ピタゴラスの定理
種類
定理 分野
ユークリッド幾何学 命題
2辺 (a , b ) 上の2つの正方形の面積の和は、斜辺 (c ) 上の正方形の面積に等しくなる。 数式
a
2
+
b
2
=
c
2
{\displaystyle a^{2}+b^{2}=c^{2}}
一般化
結果
初等幾何学 におけるピタゴラスの定理 ( ピタゴラスのていり 、( 英 : Pythagorean theorem )は、直角三角形 の3辺 の長さの間に成り立つ関係について述べた定理 である。その関係は、斜辺 の長さを c , 他の2辺の長さを a , b とすると、
c
2
=
a
2
+
b
2
{\displaystyle c^{2}=a^{2}+b^{2}}
という等式 の形で述べられる[ 1] [ 2] [ 3] 。
現在の日本では三平方の定理 ( さんへいほうのていり ) とも呼ばれている。戦前の日本では勾股弦の定理 ( こうこげんのていり ) と呼ばれていた。「ピタゴラス 」と冠しているが、発見を含めて、定理と何か関係があるのかから知られていない。
ピタゴラスの定理によって、直角三角形において2辺の長さが分かっていれば、残りの1辺の長さを計算することができる[ 注 1] 。例えば、2次元直交座標系 において、座標が分かっている2点間の距離 を求めることができる。2点間の距離は、2点の各座標の差の 2乗の総和の平方根 となる[ 注 2] 。このことは3次元直交座標系でも成り立つ。このようにして一般の有限次元直交座標系に対して導入される距離はユークリッド距離 と呼ばれる。
(a , b , c ) で特に全てが自然数であるものは、本質的に可算 個あることが知られており、ピタゴラス数 と呼ばれている。
定理の概要
直角三角形において、斜辺 の長さ を c 、直角をはさむ 2辺の長さを a , b とすると、次の等式 が成り立ち、「ピタゴラスの定理」と呼ばれる:
a
2
+
b
2
=
c
2
{\displaystyle a^{2}+b^{2}=c^{2}}
ここで a , b , c はいずれも正であるから、2辺の長さから残りの辺の長さを、次のように計算できる:
a
=
c
2
−
b
2
{\displaystyle a={\sqrt {c^{2}-b^{2}}}}
b
=
c
2
−
a
2
{\displaystyle b={\sqrt {c^{2}-a^{2}}}}
c
=
a
2
+
b
2
{\displaystyle c={\sqrt {a^{2}+b^{2}}}}
この定理は、余弦定理 によって一般の三角形に拡張される:任意の三角形において、1つの内角の大きさとそれをはさむ2辺の長さから残りの辺(対辺)の長さを計算できる。特にここで考えている内角の大きさが直角の場合、余弦定理はピタゴラスの等式に帰着する。
歴史
バビロニア数学 について記された粘土板 プリンプトン322
「ピタゴラス が直角二等辺三角形 のタイルが敷き詰められた床を見ていて、この定理を思いついた」などいくつかの逸話が伝えられているが、実際にこの定理にピタゴラス自身が関わった事があるかから全く分かっていない。
ピタゴラスの定理の内容は歴史上の文献にいくつか著されているが、どれだけあるのかは議論がある。ピタゴラスが生まれる前からピタゴラスの定理は広く知られていたと言われるものの、特にユークリッド原論 によって数学が体系化されるよりも前の時代だと、定理のように一般化された形ではなく特定の直角三角形の性質に留まるものが多くなる。辺の長さの比が3:4:5のように特殊な直角三角形がピタゴラスの定理の式を満たす事が分かっていたとしても、全ての直角三角形で定理の式が成り立つと理解できていたかは別の話であり、この意味で、ピタゴラスの定理の真の発見者を特定するのは難しい。
判明しているもので最初期のものは、ピタゴラスが生まれる1000年以上前のバビロン第1王朝 時代ごろ(紀元前20世紀から16世紀の間)とされる[ 4] [ 5] [ 6] [ 7] 。
バビロニアの粘土板 『プリンプトン322 』には、ピタゴラスの定理に関わる要素が数多く含まれている。YBC 7289 の裏面にはそれらしい記述がある。
エジプト数学 やバビロニア数学 などにはピタゴラス数 についての記述があるが、定理を発見していたかまでは定かではない。ただし、直角 を作図するために 3:4:5の直角三角形が作図上利用された可能性がある[ 8] 。紀元前2000年から1786年ごろに書かれた古代エジプト エジプト中王国 のパピルス "Berlin Papyrus 6619 (英語版 ) " には定理に関わる部分が欠けている。
『周髀算経 』におけるピタゴラスの定理の証明(中国語 : 句股冪合以成弦冪 )
