アンドロメダ座ウプシロン星b

アンドロメダ座υ星b
Upsilon Andromedae b
アンドロメダ座υ星bの想像図
アンドロメダ座υ星bの想像図
星座 アンドロメダ座
分類 太陽系外惑星
ホット・ジュピター
発見
発見日 1996年6月23日
発見者 ジェフリー・マーシーら
発見場所 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
カリフォルニア・カーネギー天文台
発見方法 ドップラー分光法
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α)  01h 36m 47.84216s[1]
赤緯 (Dec, δ) +41° 24′ 19.6443″[1]
赤方偏移 -0.000095[1]
視線速度 (Rv) -28.59 km/s[1]
固有運動 (μ) 赤経: -173.33 ミリ秒/[1]
赤緯: -381.80 ミリ秒/年[1]
年周視差 (π) 74.12 ± 0.19ミリ秒[1]
(誤差0.3%)
距離 44 ± 0.1 光年[注 1]
(13.49 ± 0.03 パーセク[注 1]
軌道要素と性質
軌道の種類 周回軌道
軌道長半径 (a) 0.0595 ± 0.0034 au[2]
(890万1200 ± 50万8640 km)
離心率 (e) 0.022 ± 0.007[3]
公転周期 (P) 4.61711 ± 0.00018 [3]
軌道傾斜角 (i) ~25°[4]
近点引数 (ω) 44.519 ± 24.0°[5]
昇交点黄経 (Ω) 180 ± 180°[5]
準振幅 (K) 70.519 ± 0.368 m/s[5]
アンドロメダ座υ星Aの惑星
物理的性質
半径 0.8257 RJ[6][注 2]
質量 0.62 ± 0.09 MJ[3]
年齢 1440.6 K(アルベドが0.3の場合)[6]
1165.6 K(アルベドが0.7の場合)[6]
他のカタログでの名称
Saffar[7]
アンドロメダ座50番星b
アンドロメダ座υ星Ab
BD +40 332
HD 9826 b
HIP 7513 b
HR 458 b
SAO 37362 b
2MASS J01364784+4124200 b
Template (ノート 解説) ■Project

アンドロメダ座υ星b英語: Upsilon Andromedae b)は、アンドロメダ座の方向に約44光年の位置にある太陽系外惑星である。赤色矮星で伴星のアンドロメダ座υ星Bと区別するため、アンドロメダ座υ星Abと呼ばれることもある。この惑星は、ソーラーアナログアンドロメダ座υ星を、ほぼ5日間で公転しているのが発見された。1996年6月にジェフリー・マーシーポール・バトラーが、最初のホットジュピターの1つとして発見した。アンドロメダ座υ星bは、惑星系の中で最も内側を公転している。

発見

既に発見されている他の多くの太陽系外惑星と同様に、アンドロメダ座υ星bは、惑星の重力による視線速度の変化によって発見された。視線速度の変化は、アンドロメダ座υ星のスペクトルのドップラー効果の変化から検出された。1997年1月に、かに座55番星bうしかい座τ星bとともに発見が公表された[8]

アンドロメダ座υ星bの軌道。

ペガスス座51番星bとともに、通常の恒星を公転する初めての太陽系外惑星であり、アンドロメダ座υ星bは太陽水星の間よりも近い軌道を公転している。公転周期は4.617日であり、軌道長半径は0.0595天文単位である[2]

アンドロメダ座υ星bを発見した視線速度法の制限として、質量は下限しか示されない。アンドロメダ座υ星bの場合、この下限は0.687木星質量と推定されるが、軌道傾斜角から求めた値では、真の質量はもっと大きいと考えられる。しかし現在では、軌道平面からの傾斜角は30°以上であり、真の質量は木星質量の0.687倍から1.37倍と考えられている[9]。共平面性は見られず、c、dとの相互の傾斜角は35°である[4]

物理的な特徴

その大きな質量から、アンドロメダ座υ星bは表面に固体を持たない木星型惑星であると推定されている。惑星が間接的にしか検出されていないため、半径や構成成分といった物理的な特徴は分かっていない。

スピッツァー宇宙望遠鏡により、惑星の表面温度は約1400℃であると測定されたが、惑星の片面は-20℃から230℃、もう片面が1400℃から1650℃であった[10]。この温度の差によりアンドロメダ座υ星bは常に同じ面をアンドロメダ座υ星Aに向けていると推定されている。

Sudarskyらは、この惑星は木星と同じような組成を持ち、環境は化学平衡に近く、大気上層にはケイ素の反射雲があると推定している[11]。反射雲は高温高気圧のガスの上にある成層圏に存在し、恒星からの熱を吸収している[12]。その周りには暗く不透明な、おそらくバナジウム酸化チタンでできた雲が取り巻いているが、ソリンのようなその他の成分がある可能性も否定されていない。

潮汐力のせいで弾き出されてしまうか、惑星系の年齢よりずっと短い期間で破壊されてしまうため、大きな衛星は持たないと考えられる[13]

アンドロメダ座υ星bとペガスス座51番星bは、超高感度偏光計で直接観測が期待される候補の惑星となっている[14]

