シマイサキ科(学名:Terapontidae)は、スズキ目スズキ亜目に所属する魚類の分類群(科)の一つ。シマイサキ・コトヒキなど、沿岸付近で暮らす種を中心に16属52種が含まれる[1]。
分布・生態
シマイサキ科の魚類はインド洋から西部太平洋にかけて分布する[1]。河口など沿岸近くの浅海で生活する種類が多く、汽水域から淡水に進出することもしばしばある[1]。純粋な淡水魚も少なからず含まれ、その多くはオーストラリア・ニューギニア島から知られている[1]。日本では沖縄諸島をはじめとする南日本の沿岸・淡水域から4属7種が報告され、うち3種(シミズシマイサキ・ニセシマイサキ・ヨコシマイサキ)は西表島の河川にほぼ限局して分布する[2]。
本科魚類は浮き袋に独特な発音筋を備え、漁獲されたときに大きな音を出す種類が多い[1]。食性はさまざまで、他の魚類や無脊椎動物を捕食するもののほか、藻類を摂食する種類もいる[3]。
形態
やや左右に平たく側扁した、楕円形から卵型の体型をもつ[1]。体長10-40cmほどの種類が多く、最大種では全長80cmにまで成長する[3]。体色は暗灰色や褐色を基調とし、黒色の縦縞をもつ種が多い[4]。鱗は櫛鱗で、側線鱗は45-80枚[4]。前後に分割されたダンベル状の浮き袋をもち、スズキ亜目の中で際立った特徴となっている[1]。浮き袋と頭蓋骨を接続する1対の筋肉が存在し、他のスズキ亜目魚類にみられる発音筋とは位置が異なっている[1]。
背鰭は1つで切れ込みをもち、11-14本の棘条と8-14本の軟条で構成される[1]。背鰭の棘条部分は、鱗状の鞘で構成された溝に折りたたむことが可能となっている[1]。臀鰭は3 棘7-12軟条で、腹鰭は胸鰭の基底よりも後方に位置する[1]。尾鰭の形状は円形から截形、あるいは陥凹するものまでさまざまで、分枝鰭条は15本[3]。側線は途切れることなく尾鰭まで達する[1]。
鰓蓋骨に2本のトゲをもち、下位の方がより長い[1]。両顎には微細な歯が並び、ほとんどの種は鋤骨と口蓋骨の歯を欠く[1][4]。鰓条骨は6本で、椎骨は25-27個[1]。
分類
シマイサキ科にはNelson(2016)の体系において16属52種が認められている[1]。本科のスペルには表記ゆれがあり、「Teraponidae」「Theraponidae」「Therapontidae」などと書かれることもあるが[3]、Nelson(2006)以降は「Terapontidae」と記述されるようになっている[5]。
- コトヒキ属 Terapon
- コトヒキ Terapon jarbua
- ヒメコトヒキ Terapon theraps
- Terapon puta
- シマイサキ属 Rhynchopelates
- シマイサキ Rhynchopelates oxyrhynchus
- ヨコシマイサキ属 Mesopristes
- シミズシマイサキ Mesopristes iravi
- ニセシマイサキ Mesopristes argenteus
- ヨコシマイサキ Mesopristes cancellatus
- Mesopristes elongatus
- Mesopristes kneri
- ヨスジシマイサキ属 Pelates
- ヨスジシマイサキ Pelates quadrilineatus
- Pelates octolineatus
- Pelates qinglanensis
- Amniataba 属
- Amniataba affinis
- Amniataba caudavittata
- Amniataba percoides
- Bidyanus 属
- Bidyanus bidyanus
- Bidyanus welchi
- Hannia 属
- Helotes 属
- Hephaestus 属
- Hephaestus adamsoni
- Hephaestus carbo
- Hephaestus epirrhinos
- Hephaestus fuliginosus
- Hephaestus habbemai
- Hephaestus jenkinsi
- Hephaestus komaensis
- Hephaestus lineatus
- Hephaestus obtusifrons
- Hephaestus raymondi
- Hephaestus roemeri
- Hephaestus transmontanus
- Hephaestus trimaculatus
- Hephaestus tulliensis
- Lagusia 属
- Leiopotherapon 属
- Leiopotherapon aheneus
- Leiopotherapon macrolepis
- Leiopotherapon plumbeus
- Leiopotherapon unicolor
- Pelsartia 属
- Pingalla 属
- Pingalla gilberti
- Pingalla lorentzi
- Pingalla midgleyi
- Scortum 属
- Syncomistes 属
- Syncomistes butleri
- Syncomistes kimberleyensis
- Syncomistes rastellus
- Syncomistes trigonicus
- Variichthys 属
- Variichthys jamoerensis
- Variichthys lacustris
出典・脚注
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 『Fishes of the World Fifth Edition』 p.441
- ^ a b 『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』 pp.1067-1069,2036-2037
- ^ a b c d e f “Terapontidae”. FishBase. 2016年5月14日閲覧。
- ^ a b c d 『日本の海水魚』 pp.420-421
- ^ 『Fishes of the World Fourth Edition』 pp.383-384
参考文献
ウィキメディア・コモンズには、
シマイサキ科に関連するメディアがあります。
外部リンク