『ザ・クラウン』(英語: The Crown)は、ピーター・モーガンの原作・脚本による、アメリカ合衆国とイギリス合作のテレビドラマシリーズであり、イギリス女王エリザベス2世の治世を描く。
Netflixのため、Left Bank Picturesおよびソニー・ピクチャーズ テレビジョンが製作している。
概要
主要キャストは2シーズンごとに入れ替わり、治世の初期の青年期のエリザベス2世女王はクレア・フォイが演じる(シーズン1、2)[3][4]。壮年期のエリザベス2世女王はオリヴィア・コールマンが演じる(シーズン3、4)。老年期のエリザベス2世女王はイメルダ・スタウントンが演じる (シーズン5、6)。
当初から、シリーズは「6シーズン60エピソード」におよぶ予定とされた。シーズン1は最初の2話だけが劇場公開された[5]のちに2016年11月4日に配信[6][7]。シーズン2は2017年12月8日、シーズン3は2019年11月17日[8]、シーズン4は2020年11月15日に配信された[9]。シーズン5は2022年11月9日より配信された[10]。シーズン6は2パートに別れ、パート1は2023年11月16日に配信され、パート2は2023年12月14日配信された[11]。
各シーズンの時代
シーズン1は、1947年のエリザベスとフィリップの結婚式に始まり、チャールズ王子とアン王女の誕生を経て、ケニア訪問中の1952年の父国王の突然の崩御による女王即位、1953年の戴冠式とテレビ中継放送の実施、妹マーガレット王女と侍従武官ピーターとの恋と破局など、第3次チャーチル内閣(en)からイーデン内閣(en)のもとでの1955年までの女王の治世を描く。
シーズン2は、1956年のスエズ動乱に始まり、イーデン首相の辞職から、1963年のプロヒューモ事件によるマクミラン首相の辞職、ジョン・F・ケネディ米大統領夫妻の訪英とジャクリーン夫人との交流、そして1964年の第4子(三男)エドワード王子誕生までを描く。
シーズン3は、1964年から1977年まで、チャーチル元首相の死去からヒース内閣をはさんだ2度の労働党ウィルソン内閣のもとでの治世を描く。ケンブリッジ・ファイヴ事件、南ウェールズで起きたアベルヴァンの惨事と呼ばれる崩落事故[12]、マウントバッテン卿の首謀によるクーデター計画、長男チャールズ王太子のウェールズ公叙任式と恋人カミラ・シャンドの関係、元国王ウィンザー公(エドワード8世)死去、マーガレット王女夫妻の不倫と王女の自殺未遂、女王夫妻の銀婚式及び即位25周年記念式典(英語版)などが描かれる。
シーズン4は、1979年のサッチャー内閣成立から1990年の辞任までにわたり、女王と初の女性首相の関係、そして当初から不幸だったチャールズとダイアナの結婚とその破綻を中心に描く。
シーズン5は、1990年の保守党メージャー内閣成立から1997年の労働党ブレア内閣成立までにわたり、王族の結婚をめぐるさまざまなスキャンダル、とくにチャールズとダイアナの別居および離婚、そしてそれぞれの恋愛を中心に描く。
シーズン6前半は、1997年のダイアナ元妃の死を描く。後半はダイアナの死から、2005年のチャールズとカミラの結婚までを描く。
キャスト
メイン
王族
政治家
その他
リカーリング
王族
王族の側近
政治家
その他
ゲスト
エピソード
*各シーズン全話一斉配信
シーズン1
シーズン2
シーズン3
シーズン4
シーズン5
シーズン6
製作
2006年の映画『クィーン』と2013年の舞台『The Audience』の脚本を書いたピーター・モーガンが本シリーズの主要な脚本家である[17]。監督はスティーブン・ダルドリー、フィリップ・マーティン(英語版)、ジュリアン・ジャロルド、ベンジャミン・キャロン(英語版)らが務める[18]。シーズン1にはこれまでにNetflixおよびLeft Bank Picturesが製作したドラマの中で最も高額な製作費が費やされた[19][20]。
シーズン1の放送前に、シーズン2の制作が決定された[21][22]。
製作陣は「2シーズンごとにエリザベス女王の配役を変更する」としており、シーズン1と2ではクレア・フォイ、シーズン3と4ではオリヴィア・コールマン、シーズン5と6ではイメルダ・スタウントンがそれぞれキャスティングされている[23][24]。
2022年9月8日にエリザベス2世が死去したことを受けて、同役を演じたオリヴィア・コールマンなどが追悼声明を出した。本ドラマは当時シーズン6の制作を行っていたが、エリザベス女王に敬意を表するため、撮影を一時中断した[25][26][27]。
評価
受賞
シーズン1は第74回ゴールデングローブ賞においてテレビドラマ部門作品賞 およびテレビドラマ部門主演女優賞(クレア・フォイ)を受賞した。また第69回プライムタイム・エミー賞において、衣装賞歴史劇・ファンタジー・リミテッドシリーズ・テレビ映画部門、プロダクションデザイン賞歴史劇部門を受賞し、ジョン・リスゴーが助演男優賞ドラマ部門を受賞した。
シーズン2は第70回プライムタイム・エミー賞においてテレビドラマ部門監督賞、テレビドラマ部門主演女優賞(クレア・フォイ)、衣装賞歴史ドラマ部門、キャスティング歴史ドラマ部門賞、1時間のシングルカメラ部門撮影賞を受賞した。
シーズン3は、第77回ゴールデングローブ賞のテレビドラマ部門主演女優賞(オリヴィア・コールマン)を受賞した。また第71回プライムタイム・エミー賞において衣装賞歴史ドラマ部門を受賞した。
