原文と比べた結果、この記事には多数の(または内容の大部分に影響ある)誤訳 があることが判明しています。情報の利用には注意してください。 正確な表現に改訳できる方を求めています。 (2015年6月 )
ゴールドバッハの予想 (ゴールドバッハのよそう、英語 : Goldbach's conjecture )とは、次のような加法 的整数論 上の未解決問題 の1つである。ゴールドバッハ予想 、ゴルドバッハの予想 とも[ 2] 。
すべての 2 よりも大きな偶数は2つの素数の和として表すことができる
[ 3] 。このとき、2つの素数は同じであってもよい。
この予想はウェアリングの問題 などと共に古くから知られ、クリスティアン・ゴールドバッハ (Christian Goldbach, 1690年 - 1764年 )がレオンハルト・オイラー への書簡(1742年 )で定式化して述べたことからこの名前がついている[ 4] 。
4 × 1018 までの4以上のすべての整数について成立することが2015年に確認されていて[ 5] 、一般に正しいと想定されているが、多くの努力にもかかわらず未だに証明されていない。
概要
4 から 28 までの偶数を 2つの素数の和としてあらわした。ゴールドバッハは全ての 2よりも大きい偶数が少なくとも一通りで 2つの素数の和として表すことができることを予想した。
偶数を二つの素数で表す方法が何通りあるか表したグラフ。
予想 には、ほとんど同値ないくつかの述べ方があり、次のように述べることが多い:
4以上の全ての偶数 は、二つの素数 の和で表すことができる。
6以上の全ての偶数は、二つの奇素数の和で表すことができる。
素数のうち偶数であるのは、2 のみであるから、偶素数同士の和となるのは、4=2+2 であり、4 のみである。
例えば、6以上で22までの偶数を奇素数の和で表す場合は、
6 = 3 + 3
8 = 3 + 5
10 = 7 + 3 = 5 + 5
12 = 5 + 7
14 = 3 + 11 = 7 + 7
16 = 3 + 13 = 5 + 11
18 = 5 + 13 = 7 + 11
20 = 3 + 17 = 7 + 13
22 = 11 + 11 = 19 + 3 = 17 + 5
のように、二つの奇素数の和で表すことができる。2012年現在、4×1018 までの全ての偶数について成り立つことが、コンピュータ によって確かめられている。[ 6]
ゴールドバッハはこの予想を更に緻密にして、こう予想した。
5より大きな任意の自然数 は、三つの素数の和で表せる。
これから上が導けるのは、偶数を三つの素数の和で表すと素数の一つは 2 になっているからである(奇数+奇数+奇数=奇数になる。和が偶数になるには、奇数+奇数+偶数か、偶数+偶数+偶数しかない)。
多くの数学者 は、素数分布の確率 に関する統計学 的な観察から、この予想は正しいと考えている(偶数が大きければ大きいほど、二つの素数の和で表されるというのはより"ありそうな"ことなのである)。
類似の予想として、「弱いゴールドバッハ予想 」というものがある。これは5より大きい奇数 は三つの素数の和で表せるという予想である。4より大きい偶数が二つの奇素数の和で表せるという「強いゴールドバッハ予想」が正しいならば、弱いゴールドバッハ予想も真である。これは
2
n
=
p
1
+
p
2
n
>
2
{\displaystyle 2n=p_{1}+p_{2}\quad n>2}
ならば
2
(
n
+
1
)
+
1
=
p
1
+
p
2
+
3
n
>
2
{\displaystyle 2(n+1)+1=p_{1}+p_{2}+3\quad n>2\,}
であることから明らかである。ここでp1 およびp2 は奇素数である。
また、一般化されたリーマン予想 が正しいならば、弱いゴールドバッハ予想が導かれることが知られている[ 7] 。
現在までの主な進歩
