ぐんま昆虫の森
ぐんま昆虫の森(ぐんまこんちゅうのもり)は、群馬県桐生市新里町鶴ケ谷にある県立の昆虫館である。条例上の名称は「群馬県立ぐんま昆虫の森」で、「昆虫の森」と略称される[1]。日本では唯一の教育委員会が運営する昆虫施設である[2]。敷地面積は45 ha(東京ドーム約10個分)もしくは48.2 haで[3]、昆虫観察施設としては日本最大規模である[4][5]。 敷地内には雑木林、小川・田畑などの里山環境を復元しており[2]、1400種類以上の昆虫、約80種類の鳥類が確認されている[4]。敷地内では、カブトムシやオオムラサキなどの昆虫がクヌギの樹液を吸う姿などを観察できる[6][7]。 概要「ぐんま昆虫の森」が整備された新里村の不二山周辺地域(約48ヘクタール)は、クヌギ・コナラの雑木林や棚田、小川、沼などがあり、昆虫や動植物(昆虫89種、鳥類40種など)が多数生息していることが確認されていた[8]。群馬県はこの不二山地域を「富士山沼」「雑木林」「桑畑」「水田」の4ゾーンに区分してそれぞれ環境を保全し、そこに生息する野生の昆虫や動植物を観察したり、養蚕・田植えなどの体験学習を行ったりできるようにする一方、エリア全体の拠点として大温室や展示室などを備えた「昆虫観察館」を建設するという構想を立て、1996年(平成8年)4月22日に発表した[8]。その後、群馬県教育委員会生涯学習課が1997年(平成9年)4月28日に基本計画を発表した[9]。この基本計画策定にあたり、敷地内での昆虫採集を認めるか否かについて議論が紛糾したが、学校や青少年団体の活動の一環としての採集は認める方針が示されたが[9]、採集した昆虫は元の場所に放すルールが制定されている[10]。 1999年(平成11年)から整備を開始し[11]、当初は2001年(平成13年)10月に一部利用の開始、2003年(平成15年)度の開園を目指していた[11]。しかし2001年8月、移築した明治初期の茅葺き屋根民家(「赤城型民家」、約350平方メートル)が落雷による火災で損壊したため、その修復のために一部利用開始は延期され[12]、2002年(平成14年)6月8日に「赤城型民家」や周辺の雑木林、桑畑などの利用が開始された[13]。「赤城型民家」は、前橋市富田町にあった養蚕農家の家(2001年8月時点で建築後約130年)を移築したものである[14]。 館の目玉となる施設「昆虫観察館」は[15]、「富士山沼ゾーン」に建設された[3]。同館は巨大なガラス張りの生態温室と地下の展示室が一体となった地上3階、地下1階の施設で、安藤忠雄建築研究所が建築設計を行い、2004年(平成16年)10月に竣工[16]。同施設の建設費用は約44億円であった[15]。2005年(平成17年)8月1日に全面オープンした[15]。敷地内には不二山沼ゾーン・雑木林ゾーン・桑畑ゾーン・水田ゾーンの4つのゾーンを配し、できるだけ自然環境に近い状態を保っている。ただし、水田ゾーンは非公開となっている。またフィールド全体を戸田芳樹風景計画が手がけている。初代園長は矢島稔[17]。 また、昆虫観察館では自然観察プログラム・里山生活体験プログラム・館内体験プログラムが組まれたり、別館では図鑑や学会誌などが多く所蔵されているフォローアップ学習コーナー(図書室)、かやぶき民家がフィールド上にある。 2022年(令和4年)、利根郡みなかみ町の有限会社月夜野きのこ園(法人番号:9070002035896)が命名権(ネーミングライツ)を取得し、「月夜野きのこ園ぐんま昆虫の森・新里」の愛称が付与され4月1日から使用された(期間は5年)[18]。しかし同社から申し出があり、2023年3月31日にスポンサー契約が解除された[19]。 2023年(令和5年)7月22日から2024年(令和6年)2月25日にかけ、昆虫をモチーフとしたスーパー戦隊シリーズの作品『王様戦隊キングオージャー』とのコラボ企画を行った[20]。2024年時点で毎年夏(7月中旬から8月末ごろ)には、カブトムシ・クワガタムシを題材とした特別展「カブト・クワガタ展」を開催している[21]。 議論と批判西表島の自然の環境再現の是非亜熱帯を体感できるエリアの代表として西表島の自然が再現されている。周辺にも自然が多くあるにもかかわらずなぜ西表島の環境を再現する必要があるのかという議論がある。「周辺には見なれた自然が多くあるが、改めて見ようとする人はほとんどいない。そこで他の場所(西表島)の環境と比べた時に違いがあるということを実感して欲しい」と園長はメッセージを発信している[要出典]。 赤字運営この施設の整備には73億円もの大金がかけられており、そのうち55億円は「地域総合整備事業債」という、いわゆる借金から賄われている。総務省が認めたプログラムに対して、自治体による起債ができるもので元金がほとんどと言ってよいほど必要ないため、財政事情が厳しい自治体でも申請することが可能である。 スケールの大きさに反比例して、入場者数は当初の計画に含まれていた目標を大きく下回り、年間約3億円の赤字が予想されている[要出典]。事業者である県は「独立採算をしなければならない施設ではなく総合的な学習場であり、採算は度外視している」としている[要出典]。 ギャラリー生態温室内園路沿い
脚注
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