シーズン4は、第78回ゴールデングローブ賞においてテレビドラマ部門作品賞、テレビドラマ部門主演男優賞(ジョシュ・オコナー)、テレビドラマ部門主演女優賞(エマ・コリン)、シリーズ・ミニシリーズ・テレビ映画部門助演女優賞(ジリアン・アンダーソン)を受賞した。また、第73回プライムタイム・エミー賞において作品賞ドラマ部門、主演男優賞ドラマ部門(ジョシュ・オコナー)、主演女優賞ドラマ部門(オリヴィア・コールマン)、助演男優賞ドラマ部門(トビアス・メンジーズ)、助演女優賞ドラマ部門(ジリアン・アンダーソン)、監督賞ドラマ部門、脚本賞ドラマ部門を受賞した。エミー賞のドラマ主要7部門を制覇するのは本作が初めてとなった[28]。
シーズン6は、第81回ゴールデングローブ賞においてテレビドラマ部門助演女優賞 (エリザベス・デビッキ、シリーズ/リミテッドシリーズ/アンソロジーシリーズ/テレビ映画)を受賞した。
批判
- シーズン2
セシリアの事故死を巡る描写について、実弟のフィリップが弁護士を通じて、本ドラマに法的措置を取ることを検討していたことが2022年にイギリスの新聞「サンデー・タイムズ」による王室専門家への取材で明らかになった[29]。
- シーズン4
チャールズとダイアナのシーンについて、「事実のように捉えられてしまう」との意見が出て、イギリス国内において論争となる事態になった。これらを受けて、イギリス政府はNetflixやAmazon Prime Videoなどといった動画配信サービスについて、公平性や正確性を担保するための仕組みを導入するなどの規制強化を検討することを2021年6月に発表した[30][31]。
- シーズン5
本シリーズの配信開始前からドラマの内容を巡っての批判が相次いでいる。
- フィリップの不倫疑惑が描かれていることを2022年10月にイギリスの新聞「サン」が報じた。不倫疑惑については実際にフィリップの存命時に度々報じられていたが、王室は疑惑について否定している。前月(同年9月)にエリザベスが死去し、夫であるフィリップの隣に埋葬した直後に該当シーンが配信されることについては残酷だとして、複数の王室関係者から批判された[31]。
- ダイアナの死因となったフランス・パリでの交通事故の再現をNetflix上層部が計画していることを2022年10月16日にイギリスの新聞「サン」が報じた。これについて、Netflixは同紙の取材に対して「事故死の正確な瞬間は再現されません」と主張し、事故の舞台もスペイン・バルセロナに変更するとしているが、制作スタッフからは「一線を超えている」との反発を招いていると伝えられているほか、生前のダイアナと親しかった友人からも「残酷でサディスティック。無神経な人々だ」と批判しており、ダイアナの息子であるウィリアムやヘンリーへの影響を懸念する声もある[32][33][34]。
- アメリカの芸能ニュースサイト「デッドライン」などによると、1991年にチャールズが当時のイギリス首相であるジョン・メージャーとの懇談の中でイギリスの新聞「サンデー・タイムズ」が行った世論調査を受けて、チャールズが「エリザベスは退位すべき」と発言したとされるシーンがあることが判明した。しかし、「その様な発言は一切無く、悪意のあるナンセンスだ」として、メージャーが激しく抗議していたことを2022年10月17日に報じた[35][36]。
- イギリスの俳優で1988年に同国王室から「デイム」の称号を授与されているジュディ・デンチは本シリーズの内容について、「ひどく不当で、個人にとっても彼らが代表する王室にとってもダメージになる」として、Netflixに対して、各エピソードの冒頭にフィクションである旨の断り書きを掲載するよう要請する手紙(オープンレター)をイギリスの新聞「タイムズ」にて公開した[37]。
これらを受けて、Netflixはフィクションである旨の免責事項をYouTubeの予告編とNetflixの番組概要に追加したことを2022年10月21日にイギリスの公共放送「英国放送協会」(BBC)が報じた[38]。なお、本シリーズに合わせる形で同年12月に配信を予定していたヘンリーとメーガン夫妻のドキュメンタリー番組『ハリー&メーガン』もこの影響で2023年以降の配信に延期することも報じられていたが[35][36][39]、当初の予定通り、2022年12月8日と同月15日にそれぞれ配信公開された[39][40][41]。
脚注
出典
- ^ “The Crown: Claire Foy and Matt Smith on the making of the £100m Netflix series”. Telegraph. November 4, 2016閲覧。
- ^ “Netflix plans original UK drama about the Queen - BBC News”. BBC. November 4,2016閲覧。
- ^ Rob Leane (June 19, 2015). “The Crown: Matt Smith nabs role in Netflix drama”. Den of Geek. June 26, 2015閲覧。
- ^ Anita Singh (August 19, 2015). “£100m Netflix series recreates royal wedding”. The Daily Telegraph. オリジナルのMarch 22, 2016時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160322133559/http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/theroyalfamily/11813152/100m-Netflix-series-recreates-royal-wedding.html
- ^ “The Crown [Season 1, Episodes 1 & 2] (15)”. British Board of Film Classification (October 25, 2016). October 26, 2016閲覧。