ノルウェー の数学者ブルン は1920年頃(いくつかの論文に分かれているため曖昧)、エラトステネスの篩 を発展させた新しい篩法を用いて、十分大きなすべての偶数は、高々 9つの素数の積であるような数の二つの和であることを証明した。
ハーディ とリトルウッド は1923年に、L関数 に対する一般化されたリーマン予想 (の若干弱い形を)を仮定して、全ての奇数 n ≧ n0 が3個の素数の和となるような下限 n0 が存在することを証明し、またその表現の個数の漸近公式を得た。また同様の仮定のもとにほとんどすべての偶数が二つの奇素数で表されること、すなわち例外的な数全体は零集合であることを証明。しかし偶数を二つの奇素数で表す仕方の数の漸近公式については予想するにとどまった。
1930年 にソ連 の数学者シュニレルマン は、2個の素数の和で表される数と0, 1からなる集合は正のシュニレルマン密度 を持つことをブルンの篩 を用いて初等的に示し、シュニレルマンの定理から、すべての自然数が高々 k 個の素数の和であるような、k が存在することを示した。
1937年 にソ連 の数学者ヴィノグラードフ (英語版 ) は三素数の問題に関して、三角和の方法を用いて、一般化されたリーマン予想を仮定することなしに、上記のような定数 n0 (現在、具体的にわかっている。
n
0
=
3
3
15
{\displaystyle n_{0}=3^{3^{15}}}
(Borozdin,1939)さらに良い評価として
n
0
≈
2
×
10
1346
{\displaystyle n_{0}\approx 2\times 10^{1346}}
(Liu Ming-Chit and Wang Tian-Ze,2002))の存在を証明した。(ヴィノグラードフの定理 参照)
1938年 頃、イギリス のエスターマン、ソ連 の数学者チュダコフ、オランダの数学者ヴァン・デア・コルプトらは、それぞれ独立に、なんらの仮定もせずにほとんどすべての偶数は二つの奇素数の和であることを証明した。
1947年 、ハンガリー の数学者レーニ は大きな篩い (英語版 ) という新しい方法を用いて、すべての自然数を、素数と高々 k 個の素数の積である数との和で表すことのできるような、k が存在することを証明した。
中国 の数学者陳景潤 は1978年 までに、十分大きなすべての偶数は、素数と高々二つの素数の積であるような数との和で表されることを証明した。下界が山田智宏により与えられている。[ 8]
1995年 、フランスの数学者ラマレ はすべての偶数が高々6個の素数の和として表せることを証明した。
2002年 、ヒース=ブラウン (英語版 ) とシュラーゲ=プフタ は十分大きなすべての偶数は2個の素数と13個の2の冪の和で表され、一般化されたリーマン予想が正しいならば、十分大きなすべての偶数は2個の素数と7個の2の冪の和で表されることを示した。
2009年 、ゴールドバッハの予想に関する分散コンピューティングプロジェクト(BOINC )でGoldbach's Conjecture Project が開始された。
2013年、ハラルド・ヘルフゴット によって弱いゴールドバッハ予想 が証明された。
2015年、4 × 1018 までの4以上の全ての偶数について成立することが確認された[ 5] 。
ヒューリスティックな正当化
偶数 n (4 ≤ n ≤ 1,000) を二つの素数の和に分解する方法の数, オンライン整数列大辞典 の数列 A002375
偶数 n (4 ≤ n ≤ 1,000,000) を二つの素数の和に分解する方法の数
素数の確率分布 に焦点を当てた統計的考察から、十分大きな整数における本予想(強い予想および弱い予想)の成立が示唆される。一般に大きな数であるほど二つ三つの数の和に分解する方法も多くなるので、そのような和の中に一つは全て素数のものがあったとしても不思議ではない。