中国古代においては、『周髀算経 』(紀元前2世紀 前後)や『九章算術 』の数学書でもこの定理が取り上げられている。中国ではこの定理を勾股定理 、商高定理 等と呼んで説明している。
紀元前3世紀 に書かれたユークリッド原論 では、第1巻の命題47で言及されている。
インドの紀元前5-8世紀に書かれた『シュルバ・スートラ 』などにも定理に関わる文章が見られる[ 9] 。しかし、これはバビロニア数学の影響を受けた結果ではないかという推測もされているが、結論には至っていない[ 10] 。
レオナルド・ダ・ヴィンチ によるピタゴラス の定理の証明。橙色の部分を 90 度回転し、緑色の部分は裏返して図の位置にできる。
「ピュタゴラス(ピタゴラス)の定理」という呼称が一般的になったのは、西洋においても少なくとも20世紀 に入ってからである[ 11] 。
日本での呼称
日本の和算 でも、中国での呼称を用いて鉤股弦の法 ( こうこげんのほう ) 等と呼んでいた[ 12] [ 13] 。「勾(鈎)・股・弦」とはそれぞれ、a 2 + b 2 = c 2 (a < b < c ) としたときの a , b , c を表している。
日本の明治 時代の中等学校の教科書では「ピュタゴラスの定理」と呼ばれていた。
現在、ピタゴラスの定理は「三平方の定理」とも呼ばれているが、「三平方の定理」と呼ばれるようになったのは1942年 (昭和17年)の太平洋戦争 開始後のことである[ 11] 。
このときに「鉤股弦の定理」とする案などもあったが、末綱恕一 (東大教授)の発案で「三平方の定理」に改められたとされる。
ピタゴラス数
3辺の長さが何れも整数である直角三角形 は、ピタゴラスの定理の項目の中で古くから知られた[ 11] 。例えば、紀元前1800年ごろのバビロニアの粘土板には、3辺の長さの表(例えば 49612 + 64802 = 81612 のようなもの)が出ている。
a 2 + b 2 = c 2 を満たす自然数 の組 (a , b , c ) をピタゴラス数 (Pythagorean triple ) という。特に、a , b , c が互いに素 であるピタゴラス数 (a , b , c ) は原始ピタゴラス数 (primitive Pythagorean triple) と呼ばれる。全てのピタゴラス数は原始ピタゴラス数で (a , b , c ) の正の整数倍 (ka , kb , kc ) で表されるから、ピタゴラス数のリストを知るには、原始ピタゴラス数が本質的である。
ピタゴラス数 (a , b , c ) が原始的であるためには、3つのうちある2つが互いに素であれば十分である。原始ピタゴラス数の小さい方のリストは、c < 100 で、a < b とすると次の通りである[ 14] :
(a , b , c ) = (3, 4, 5), (5, 12, 13), (7, 24, 25), (8, 15, 17), (9, 40, 41), (11, 60, 61), (12, 35, 37), (13, 84, 85), (16, 63, 65), (20, 21, 29), (28, 45, 53), (33, 56, 65), (36, 77, 85), (39, 80, 89), (48, 55, 73), (65, 72, 97)
ピタゴラス数の性質
ピタゴラス数 (a , b , c ) には、次の性質がある。
a または b は 4 の倍数
a または b は 3 の倍数
a または b または c は 5 の倍数
自然数の組 (a , b , c ) が原始ピタゴラス数であるためには、ある自然数 m , n が
m , n は互いに素
m > n
m と n の偶奇が異なる(一方が偶数 で他方が奇数 )
を満たすとして、
(a , b , c ) = (m 2 − n 2 , 2mn , m 2 + n 2 ) または (2mn , m 2 − n 2 , m 2 + n 2 )
であることが必要十分である[ 15] [ 16] 。上記の (m , n ) は無数に存在し重複がないので、原始ピタゴラス数は無数に存在し、すべての原始ピタゴラス数を重複なく列挙できる。
例えば
(m , n ) = (2, 1) のとき (a , b , c ) = (3, 4, 5)
(m , n ) = (3, 2) のとき (a , b , c ) = (5, 12, 13)
(m , n ) = (4, 1) のとき (a , b , c ) = (8, 15, 17)
である。a < b を満たす原始ピタゴラス数を a の昇順に並べた一覧表は以下のようになる[ 17] 。
原始ピタゴラス数の一覧表
#
m
n
a
b
c
1
2
1
3
4
5
2
3
2
5
12
13
3
4
3
7
24
25
4
4
1
8
15
17
5
5
4
9
40
41
6
6
5
11
60
61
7
6
1
12
35
37
8
7
