クーン・ポーカー (Kuhn poker) は二人零和不完全情報ゲームとしてハロルド・クーン が考案した、非常に単純化されたポーカー である。非常に単純であるため、ゲーム理論 を用いて完全な分析が可能である。クーン・ポーカーはキング ・クイーン ・ジャック などのたった3枚(3種類)のカードのみを用いるポーカーである。各プレイヤに1枚ずつカードが配られ、一般的なポーカーと同様にベット を行う。両プレイヤがベットするか、両プレイヤーがパスした場合、より強いカードを持つプレイヤーが勝利し、片方のみのプレイヤーがベットした場合には、ベットしたプレイヤーが勝利する。
ゲームの説明
一般的なポーカー用語を用いてクーン・ポーカーの進行を説明する。
各プレイヤーはアンティ (参加費)として1を払う。
各プレイヤーは1枚のカードを配られる。3枚目の、配られていないカードは見えないよう横に置く。
プレイヤー1はチェックするか、1だけベットするかを選ぶ。
プレイヤー1がチェックした場合、プレイヤー2がチェックするか、1だけベットするかを選ぶ。
プレイヤー2がチェックした場合、全員がチェックであるためショー・ダウン となり、強いカードを持つプレイヤーが掛け金2を得る(他のプレイヤーから掛け金1得る)。
プレイヤー2がベットした場合、プレイヤー1はフォールドするか、コールするかを選ぶ。
プレイヤー1がフォールドした場合、勝者であるプレイヤー2は掛け金3を得る(プレイヤー1から掛け金1を得る)。
プレイヤー1がコールした場合、ショー・ダウンとなり、より強いカードを持つプレイヤーが掛け金4を得る(他のプレイヤーから掛け金2を得る)。
プレイヤー1がベットした場合、プレイヤー2がフォールドするかコールするかを選ぶ。
プレイヤー2がフォールドした場合、勝者であるプレイヤー1は掛け金3を得る(プレイヤー2から掛け金1を得る)。
プレイヤー2がコールした場合、ショー・ダウンとなり、より強いカードを持つプレイヤーが掛け金4を得る(他のプレイヤーから掛け金2を得る)。
最適戦略
クーン・ポーカーには混合戦略ナッシュ均衡 が存在する。両プレイヤーがその戦略を実践すると、プレイヤー1(先手)が1回あたり−1/18だけ敗北する。クーン・ポーカーは零和ゲームであるため、プレイヤー2(後手)は1/18だけ勝利する。純粋戦略ナッシュ均衡は存在しない。
考案者であるハロルド・クーンはプレイヤー1にとって1つのパラメータを持つ連続な無限の均衡戦略が存在することを示した。いろいろな表現があるが、その1つの定式化では
プレイヤー1は自由に選んだ
α
∈
[
0
,
1
/
3
]
{\displaystyle \alpha \in [0,1/3]}
に対して、
ジャック(最弱カード)を持っている場合には
α
{\displaystyle \alpha }
の確率でベット
キングを持っている場合には
3
α
{\displaystyle 3\alpha }
の確率でベット
クイーンを持っている場合には常にチェック
プレイヤー2がそのチェックに対してベットした場合には
α
+
1
/
3
{\displaystyle \alpha +1/3}
の確率でコール
という戦略である。
プレイヤー2は唯一の均衡戦略を持つ。
キングを持っている場合には常にベットかコール
クイーンを持っている場合には、可能ならチェックを、不可能であれば
1
/
3
{\displaystyle 1/3}
の確率でコール
ジャックを持っている場合には常にコールせず、
1
/
3
{\displaystyle 1/3}
の確率でベット
という戦略である。
混合戦略ナッシュ均衡の確率を含むクーン・ポーカーの完全木。点線は支配戦略 の部分木を示す。
参考文献
Kuhn, H. W. (1950). “Simplified Two-Person Poker”. In Kuhn, H. W.; Tucker, A. W.. Contributions to the Theory of Games . 1 . Princeton University Press. pp. 97–103
James Peck. “Perfect Bayesian Equilibrium ”. Ohio State University. 2 September 2016 閲覧。 :19-29
外部リンク
定義 解概念 と精緻化戦略 ゲームのクラス ゲーム 定理 主要人物 関連項目