強い予想についてのヒューリスティックかつ確率論的な議論は、大まかには次のようなものである。素数定理 によれば、無作為に選択した整数 m が素数である確率は 1/ln m である。故に十分大きな偶数 n に対し m が 3 ≤ m ≤ n /2 を満たすとき、m と n − m が共に素数である確率は 1/(ln m ln(n − m )) となる。このことから、十分大きな偶数 n を二つの素数の和に分解する方法の数は概ね
∑
m
=
3
n
/
2
1
ln
m
1
ln
(
n
−
m
)
≈
n
2
ln
2
n
{\displaystyle \sum _{m=3}^{n/2}{\frac {1}{\ln m}}{1 \over \ln(n-m)}\approx {\frac {n}{2\ln ^{2}n}}}
であると計算できる。この値は n の増大につれて無限大に発散するので、恐らく任意の巨大な偶数は二つの素数の和に分解できるどころか、そのような方法は幾通りも存在するであろうと予想できる。
この議論は実際にはやや不正確である。理由は m と n − m が素数であるという二つの事象に統計的独立性 を仮定しているためである。例えば m が奇数ならば n − m もまた奇数、m が偶数ならば n − m もまた偶数となるが、2 を除く整数は奇数のときしか素数となりえないため、これは二つの事象の間の非自明な関係となる。同様に n が 3 の倍数、m が 3 でない素数のとき、n − m は 3 と互いに素となる可能性があり、その分素数である確率も若干高くなる。1923年、ハーディ とリトルウッド はこのような解析をより注意深く行い、次のように予想した。
予想 (ハーディ・リトルウッド予想の一部) ― 任意の固定された c ≥ 2 に対し、十分大きな整数 n を c 個の素数の和 n = p 1 + … + p c (p 1 ≤ … ≤ p c ) として表現する方法の数は、次に漸近的に等しい。
(
∏
p
p
γ
c
,
p
(
n
)
(
p
−
1
)
c
)
∫
2
≤
x
1
≤
⋯
≤
x
c
:
x
1
+
⋯
+
x
c
=
n
d
x
1
⋯
d
x
c
−
1
ln
x
1
⋯
ln
x
c
{\displaystyle \left(\prod _{p}{\frac {p\gamma _{c,p}(n)}{(p-1)^{c}}}\right)\int _{2\leq x_{1}\leq \cdots \leq x_{c}:x_{1}+\cdots +x_{c}=n}{\frac {dx_{1}\cdots dx_{c-1}}{\ln x_{1}\cdots \ln x_{c}}}}
ただし式中の積は素数全体 p に渡って行い、γc ,p (n ) は合同式 n = q 1 + … + q c mod p (q 1 , …,q c ≠ 0 mod p ) の解の個数を表す。
この予想は c ≥ 3 において正しいことがヴィノグラードフ (英語版 ) により厳密に証明されているが、c = 2 の場合は未だ証明されていない。c = 2 のとき上式は、n が奇数のとき 0 、n が偶数のとき
2
Π
2
(
∏
p
∣
n
;
p
≥
3
p
−
1
p
−
2
)
∫
2
n
d
x
(
ln
x
)
2
≈
2
Π
2
(
∏
p
∣
n
;
p
≥
3
p
−
1
p
−
2
)
n
(
ln
n
)
2
{\displaystyle 2\Pi _{2}\left(\prod _{p\mid n;p\geq 3}{\frac {p-1}{p-2}}\right)\int _{2}^{n}{\frac {dx}{(\ln x)^{2}}}\approx 2\Pi _{2}\left(\prod _{p\mid n;p\geq 3}{\frac {p-1}{p-2}}\right){\frac {n}{(\ln n)^{2}}}}
と単純化される。ただし Π2 はハーディ・リトルウッドの双子素数定数
Π
2
:=
∏
p
≥
3
(
1
−
1
(
p
−
1
)
2
)
=
0.6601618158
…
.