6
13
84
85
9
8
7
15
112
113
10
8
1
16
63
65
11
9
8
17
144
145
12
10
9
19
180
181
13
5
2
20
21
29
14
10
1
20
99
101
15
11
10
21
220
221
16
12
11
23
264
265
17
12
1
24
143
145
18
13
12
25
312
313
19
14
13
27
364
365
20
7
2
28
45
53
21
14
1
28
195
197
22
15
14
29
420
421
23
16
15
31
480
481
24
16
1
32
255
257
25
7
4
33
56
65
#
m
n
a
b
c
26
17
16
33
544
545
27
18
17
35
612
613
28
9
2
36
77
85
29
18
1
36
323
325
30
19
18
37
684
685
31
8
5
39
80
89
32
20
19
39
760
761
33
20
1
40
399
401
34
21
20
41
840
841
35
22
21
43
924
925
36
11
2
44
117
125
37
22
1
44
483
485
38
23
22
45
1012
1013
39
24
23
47
1104
1105
40
8
3
48
55
73
41
24
1
48
575
577
42
25
24
49
1200
1201
43
10
7
51
140
149
44
26
25
51
1300
1301
45
13
2
52
165
173
46
26
1
52
675
677
47
27
26
53
1404
1405
48
28
27
55
1512
1513
49
28
1
56
783
785
50
11
8
57
176
185
#
m
n
a
b
c
51
29
28
57
1624
1625
52
30
29
59
1740
1741
53
10
3
60
91
109
54
15
2
60
221
229
55
30
1
60
899
901
56
31
30
61
1860
1861
57
32
31
63
1984
1985
58
32
1
64
1023
1025
59
9
4
65
72
97
60
33
32
65
2112
2113
61
34
33
67
2244
2245
62
17
2
68
285
293
63
34
1
68
1155
1157
64
13
10
69
260
269
65
35
34
69
2380
2381
66
36
35
71
2520
2521
67
36
1
72
1295
1297
68
37
36
73
2664
2665
69
14
11
75
308
317
70
38
37
75
2812
2813
71
19
2
76
357
365
72
38
1
76
1443
1445
73
39
38
77
2964
2965
74
40
39
79
3120
3121
75
40
1
80
1599
1601
また、フランスの数学者ピエール・ド・フェルマー は一般のピタゴラス数 (a , b , c ) に対して、S = 1 / 2 ab (直角三角形の面積)は平方数 でないことを無限降下法 により証明した[ 18] 。
Jesmanowicz 予想
1956年に Jesmanowicz が次の予想を提出した:
(a , b , c ) を原始ピタゴラス数、n を自然数とする。方程式:
(
a
n
)
x
+
(
b
n
)
y
=
(
c
n
)
z
{\displaystyle (an)^{x}+(bn)^{y}=(cn)^{z}}
の自然数解 (x , y , z ) は
x
=
y
=
z
=
2
{\displaystyle x=y=z=2}
のみである。
特別なピタゴラス数
直角をはさむ2辺 a , b が連続する原始ピタゴラス数は
(3, 4, 5), (20, 21, 29), (119, 120, 169), … (オンライン整数列大辞典 の数列 A114336 )
である。この問題はフランスの数学者ピエール・ド・フェルマー が出題し、解も発見した[ 19] 。
斜辺 c と他の2辺の和 a + b が両方とも平方数になる最小のピタゴラス数は
a = 4565486027761, b = 1061652293520, c = 4687298610289
である。この問題はピエール・ド・フェルマーが出題し、解も発見した[ 20] 。
ピタゴラス数 (a , b , c ) において a , b の差が 1 で、c が平方数 になるのは (119, 120, 169) に限られる[ 21] 。
1192 + 1202 = (132 )2 .
