オシエク市電
オシエク市電(クロアチア語: Tramvajski promet u Osijeku)は、クロアチアの都市・オシエク市内を走る路面電車。2020年現在、路線バスと共に市営企業であるオシエク都市旅客輸送(GPP、Gradski prijevoz putnika d.o.o. Osijek)によって運営されている[1][2][3][8]。 歴史19世紀のオシエクは急速な人口増加を受けて都市開発が盛んに行われたが、当時のオシエク市街は東西10 kmに渡って広がり、市民が暮らす地域も4箇所に分散していた事から、移動に適した公共交通機関が求められていた。そこで1884年10月9日、クロアチアおよびヨーロッパ南東部で初の路面鉄道として馬車鉄道が開通した。徒歩よりも早く移動し、利便性も高い当時の最先端の交通機関であった馬車鉄道は多くの利用客を得て、1889年以降延伸工事が盛んに行われた[1][4]。 だが、19世紀末には馬車鉄道の輸送力だけでは旺盛な需要を賄いきれなくなり、より輸送力が高い新たな軌道交通・路面電車を導入する動きが起こった。しかし、民間企業によって運営されていた馬車鉄道を市営事業へ移管する過程で起きた諸問題から計画は難航し、更に第一次世界大戦の影響も受けた事から、最終的に馬車鉄道に代わって路面電車・オシエク市電が運行を開始したのは1926年12月12日となった[1][9][5]。 電化当初から1960年代初頭までは2軸車による運行が行われていたが、同年代からはボギー車の導入が始まり、1968年以降はチェコスロバキア(現:チェコ)製のタトラT3YUが長期に渡って使用された。また、1970年・1990年には路線の延伸や単線区間の複線化工事も行われた。だが、1990年代前半に勃発したクロアチア紛争でオシエク市街は爆撃や戦闘に巻き込まれ、オシエク市電も従業員の死亡を始めとした被害を受けた[1][9][5][10]。 情勢が落ち着いて以降、オシエク市電にはマンハイム市電で使用された中古車両の導入やタトラT3YUの更新など、輸送力の増強が行われている。また2008年にはBikara間、2014年にはVišnjevac方面への延伸も実施されており、後述の通り更なる延伸や近代化も計画されている[1][9][11]。
運行2020年現在、オシエク市電は以下の2つの系統による運行を実施している。全長17 kmの路線の大半は複線区間だが、マルティナ・ディヴァルタ通り(Ulici Martina Divalta)を始めとした一部区間は単線となっている。全区間のうち65 %は併用軌道である[2][3][12][13]。 運賃は路線バスと共通で、1時間の有効期限を持つ乗車券が11クーナ、1日乗車券が35クーナで販売されている。また、20クーナのデポジット代で購入可能な非接触式ICカードを使用した場合は1回の乗車毎の料金が8クーナとなる。利用客は乗車時に自身で乗車券への刻印やICカードの支払いを行う必要があり、無賃乗車が発覚した場合は追加料金が科せられる[14][15][16]。
車両現有車両2019年の時点でオシエク市電に在籍する営業用車両は以下の通りである。これらに加え、動態保存車両として1928年に製造された2軸車が1両存在する。車両は1926年に建設されたハドリヌアス1世通り(Ulici cara Hadrijana 1)沿いの車庫に在籍する[1][17][13]。
過去の車両
今後の予定欧州復興開発銀行からの支援を受けて公共交通機関の近代化を進めるGPPは、路線バスと共にオシエク市電の路線拡張や近代化も積極的に行っている。2014年に実施されたVišnjevac方面への延伸はその一環であり、今後は更に西側のJosipovac地区中心部への延伸が実施される予定となっている。また、送電線の交換や単線区間の複線化も検討されている。一方、車両についてはバリアフリー促進の一環として超低床電車30両分を導入する事が決定しており、2023年にクロアチア国内企業のコンサールとの間に3車体連接車10両+オプション20両の製造契約が結ばれた。導入は2025年4月から開始される予定である[11][24][25]。 新型コロナウイルスの影響新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の被害拡大を防ぐため、クロアチア共和国市民保護本部からの要請に伴い、GPPは2020年3月23日から労働者向けの臨時路線バスを除き公共交通の運行を全面的に停止した。オシエク市電も同様の措置を取ったが、線路や架線など施設の状態を維持するため、4月21日から客を乗せない試運転を行った。その後、公共交通の運行停止措置の解除に伴い、路線バスと共に4月27日から通常の営業運転を再開しているが、GPPでは引き続き乗車時の手の消毒や乗客間の距離など感染対策の徹底を呼びかけている[26][27][28]。 脚注注釈出典
参考資料
外部リンク
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