ガマズミ
ガマズミ(莢蒾[2]、学名: Viburnum dilatatum)は、山地や丘陵地の明るい林や草原に生えるガマズミ科[注 1]ガマズミ属に属する落葉低木。秋に赤く熟した果実は食用になり、薬酒にもなる。 名称和名「ガマズミ」の語源は諸説あり、赤い実という意味の「かがずみ」が転訛したもの[3]、果実を頬張ると噛まずに種を吐き出すため「かまず実」の説がある[4]。また、昔は熟した赤い果実を染料に使ったので「染め」がゾメからズミへ転訛したと説く人もいる[5]。別名はアラゲガマズミ[1][2]、ヨスズ[5]、ヨソゾメ[6][7]、ヨツズミ[8][6][7]、ヨウゾメ[8][6]ともよばれる。中国名は「莢迷」[1]「莢蒾」(きょうめい)[8]。 分布域・生育地日本、朝鮮半島、中国などの東アジア地域に分布し、日本では北海道南西部、本州、四国、九州に分布する[3][2]。平地から山地、丘陵地に分布し、雑木林や山野の日当たりのよい場所に自生する[8][6][7][2]。 形態・生態落葉広葉樹の低木で、樹高2 - 4メートル (m) 程度となる[7]。樹皮は灰褐色[2]。若い枝は星状毛や腺点があって、灰緑色で楕円形の皮目も多い[2]。古枝は灰黒色で皮目がある[7]。 葉は対生し、長さ6 - 15センチメートル (cm) 程度の円形や卵形から広卵形で、葉縁に細かい鋸歯がある[3][7]。表面には羽状の葉脈がわずかに出っ張り、凹凸がある。表面は脈上にだけ毛があり触るとざらつくが[9]、裏面では腺点や星状毛などが多い。秋には紅葉し、橙色からやや淡い赤色、時に複数の色が混じるが、紅葉初期は紫色が残って周辺部が黒ずむことも多い[9]。 花期は5 - 6月[2]。本年枝の先に散房花序を出して、白い小さな花が平頭状に多数咲く[3][6][7]。花は直径約5ミリメートル (mm) で、花冠は深く5裂する[7]。雄蕊は5個[7]。 果期は晩夏から秋にかけて(9 - 10月)[7]。果実は直径6 mm程度の球形で、赤く熟して食用できる[3]。果実は最終的に晩秋のころに表面に白っぽい粉をふき、この時期がもっとも美味になる。冬になっても、赤い果実が残っていることがある[2]。果実はヒヨドリやメジロなどの小鳥に食べられて運ばれ、排泄物と一緒に種子が散布されて分布域を広げる[5]。 冬芽は卵形で粗い毛が多く生え、紅色を帯びた芽鱗は4枚ついて、外側の2枚は小さい[2]。枝の先端につく頂芽は、よく頂生芽を伴ってつけている[2]。枝の側芽は対生し、頂芽よりも小さい[2]。冬芽わきに残る葉痕は、倒松形やV字形で、維管束痕は3個つく[2]。 分類近縁のコバノガマズミ(Viburnum erosum Thunb.)やミヤマガマズミ(Viburnum wrightii Miq)の葉は比較的細長く先端が尖った楕円形であるので、区別できる(しかし葉は変異が多いため、区別しにくいこともある)。 利用秋以降の果実は食べられ、ワイン色が美しい果実酒になる[6]。材は丈夫なことから、鎌や鍬など農具の柄に用いられる[3]。染料や油も採られる[3]。枝は柔らかく折れにくいので、昔から何かを束ねる時に使った。枝をよって縄をつくり、刈柴などを手際よくまとめた。 食用果実は甘酸っぱく食用になる[3]。初秋には酸味が強くて生食できないが、秋が深まると透明感が出て甘くなる[6]。ダイコンやカブなどの浅漬けを漬ける時に一緒に用いられ[4]、「赤漬け」は長野県戸隠村でよく行うもので紅色に染まり、実の酸味がついた大根漬けとなる。生食するほか、ジュースやキャンディ、酢、ポン酢、果実酒、ジャム[6]、ゼリー、健康ドリンクなどに商品化されている。鮮やかな赤色に完熟した果実は、焼酎やホワイトリカーに漬け込んで3か月以上たてば果実酒になり、ほぼ半年で実を取り出すと退色しない[4]。同属のコバノガマズミ、ミヤマガマズミ、ヤブデマリ、オオカメノキなども同様に利用することができる[4]。 丈夫でよく分枝するため、庭木として観賞用に植樹されることもある。 薬用果実は「莢蒾子」(きょうめいし)とよんで、赤く熟した果実をとって薬用にする[8]。果実を焼酎に漬けて果実酒にすると、疲労倦怠、動脈硬化予防などの薬用効果もある[7]。ガマズミの薬酒は、果実を乾燥したもの、熟した生果実のどちらでもよく、容器の3分の1ほど入れて35度のホワイトリカーに1か月以上漬け込んで作る[8]。1日に猪口1杯程度飲むとされるが、妊婦は服用しない[8]。 脚注注釈
出典
参考文献
関連項目 |