3辺の長さが a , b , c の直角三角形と、周の長さと面積の両方が同じ値となる、すべての辺の長さが整数である二等辺三角形が存在するならば、そのような直角三角形は全て相似であり、最小の (a , b , c ) の値は、(135, 352, 377) である[ 22] 。
一般化
角の一般化
第二余弦定理
c 2 = a 2 + b 2 − 2ab cos C
はピタゴラスの定理を C = π / 2 = 90° → cos C = 0 の場合として含む。
つまり、第二余弦定理はピタゴラスの定理を一般の三角形に対して拡張した定理になっている。
指数の一般化
指数の 2 の部分を一般化すると
an + bn = cn
となる。n = 2 の場合、自明(つまり a , b , c の少なくとも1つが 0)や既知解(原始ピタゴラス数の定数倍)を除いても、整数解は実質無数に存在する が、n ≥ 3 の場合は非自明な整数解は存在しない。
次元の一般化
3次元空間内に平面があるとき、その閉領域 S の面積は、yz 平面、zx 平面、xy 平面への射影の面積 Sx , Sy , Sz を用いて
S
2
=
S
x
2
+
S
y
2
+
S
z
2
{\displaystyle S^{2}={S_{x}}^{2}+{S_{y}}^{2}+{S_{z}}^{2}}
と表される。これは高次元へ一般化できる。
ピタゴラスの定理の証明
この定理には数百通りもの異なる証明 がある。
相似による証明
相似を用いた証明
頂点 C から斜辺 AB に下ろした垂線 の足を H とする。△ABC と △ACH は相似 である。ゆえに
AC
:
AH
=
AB
:
AC
⟹
AH
=
AC
×
AC
AB
=
b
2
c
{\displaystyle {\text{AC}}:{\text{AH}}={\text{AB}}:{\text{AC}}\Longrightarrow {\text{AH}}={{\text{AC}}\times {\text{AC}} \over {\text{AB}}}={b^{2} \over c}}
であり、同様に
BH
=
a
2
c
{\displaystyle {\text{BH}}={a^{2} \over c}}
である。したがって
c
=
AH
+
BH
=
b
2
c
+
a
2
c
{\displaystyle c={\text{AH}}+{\text{BH}}={b^{2} \over c}+{a^{2} \over c}}
であるから、両辺に c を掛けて
c
2
=
a
2
+
b
2
{\displaystyle c^{2}=a^{2}+b^{2}}
を得る。
三角比による証明
前節の証明は、三角比 を用いると簡単に表記できる:
c
2
=
c
×
c
=
c
×
(
AH
+
BH
)
=
c
×
(
b
cos
A
+
a
cos
B
)
=
b
×
c
cos
A
+
a
×
c
cos
B
=
b
×
b
+
a
×
a
=
a
2
+
b
2
.
