オースティン・パワーズ
「オースティン・パワーズ」(Austin Powers)は、1997年製作のアメリカ映画とそのシリーズ作品、およびそれらの主人公である。主演のマイク・マイヤーズはプロデューサーと脚本も兼ねている。全作でジェイ・ローチが監督を務め、デミ・ムーアらがプロデューサーとして参加した。 1960年代のポップカルチャーをベースにした『007』シリーズをはじめとしたスパイ映画のパロディ(3作目のサブタイトルも『007』シリーズのパロディ)で、写真家、ミュージシャンでありながらイギリスのスパイである、オースティン・パワーズのドタバタ劇を描いている。世界中でヒットし、第3作目まで製作された。 概要1960年代の若者ムーブメント「スウィング・ロンドン」をベースに『007』シリーズのパロディを織り交ぜたコメディ映画。作中一貫して1960年代のポップカルチャーが取り入られ、サイケデリックなポップアートのセットや音楽、ビートルズをはじめとした1960年代のロックスターたちを基にした衣装。女性の髪形ミニスカートなど、1960年代の流行が作風に随所に取り入られた、コメディ作品となっている。 制作の発端は『サタデー・ナイト・ライブ』の1960年代風のロックバンド「ミン・ティ」のコントでマイヤーズが演じたボーカル、オースティン・パワーズを基に映画を制作する事から企画がスタートし[1]、同じく1960年代をテーマとした映画作品にスパイ映画が多かったことから、1960年代のカルチャーの中にスパイ映画を組み込んだコメディ映画へとなった。 名前の由来は2005年まで実在したイギリスの大手自動車メーカー、ブリティッシュ・レイランドの傘下にあったオースチンから取られている。1960年代までのオースチンはイギリスを代表する老舗名門ブランドで大衆車から高級車まで手掛けていたが、1970年代以降は高級車分野を撤退して大衆車ブランドに転換、さらにイギリスに蔓延した労働紛争の影響から品質が急激に落ち、その結果イギリスでの支持も低下し終息した。 登場キャラクター
第1作
『オースティン・パワーズ』(Austin Powers: International Man of Mystery)は、1997年に製作されたアメリカ合衆国のコメディ映画。 1960年代に冷凍保存され1990年代に復活したオースティンが宿敵Dr.イーブルと対決する。単なるギャグだけでなく、時代のギャップに直面するオースティンの悲哀も描いている。美女とスパイとパロディ満載のどたばたコメディとしては、1967年に公開された英米合作の映画『007 カジノロワイヤル』(デヴィッド・ニーヴン主演)の後続作品でもある。 本作にはUS公開バージョンとインターナショナルバージョンがあり、日本ではインターナショナルバージョンが上映された。US公開バージョンではクリスチャン・スレーターやロブ・ロウの出演場面などがカットされているほか、一部のシーンが短縮されて5分近く短くなっている。1999年発売のDVDはインターナショナルバージョンだったが、2003年発売のDVDはUS公開バージョンに変更されており、カットされたシーンは映像特典として収録されている。2016年に発売されたBlu-rayはインターナショナルバージョンを収録している。 あらすじ1967年、流行に乗る有名ファッション写真家でありイギリスの諜報員でもあったオースティン・パワーズ(マイク・マイヤーズ)は、自身が所有するナイトクラブ(the Electric Psychedelic Pussycat Swingers Club)で宿敵Dr.イーブル(マイク・マイヤーズ)を追い詰める。イーブルは「Bob's Big Boy」(レストラン「ビッグ・ボーイ」のマスコット人形)の像の形をしたロケットで宇宙へ逃走し、自身を人体冷凍保存する。イーブルが蘇生した時に備え、オースティンは包接水和物に自ら入り冷凍睡眠を始める。 30年後の1997年、イーブルは新たな世界征服計画と共に地球へ帰還する。組織の隠れ蓑として買収したシアトルのコーヒー会社が経営的に大成して表の世界では大実業家となったMr.