{\displaystyle \Pi _{2}:=\prod _{p\geq 3}\left(1-{\frac {1}{(p-1)^{2}}}\right)=0.6601618158\ldots .}
である。
この予想は「拡張ゴールドバッハ予想(英 : Extended Goldbach conjecture )」と呼ばれることもある。実際、強いゴールドバッハ予想は双子素数予想 にとても良く似ており、これら二つの予想の難しさは概ね同程度であると考えられている。
記事中のゴールドバッハの分配函数をヒストグラムにすることで、上述の式をより見やすく描写することもできる。ゴールドバッハ彗星 も参照。
厳密な結果
強いゴールドバッハ予想は、さらに非常に難しい。ヴィノグラードフ (英語版 ) の方法を使い、チュダコフ (英語版 ) [ 9] や、ヴァン・デル・コルプト (英語版 ) [ 10] や エスターマン (英語版 ) [ 11] は、ほとんど全ての偶数が 2つの素数の和として表すことができることを示した(この意味は、そのように書くことのできる偶数の確率が 1 に近づく傾向にあるという意味である)。1930年、レフ・シュニレルマン (英語版 ) は[ 12] [ 13] で、任意の 1 より大きな自然数 は C 個よりも多くない素数の和として書き表すことができることを証明した。ここに C は有効に計算可能な定数である。シュニレルマン密度 を参照。シュニレルマンの定数 は、この性質を持つ最も小さな数であり、シュニレルマン自身は C < 800000 を得た。この結果は多くの人々により拡張されている。オリバー・ラマレ (英語版 ) は、1995年に全ての偶数 n ≥ 4 は、多くとも6つの素数の和であることを示した。ハラルド・ヘルフゴット は、2013年に弱いゴールドバッハ予想 を証明したとする論文を発表した[ 14] [ 15] [ 16] [ 17] が、これが正しいとすると、その帰結として全ての偶数 n ≥ 4 は多くとも4つの素数の和であることになる。[ 18]
陳景潤 は、1973年に篩法 を使い、全ての十分に大きな偶数は 2つの素数の和として書き表されるか、もしくは一つの素数と半素数 (2つの素数の積)の和として書き表すことができることを示した。[ 19] 例を挙げると、100 = 23 + 7·11 陳の定理 を参照。
1975年、ヒュー・モンゴメリ (英語版 ) とロバート・チャールズ・ヴォーン (英語版 ) は、「ほとんど」全ての偶数は 2つの素数の和として表すことができることを示した。詳しくは、正の数 c と C が存在して、全ての十分に大きな数 N に対して、N よりも小さな数は 2つの素数の和であることを、彼らは示した。この例外は、多くとも
C
N
1
−
c
{\displaystyle CN^{1-c}}
である。特に、2つの素数の和であらわされない偶数の集合は自然密度 (英語版 ) ゼロである。
ユーリ・リンニック (英語版 ) は、1951年、全ての十分に大きな偶数が 2つの素数と 2 の 高々 K 乗との和として表せるような K が存在することを証明した。ロジャー・ヒースブラウン (英語版 ) とジャン・クリストフ・シュラージ・プクタ (英語版 ) は、2002年に、K = 13 であることを発見した。[ 20] これは、2003年にヤノス・ピンツ (英語版 ) とイムル・ルッツァ (英語版 ) により K=8 と改善された。[ 21]
数学の多くの有名な予想と同じように、ゴールドバッハ予想を解いたと主張する多くの「証明」があるが、数学の学会では受け入れられていない。
類似した問題
素数を、例えば平方数のような他の特別な数の集合に置き換えると、同じような問題を考えることができる。
また整数環 Z と同じく一意分解整域 である多項式環 Z [x ] に対して同じような問題を考えると、これは証明することができる。Hayes (1965) 参照。
脚注
注釈
^ ある正の数 n について、1 以上 n 未満の数のいずれもが n の異なる約数の和で表されるとき、その n をプラクティカル数という。例えば、12 の約数は、1, 2, 3, 4, 6 であり、11 以下の正の整数は、5=3+2, 7=6+1, 8=6+2, 9=6+3, 10=6+3+1, 11=6+3+2 で表されるので、12 はプラクティカル数である。プラクティカル数の列は、
1, 2, 4, 6, 8, 12, 16, 18, 20, 24, 28, 30, 32, 36, 40, 42, 48, 54, ....
となる。
出典
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^ 「ゴールドバッハの予想 」『デジタル大辞泉』。https://kotobank.jp/word/%E3%82%B4%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F%E3%81%AE%E4%BA%88%E6%83%B3 。コトバンク より2024年12月14日 閲覧 。
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関連項目
外部リンク