{\displaystyle {\begin{aligned}c^{2}&=c\times c\\&=c\times ({\text{AH}}+{\text{BH}})\\&=c\times (b\cos A+a\cos B)\\&=b\times c\cos A+a\times c\cos B\\&=b\times b+a\times a\\&=a^{2}+b^{2}.\end{aligned}}}
本証明を一般の三角形に拡張すると、第二余弦定理 の証明が得られる。
外接円を用いた証明
外接円を用いた証明
∠C = 90° のとき、斜辺AB を直径とする円O を描くことができる。
このとき点C から直径AB に下ろした垂線の足を H とし、△CHO に対して三平方の定理を証明する。OA = OB = OC = c , CH = a , OH = b とする。
△AHC ∽ △BHC なので、
HA : HC = HC : HB
(OA − OH) : HC = HC : (OB + OH)
(c − b ) : a = a : (c + b )
c 2 − b 2 = a 2
∴ a 2 + b 2 = c 2 ◾️
正方形を用いた証明
正方形を用いた証明
△ABC と合同 な4個の三角形を右図のように並べると、外側に一辺が a + b の正方形 (以下「大正方形」)が、内側に一辺が c の正方形(以下「小正方形」)ができる。
(大正方形の面積)=(小正方形の面積)+(直角三角形の面積)× 4
である。大正方形の面積 は (a + b )2 , 小正方形の面積は c 2 , 直角三角形1個の面積は
1
2
a
b
{\displaystyle {\frac {1}{2}}ab}
である。これらを代入すると、
(
a
+
b
)
2
=
c
2
+
1
2
a
b
×
4
{\displaystyle (a+b)^{2}=c^{2}+{\frac {1}{2}}ab\times 4}
整理して
a
2
+
b
2
=
c
2
{\displaystyle a^{2}+b^{2}=c^{2}}
を得る。
正方形を用いた証明の視覚化
正方形を用いた証明2
正方形を用いた証明3
内接円を用いた証明
△ABC において、内接円 の半径 r を用いて面積 S を表すと
S
=
1
2
r
(
a
+
b
+
c
)
{\displaystyle S={\frac {1}{2}}r(a+b+c)}
(1 )
となるが、∠C = 90° より、
S
=
1
2
a
b
{\displaystyle S={\frac {1}{2}}ab}
(2 )
r
=
1
2
(
a
+
b
−
c
)
{\displaystyle r={\frac {1}{2}}(a+b-c)}
(3 )
となるから、(1) に (2) , (3) を代入すると
1
2
a
b
=
1
4
(
a
+
b
−
c
)
(
a
+
b
+
c
)
{\displaystyle {\frac {1}{2}}ab={\frac {1}{4}}(a+b-c)(a+b+c)}
整理すると
a
2
+
b
2
=
c
2
{\displaystyle a^{2}+b^{2}=c^{2}}
が得られる。
オイラーの公式を用いた証明
三角関数 と指数関数は冪級数 によって定義 されているものとする。(指数法則やオイラーの公式 の証明に本定理が使用されない定義であればよい。)まず sin2 θ + cos2 θ = 1 が任意の複素数 θ に対して成り立つことを(3通りの方法で)示す。
オイラーの公式より
1
=
e
0
=
e
i
θ
−
i
θ
=
e
i
θ
e
−
i
θ
=
(
cos
θ
+
i
sin
θ
)
(
cos
θ
−
i
sin
θ
)
=
sin
2
θ
+
cos
2
θ
{\displaystyle {\begin{aligned}1&=e^{0}=e^{i\theta -i\theta }=e^{i\theta }e^{-i\theta }\\&=(\cos \theta +i\sin \theta )(\cos \theta -i\sin \theta )\\&=\sin ^{2}\theta +\cos ^{2}\theta \end{aligned}}}
または
sin
2
θ
+
cos
2
θ
=
(
e
i
θ
−
e
−
i
θ
2
i
)
2
+
(
e
i
θ
+
e
−
i
θ
2
)
2
=
e
2
i
θ
+
e
−
2
i
θ
−
2
−
4
+
e
2
i
θ
+
e
−
2
i
θ
+
2
4
=
1
{\displaystyle {\begin{aligned}\sin ^{2}\theta +\cos ^{2}\theta &=\left({\frac {e^{i\theta }-e^{-i\theta }}{2i}}\right)^{2}+\left({\frac {e^{i\theta }+e^{-i\theta }}{2}}\right)^{2}\\&={\frac {e^{2i\theta }+e^{-2i\theta }-2}{-4}}+{\frac {e^{2i\theta }+e^{-2i\theta }+2}{4}}\\&=1\end{aligned}}}
もしくは、オイラーの公式から三角関数の半角の公式を導出する。
sin
2
θ
=
(
e
i
θ
−
e
−
i
θ
2
i
)
2
=
e
2
i
θ
+
e
−
2
i
θ
−
2
−
4
=
1
−
cos
2
θ
2
,
cos
2
θ
=
(
e
i
θ
+
e
−
i
θ
2
)
2
=
e
2
i
θ
+
e
−
2
i
θ
+
2
4
=
1
+
cos
2
θ
2
.