ナンバー・ツー(ロバート・ワグナー)もイーブルのもとに戻り、数百万ドルをかけた「バルカン計画」に加担する。すでに裕福であったイーブルだが、数々の計画で世界各国をゆすり、より多くの金銭を得ようとする。しかし1960年代には恐ろしかったはずの陰謀のいくつかは、この30年間に実現してしまっており、部下からいちいち訂正を受ける。核兵器の奪取、オゾン層の破壊、世界の拿捕という古い計画は撤回したが、世界征服に必要な金額として1千億ドルを要求することを決める(この30年間で貨幣価値が変わったという部下の忠告で金額を上げた)。一方、部下のフラウ・ファービッシナ(ミンディ・スターリング)はイーブルの精液を使い、人工的にイーブルの息子スコット・イーブル(セス・グリーン)を作り上げていたが、彼はグランジやハードロック、PCゲームに夢中なボンクラで世界征服に関心をもってくれず、イーブルを失望させる。 イーブルの復活に気付いたイギリス国防省はオースティンを解凍。1960年代に彼の助手であったミセス・ケンジントン(ミミ・ロジャース)はこの30年間に退職したため、娘ヴァネッサ・ケンジントン(エリザベス・ハーレイ)が彼のエージェントとなる。1960年代に彼が持っていた自由恋愛主義の信条は、1990年代には時代遅れとなっており、ヴァネッサを誘惑しようとしても成功しない。後に2人は夫婦に成りすましてラスベガスのホテルに宿泊し、ナンバー・ツーのイタリア人秘書アロッタ・ファジャイナ(ファビアナ・ウーデニオ)と出会う。偵察と情事のため彼女の日本風ペントハウスに向かい、地球の核に核弾頭を打ち込み噴火の引き金とし世界の爆発を目論むイーブルの「バルカン計画」を知る。パワーズが復活し自分に追っていることを知ったイーブルは「フェムボット」という魅力的な女性型ロボットを製造し、オースティンを誘惑させて殺そうとする。オースティンはアロッタと浮気をしたことをヴァネッサに謝罪し、二度と浮気をしないと誓う。 2人はイーブルの本部に潜入するが、彼の子分のランダム・タスク(ジョー・サン)に捕らえられる。イーブルは要求を世界に伝えた後、たとえ金銭を受け取ったとしても「バルカン計画」を遂行すると語る。その後彼はオースティンとヴァネッサを死の罠にかけるが、2人は簡単に逃亡に成功する。ヴァネッサを外部へ脱出させたオースティンはフェムボットたちに捕まって誘惑されかけるが、辛くも我に返るとセクシーなストリップを披露し、興奮し過ぎたフェムボットたちは文字通り頭が爆発する。増援を連れて戻って来たヴァネッサとオースティンは世界滅亡装置を発見し、戦闘の末、ぎりぎりのところで解除する。メイン・ルームでイーブルを見つけ、もう少しで彼に制裁を加えるところであったが、銃口をヴァネッサに向けたアロッタが登場し、イーブルを攻撃しようとしていたオースティンを阻止する。しかし時代遅れな世界征服にうんざりしていたナンバー・ツーがイーブルを裏切り、オースティンと取引しようとしたところ、イーブルは椅子を倒してナンバー・ツーを火に投じ、ロケットで逃亡し、基地の自爆装置を作動させる。ヴァネッサは柔道チョップでアロッタの意識を失わせ、ヴァネッサとオースティンは基地の爆破から逃げる。 後にオースティンとヴァネッサは結婚するが、新婚旅行中にランダム・タスクに靴を投げられ攻撃されるも、二人はタスクを返り討ちにして追い出す。オースティンとヴァネッサがバルコニーに移動して空を見ると、星よりも輝く物体を発見する。望遠鏡で観察してみると、それはまさに復讐を誓うイーブルが冷凍されているところであった。 キャスト
第2作
