クロタチカマス科(学名:Gempylidae)は、スズキ目サバ亜目に所属する魚類の分類群の一つ。クロタチカマス・アブラソコムツなど、中層遊泳性の深海魚を中心に16属24種が所属する[1]。日本には11属12種がいる[2]。
概要
クロタチカマス科の魚類はすべて海水魚で、熱帯・亜熱帯から温帯海域にかけての深海に広く分布する[3]。中深層(水深200-1,000m)を主な生息範囲とし、海底から離れた中層を遊泳して生活する種類が多い。
本科の仲間は体長数十cmから2m近くに達する中・大型の魚類で、資源量の多い一部の種類は食用として利用される。一方で深海での浮力確保のため体に多量のワックスを含む種類もあり、バラムツ・アブラソコムツは日本では食用としての販売が禁止されている[4]。
体は細長く、左右にやや平たく側扁するものから、円筒形に近いものまでさまざま。下顎は上顎よりもやや長く突き出ている。主上顎骨が露出し、歯は長く鋭い[1]。
本科魚類は明瞭な尾鰭をもち、近縁のタチウオ科との重要な鑑別点となっている[1]。胸鰭は体側の低い位置にある。腹鰭は退縮傾向が強く、1本の棘条しかもたないものや、カゴカマスなどほとんど消失した種類もある。臀鰭の棘条は1-3本、軟条は8-35本。背鰭と臀鰭の後方には小離鰭が存在する。椎骨は32-58個。
分類
クロタチカマス科は16属25種で構成される。アブラソコムツ属(1種)は本科の中で最も古い起源をもつグループと考えられており、他のすべての属の姉妹群とみなされている[1]。Tongaichthys 属など数属はサバ科と多くの形質を共有するほか、ホソクロタチ属はタチウオ科と中間的な特徴をもつなど、本科魚類の位置付けには不明瞭な部分も多い[1]。
- アオスミヤキ属 Epinnula
- アオスミヤキ Epinnula rex
- Epinnula magistralis
- アブラソコムツ属 Lepidocybium
- カゴカマス属 Rexea
- クロシビカマス属 Promethichthys
- クロタチカマス属 Gempylus
- トウヨウカマス属 Neoepinnula
- トウヨウカマス Neoepinnula orientalis
- Neoepinnula americana
- ナガタチカマス属 Thyrsitoides
- ハシナガクロタチ属 Nesiarchus
- バラムツ属 Ruvettus
- フウライカマス属 Nealotus
- ホソクロタチ属 Diplospinus
- ホソクロタチ Diplospinus multistriatus
- Paradiplospinus 属
- Paradiplospinus antarcticus
- Paradiplospinus gracilis
- Rexichthys 属
- Thyrsites 属
- Thyrsitops 属
- Tongaichthys 属
出典・脚注
- ^ a b c d e 『Fishes of the World Fourth Edition』 p.431
- ^ 土居内龍「クロタチカマス科」、中坊徹次 編・監修『小学館の図鑑Z 日本魚類館』小学館、2020年第5刷(初版2018年)、440頁、ISBN 9784092083110
- ^ a b 『日本の海水魚』 p.655
- ^ 厚生省通達(昭和45年9月4日付 環乳第83号および昭和56年1月10日付 環乳第2号)
参考文献
外部リンク