{\displaystyle {\begin{aligned}\sin ^{2}\theta &=\left({\frac {e^{i\theta }-e^{-i\theta }}{2i}}\right)^{2}\\&={\frac {e^{2i\theta }+e^{-2i\theta }-2}{-4}}\\&={\frac {1-\cos 2\theta }{2}}\ ,\\\cos ^{2}\theta &=\left({\frac {e^{i\theta }+e^{-i\theta }}{2}}\right)^{2}\\&={\frac {e^{2i\theta }+e^{-2i\theta }+2}{4}}\\&={\frac {1+\cos 2\theta }{2}}\ .\end{aligned}}}
∴
sin
2
θ
+
cos
2
θ
=
1.
{\displaystyle \therefore \sin ^{2}\theta +\cos ^{2}\theta =1.}
[ 23] [ 24]
(1 )
(1) の式はピタゴラスの基本三角関数公式 (Fundamental Pythagorean trigonometric identity) と呼ばれている[ 25] 。
(1) の時点ですでに単位円 上において本定理の成立が明らかである。なぜならば、実数の範囲では、単位円上の偏角 θ の点の座標として定義した (cos θ , sin θ ) と上記の冪級数による定義は一致するからである[ 26] 。
前提とした △ABC について、∠A = θ とおけば
a
=
c
sin
θ
{\displaystyle a=c\sin \theta }
(2 )
b
=
c
cos
θ
{\displaystyle b=c\cos \theta }
(3 )
(1) , (2) , (3) より
a
2
+
b
2
=
(
c
sin
θ
)
2
+
(
c
cos
θ
)
2
=
c
2
(
sin
2
θ
+
cos
2
θ
)
=
c
2
⋅
1
=
c
2
{\displaystyle {\begin{aligned}a^{2}+b^{2}&=(c\sin \theta )^{2}+(c\cos \theta )^{2}\\&=c^{2}(\sin ^{2}\theta +\cos ^{2}\theta )\\&=c^{2}\cdot 1=c^{2}\end{aligned}}}
ゆえに
a
2
+
b
2
=
c
2
{\displaystyle a^{2}+b^{2}=c^{2}}
が得られる。
三角関数の微分公式を用いた証明
正弦および余弦関数を微分すれば
(
sin
θ
)
′
=
cos
θ
{\displaystyle (\sin \theta )'=\cos \theta }
(1 )
(
cos
θ
)
′
=
−
sin
θ
{\displaystyle (\cos \theta )'=-\sin \theta }
(2 )
(1) , (2) および微分公式より
(
sin
2
θ
+
cos
2
θ
)
′
=
2
sin
θ
cos
θ
+
2
cos
θ
(
−
sin
θ
)
=
0
{\displaystyle (\sin ^{2}\theta +\cos ^{2}\theta )'=2\sin \theta \cos \theta +2\cos \theta (-\sin \theta )=0}
したがって
sin
2
θ
+
cos
2
θ
=
C
{\displaystyle \sin ^{2}\theta +\cos ^{2}\theta =C}
ここで C は定数である。θ = 0 を代入すると sin 0 = 0, cos 0 = 1 であるので、C = 1 が得られる。よって
sin
2
θ
+
cos
2
θ
=
1
{\displaystyle \sin ^{2}\theta +\cos ^{2}\theta =1}
(3 )
が得られる[ 24] 。
あとは前節と同様にして
a
2
+
b
2
=
c
2
{\displaystyle a^{2}+b^{2}=c^{2}}
が得られる。
三角関数の不定積分を用いた証明
下記のように関数を定める。
f
(
θ
)
=
sin
2
θ
+
cos
2
θ
.
