. Red Ventures. February 28, 2022閲覧。
- ^ “Adam Scott”. The Webby Awards. April 29, 2022閲覧。
外部リンク