『オースティン・パワーズ:デラックス』(Austin Powers: The Spy Who Shagged Me)は、1999年に製作されたアメリカ合衆国のコメディ映画。「シャグド(shagged)」は性交を意味するスラング「シャグ(shag)」の過去形。サブタイトルは『007 私を愛したスパイ(007/The Spy Who Loved Me)』のパロディである。 1990年代のイギリスで暮らしていたオースティンがDr.イーブルを追って1960年代に戻る。マイヤーズはオースティンとイーブルに加えてファット・バスタードを含む1人3役をこなした。 主題歌であるマドンナの「ビューティフル・ストレンジャー」のPVにはオースティン・パワーズ、バジル・エクスポジションが登場した。また、ホワイトハウスの破壊シーンは映画『インデペンデンス・デイ』から、ロケットの発射シーンは映画『アポロ13』から流用されたものである。 2011年7月20日にBlu-ray Discがワーナー・ホーム・ビデオより発売され、DVDもワーナーより同日に再発売されている。 作中にて月面基地へ乗り込んだヘザー・グラハムが演じるフェリシティが捕縛されフロントホックブラジャー式の服装に着替えさせられた後、警備兵の隙を突くため自らブラジャーのホックを外し、フェリシティが胸をしっかり揉んでからホックを外したことで丸出しになったおっぱいを求めた警備兵が溶岩に落ちる展開となる。このブラジャーを外す瞬間の台詞はディスクによって違いがあると噂されている。 あらすじ宇宙空間で冷凍睡眠から目覚めたDr.イーブルが地球へ帰還した。再び世界征服を目論む彼は、新発明のタイムマシンを操って1969年に戻り、冷凍睡眠中のオースティンのパワーの源モジョを盗み出す。すっかりパワーをなくし、メゲるオースティン。そんな彼のもとに、英国諜報部から新たな指令が下った。それは彼を追って1969年に戻り、その計画を阻止すること。彼はCIAのエージェント、フェリシティのサポートを得、自らのモジョを取り返すため、そして世界を救うためにDr.イーブルを追う戦いに身を投じる。 キャスト
第3作
『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』(Austin Powers in Goldmember)は、2002年に製作されたアメリカ合衆国のコメディ映画。「メンバー(member)」は陰茎を意味するスラングで、「ゴールドメンバー(goldmember)=金の陰茎」は『007 ゴールドフィンガー』のパロディである。タイトルを巡って『007』シリーズを製作するメトロ・ゴールドウィン・メイヤーから提訴されたものの、変更なしで公開された。 シリーズの中では最も多くの豪華ゲストが出演している。特に冒頭の撮影シーンにはトム・クルーズやスティーヴン・スピルバーグなど当代の有名俳優や映画監督、音楽プロデューサーなどがカメオ出演している。なお、撮影されている映画という設定の劇中劇のタイトルは『オースティン・プッシー』で、これは『007 オクトパシー』のパロディである。 マイヤーズは新登場のキャラクター、ゴールドメンバーを含む4役をこなす。1970年代と現代(2002年頃)を舞台としており、Dr.イーブルが日本企業「ロボト工業」の支援を得て逃亡したことで、中盤から舞台はトーキョー(東京)へと移る。 当時開業して間もない日本科学未来館の建物外観を「ロボト工業」社屋として使用しているが、それ以外のシーンはほとんどがスタジオ収録(クロマキー、スクリーン・プロセス)で、出演者を交えた日本でのロケは行われていない。また、銀座や増上寺といった映像に加えて大阪・道頓堀の空撮シーンが混ざっているが、これは1989年公開の『ブラック・レイン』からの引用である。国技館シーンでの名前は「アサヒ・スモウ・アリーナ」となっているが、場内アナウンスでは「両国国技館」と称されている(これは『007は二度死ぬ』からの引用)。 エンディングクレジットの最後に流れる曲は、マイケル・ケインの出世作となった映画『アルフィー』の主題歌「アルフィー」の替え歌である。ジェイ・ローチ監督の妻であるバングルスのスザンナ・ホフスが歌っている。 キャスト
その他『オースティン・パワーズ』シリーズ1作目に悪役で出演した元プロレスラーのジョー・サンは、2008年、集団強姦の容疑で逮捕され終身刑となっている。また、服役中の刑務所で囚人の殺人容疑もかけられている[5][6]。 脚注出典
関連項目
外部リンク
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