恒星への影響

アンドロメダ座υ星Aの彩層の活動の活発化は、アンドロメダ座υ星bの影響だと考えられている。観測により、恒星の惑星側から169°の位置にホットスポットが存在することが分かったが、これは恒星と惑星の磁場の相互作用が原因だと考えられている。この機構は木星イオの相互作用と同様のものだと考えられている[15]

名称

2015年、国際天文学連合が太陽系外惑星系の固有名を募集した際、アンドロメダ座υ星bも対象にされた。募集の結果、アンドロメダ座υ星bにはSaffarという固有名が付けられた[7]

関連項目

脚注

注釈

  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ 相互比較参照モジュールなどから推定。

出典

  1. ^ a b c d e f g SIMBAD Astronomical Database”. SIMBAD Result for HD 9826. 2017年5月20日閲覧。
  2. ^ a b Butler, R. et al. (2006). “Catalog of Nearby Exoplanets”. The Astrophysical Journal 646 (1): 505-522. arXiv:astro-ph/0607493v1. doi:10.1086/504701. http://www.iop.org/EJ/article/0004-637X/646/1/505/64046.html.  (web version)
  3. ^ a b c Ligi, R.; Mourard, D.; Lagrange, A.M.; Perraut, K.; Boyajian, T.; Bério, Ph.; Nardetto, N.; TallonBosc, I. et al. (2012). “A new interferometric study of four exoplanet host stars : θ Cygni, 14 Andromedae, υ Andromedae and 42 Draconis”. Astronomy & Astrophysics 545: A5. arXiv:1208.3895. Bibcode2012A&A...545A...5L. doi:10.1051/0004-6361/201219467. http://www.aanda.org/index.php?option=com_article&access=doi&doi=10.1051/0004-6361/201219467&Itemid=129. 
  4. ^ a b McArthur, Barbara E.; Benedict, G. Fritz; Barnes, Rory; Martioli, Eder; Korzennik, Sylvain; Nelan, Ed; Butler, R. Paul (2010). “New Observational Constraints on the υ Andromedae System with Data from the Hubble Space Telescope and Hobby Eberly Telescope (PDF). The Astrophysical Journal 715 (2): 1203. Bibcode2010ApJ...715.1203M. doi:10.1088/0004-637X/715/2/1203. https://web.archive.org/web/20110610220218/http://hubblesite.org/pubinfo/pdf/2010/17/pdf.pdf. 
  5. ^ a b c Russell Deitrick; Rory Barnes; Barbara McArthur; Thomas R. Quinn; Rodrigo Luger; Adrienne Antonsen; G. Fritz Benedict (6 November 2014). "The 3-dimensional architecture of the Upsilon Andromedae planetary system". arXiv:1411.1059v2 [astro-ph.EP]。
  6. ^ a b c ups And b”. Extrasolar Planets's Catalogue. 京都大学. 2017年5月20日閲覧。
  7. ^ a b NameExoWorlds”. 国際天文学連合 (2015年12月15日). 2017年5月20日閲覧。
  8. ^ Butler et al. (1997). “Three New 51 Pegasi-Type Planets”. The Astrophysical Journal 474 (2): L115-L118. doi:10.1086/310444. http://www.iop.org/EJ/article/1538-4357/474/2/L115/5590.html. 
  9. ^ Benedict, George F.; McArthur, B. E.; Bean, J. L. (2007). “The υ Andromedae Planetary System - Hubble Space Telescope Astrometry and High-precision Radial Velocities”. Bulletin of the American Astronomical Society 38: 185.  Announced American Astronomical Society Meeting 210, #78.02
  10. ^ Harrington, J; Hansen BM, Luszcz SH, Seager S, Deming D, Menou K, Cho JY, Richardson LJ (October 27 2006). “The phase-dependent infrared brightness of the extrasolar planet upsilon Andromedae b”. Science 314 (5799): 623?6. doi:10.1126/science.1133904. PMID 17038587. 
  11. ^ Sudarsky, D. et al. (2003). “Theoretical Spectra and Atmospheres of Extrasolar Giant Planets”. The Astrophysical Journal 588 (2): 1121 – 1148. doi:10.1086/374331. https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/2003ApJ...588.1121S/abstract. 
  12. ^ Ivan Hubeny; Adam Burrows (2008). "Spectrum and atmosphere models of irradiated transiting extrasolar giant planets". arXiv:0807.3588v1 [astro-ph]。
  13. ^ Barnes, J., O'Brien, D. (2002). “Stability of Satellites around Close-in Extrasolar Giant Planets”. The Astrophysical Journal 575 (2): 1087 – 1093. doi:10.1086/341477. https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/2002ApJ...575.1087B/abstract. 
  14. ^ Lucas, P. W.; Hough, J. H.; Bailey, J. A.; Tamura, M.; Hirst, E.; Harrison, D. (4 November 2008). "Planetpol polarimetry of the exoplanet systems 55 Cnc and tau Boo". arXiv:0807.2568v2 [astro-ph]。
  15. ^ Shkolnik et al. (2005). “Hot Jupiters and Hot Spots: The Short- and Long-term Chromospheric Activity on Stars with Giant Planets”. The Astrophysical Journal 622 (2): 1075-1090. doi:10.1086/428037. http://www.iop.org/EJ/article/0004-637X/622/2/1075/61179.html. 

外部リンク