- ^ Dylan Kickham (April 11, 2016). “Matt Smith's Netflix drama The Crown gets premiere date”. Entertainment Weekly. April 12, 2016閲覧。
- ^ “Claire Foy and Matt Smith face the challenges of royal life in new extended trailer for Netflix drama The Crown”. RadioTimes (September 27, 2016). September 27, 2016閲覧。
- ^ The Crown [@TheCrownNetflix] (2019年8月12日). "Season Three of The Crown, starring Olivia Colman as Queen Elizabeth II, arrives 17th November". X(旧Twitter)より2020年10月7日閲覧。
- ^ Netflix Japan (2020年8月20日). “『ザ・クラウン』シーズン4 配信日決定”. YouTube. 2020年8月20日閲覧。
- ^ “エリザベス女王の治世を描くドラマ『ザ・クラウン』シーズン5、Netflixで11・9配信開始”. ORICON NEWS. oricon ME (2022年9月25日). 2022年9月25日閲覧。
- ^ Petski, Denise (2023年10月9日). “‘The Crown’ Final Season To Launch In 2 Parts; Premiere Dates Set; Watch Trailer”. Deadline. 2023年10月9日閲覧。
- ^ Dibdin, Emma (2019年11月24日). “『ザ・クラウン』のシーズン3で描かれた、「アバーファン炭鉱崩落事故」の真実とは”. ハーパーズ バザー. 2021年6月26日閲覧。
- ^ “‘The Crown’ Officially Confirms Gillian Anderson As Margaret Thatcher For Season Four”. Deadline Hollyuwood. 2019年9月8日閲覧。
- ^ Petski, Denise (2023年10月9日). “‘The Crown’ Final Season To Launch In 2 Parts; Premiere Dates Set; Watch Trailer”. Deadline. 2023年10月9日閲覧。
- ^ オーストラリアの別名
- ^ “The Crown”. Writers Guild of America West. November 4, 2023閲覧。
- ^ “Netflix plans original UK drama about the Queen”. BBC News (May 23, 2014). February 3, 2016閲覧。
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- ^ “The Crown: the Royal family are 'nervous' about Netflix's new £100 million series”. The Telegraph. (July 29, 2016). http://www.telegraph.co.uk/on-demand/2016/07/12/the-crown-everything-you-need-to-know-about-netflixs-100-million/ August 2, 2016閲覧。
- ^ Anthony Couto (June 19, 2015). “Matt Smith starring in Netflix series, The Crown”. IGN. June 22, 2015閲覧。
- ^ “Netflix's glittering Crown could leave BBC looking a little dull”. TheGuardian (November 4, 2016). October 31, 2016閲覧。
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- ^ “故ダイアナ妃の親友、ドラマ『ザ・クラウン』を猛批判「残酷でサディスティック」”. Techinsight(テックインサイト) (2022年10月26日). 2022年10月28日閲覧。
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- ^ a b 千歳香奈子 (2022年10月19日). “ヘンリー王子夫妻ドキュメンタリーが公開延期 英王室ドラマへの批判殺到し判断か 英誌など報道”. 日刊スポーツ. 2022年10月19日閲覧。
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- ^ “「意地悪ヘンリー」 英各紙、王子夫妻の批判に反撃”. AFP通信 (2022年12月10日). 2022年12月10日閲覧。
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外部リンク
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