アレロパシー(英語: Allelopathy)とは、ある植物が他の植物の生長を抑える物質(アレロケミカル)を放出したり、あるいは動物や微生物を防いだり、あるいは引き寄せたりする効果の総称。邦訳では「他感作用」という。ギリシア語のαλληλων(allēlōn 互いに)+παθος(pathos 感受。あるものに降りかかるもの)からなる合成語である。1937年にドイツの植物学者であるハンス・モーリッシュにより提唱された[1]。
作用経路
いくつかの作用経路を経て、他の植物に影響を与える[1]。
- 葉から、雨・露などの水分接触で滲出する(Leaching)[1]。
- 代謝産物が揮発性物質として放出される(Volatilisation)[1]。
- 植物体の残渣が蓄積する(例えば、桜の葉の落葉後に分解生成されるクマリンや、そのほかの残根、ちぎれた根など)[1]。
- 根から滲出する( exudation )[1]。
識別手法
アレロパシーがあるかどうかの試験には、いくつのかの方法がある[1]。
- 付加栽培法[1]
- 置換栽培法[1]
- 階段栽培法
- 階段状にポッドを並べ、日当たりや養分の競合をなくし、2種類の植物を交互に接続して影響を調べる[1]
- 無影日長栽培法[2]
- 連続的根滲出液捕集法
- 連続的根滲出液捕集法 (CRETS, Continuous Root Exudate Trapping System)とは、根から放出される物質を吸着する樹脂によって収集する。階段栽培法と組み合わせて判別する[1]。
アレロパシーを有する植物の例
アレロパシーは、連作障害の原因の1つと考えられている。セイタカアワダチソウなどの帰化植物が勢力を拡大する要因の1つでもある。また、特定の植物により雑草や害虫を防除する生物農薬としての利用が注目されている。
藻類の例
フロロタンニン(英語版)を生産する藻類は、摂食阻害、着生生物の付着抑制、紫外線に対する生体防御などの役割がある[4][5]。そのほかにも、競争相手の藻類の成長阻害など様々なアレロパシー効果を持つ物質が様々な大型藻類などから確認されている[6][7]。
出典
- ^ a b c d e f g h i j k 義晴, 藤井「4. 植物のアレロパシー」『化学と生物』第28巻第7号、1990年、471-478頁、doi:10.1271/kagakutoseibutsu1962.28.471、2022年7月18日閲覧。
- ^ 藤井義晴『アレロパシー検定法の確立と作用物質の機能』 京都大学〈農学博士 乙第7890号〉、1992年。doi:10.11501/3061475。 NAID 500000086827。https://doi.org/10.11501/3061475。
- ^ 鄭紹輝, 田中利依, 有馬進「ヘアリーベッチのアレロパシーによる雑草抑制効果」『Coastal bioenvironment』第7巻、佐賀大学海浜台地生物環境研究センター、2006年、9-14頁、ISSN 13487175、NAID 110004735066。
- ^ “海洋生物学研究室”. www.s.fpu.ac.jp. 2024年6月22日閲覧。
- ^ 谷口 和也, 蔵多 一哉, 鈴木 稔 (1992). “コンブ科褐藻数種のエゾアワビに対する摂食阻害活性” (英語). 日本水産学会誌 58 (3): 577–581. doi:10.2331/suisan.58.577. ISSN 1349-998X. http://www.jstage.jst.go.jp/article/suisan1932/58/3/58_3_577/_article/-char/ja/.
- ^ Budzałek, Gracjana; Śliwińska-Wilczewska, Sylwia; Wiśniewska, Kinga; Wochna, Agnieszka; Bubak, Iwona; Latała, Adam; Wiktor, Józef Maria (2021-07-23). “Macroalgal Defense against Competitors and Herbivores” (英語). International Journal of Molecular Sciences 22 (15): 7865. doi:10.3390/ijms22157865. ISSN 1422-0067. PMC 8346039. PMID 34360628. https://www.mdpi.com/1422-0067/22/15/7865.
- ^ 鈴木 稔・沖野 龍文 (2002) アレロパシー現象 (pdf). 21世紀初頭の藻学の現況.
関連資料
関連項目
外部リンク