{\displaystyle f(\theta )=\sin ^{2}\theta +\cos ^{2}\theta .}
上記を漸化式を利用して不定積分すると
∫
f
(
θ
)
d
θ
=
∫
(
sin
2
θ
)
d
θ
+
∫
(
cos
2
θ
)
d
θ
=
(
1
2
θ
−
1
2
sin
θ
cos
θ
+
C
1
)
+
(
1
2
θ
+
1
2
sin
θ
cos
θ
+
C
2
)
=
θ
+
C
{\displaystyle {\begin{aligned}\int f(\theta )d\theta &=\int (\sin ^{2}\theta )d\theta +\int (\cos ^{2}\theta )d\theta \\&=\left({1 \over 2}\theta -{1 \over 2}\sin \theta \cos \theta +C_{1}\right)+\left({1 \over 2}\theta +{1 \over 2}\sin \theta \cos \theta +C_{2}\right)\\&=\theta +C\end{aligned}}}
である[ 27] 。微分積分学の基本定理 を考慮し、これを微分すると
d
d
θ
∫
f
(
θ
)
d
θ
=
f
(
θ
)
=
d
d
θ
(
θ
+
C
)
=
1
{\displaystyle {\frac {d}{d\theta }}\int f(\theta )d\theta =f(\theta )={\frac {d}{d\theta }}(\theta +C)=1}
である。したがって
f
(
θ
)
=
sin
2
θ
+
cos
2
θ
=
1.
{\displaystyle f(\theta )=\sin ^{2}\theta +\cos ^{2}\theta =1.}
ゆえに、ピタゴラスの定理は成立する。
三角関数の加法定理を用いた証明
三角関数の加法定理は、三平方の定理を使わないで証明できる。本定理を使わないで証明した、三角関数の加法定理を使うと、
cos
2
θ
+
sin
2
θ
=
cos
θ
cos
θ
+
sin
θ
sin
θ
=
cos
(
θ
−
θ
)
=
cos
0
=
1
{\displaystyle {\begin{aligned}\cos ^{2}\theta +\sin ^{2}\theta &=\cos \theta \cos \theta +\sin \theta \sin \theta \\&=\cos(\theta -\theta )\\&=\cos 0=1\end{aligned}}}
または
sin
2
θ
+
cos
2
θ
=
sin
θ
cos
(
π
2
−
θ
)
+
cos
θ
sin
(
π
2
−
θ
)
=
sin
π
2
=
1
{\displaystyle \sin ^{2}\theta +\cos ^{2}\theta =\sin \theta \cos \left({\frac {\pi }{2}}-\theta \right)+\cos \theta \sin \left({\frac {\pi }{2}}-\theta \right)=\sin {\frac {\pi }{2}}=1}
が得られる[ 28] [ 29] 。
また、加法定理から導かれる半角公式 を適用すると
sin
2
θ
=
1
−
cos
2
θ
2
{\displaystyle \sin ^{2}\theta ={\frac {1-\cos 2\theta }{2}}}
cos
2
θ
=
1
+
cos
2
θ
2
{\displaystyle \cos ^{2}\theta ={\frac {1+\cos 2\theta }{2}}}
したがって
sin
2
θ
+
cos
2
θ
=
1
{\displaystyle \sin ^{2}\theta +\cos ^{2}\theta =1}
が得られる。
あとはこれまでと同様にして
a
2
+
b
2
=
c
2
{\displaystyle a^{2}+b^{2}=c^{2}}
が得られる[ 28] 。
冪級数展開を用いた証明
三角関数は級数によって定義されているものとし、cos θ と sin θ の自乗をそれぞれ計算すると
sin
2
θ
=
{
∑
n
=
0
∞
(
−
1
)
n
(
2
n
+
1
)
!
θ
2
n
+
1
}
2
=
∑
n
=
0
∞
∑
k
=
0
n
(
−
1
)
k
(
2
k
+
1
)
!
(
−
1
)
n
−
k
(
2
n
−
2
k
+
1
)
!
θ
2
n
+
2
=
∑
n
=
0
∞
(
−
1
)
n
θ
2
n
+
2
(
2
n
+
2
)
!
∑
k
=
0
n
(
2
(
n
+
1
)
2
k
+
1
)
=
∑
n
=
1
∞
(
−
1
)
n
−
1
θ
2
n
(
2
n
)
!
∑
k
=
0
n
−
1
(
2
n
2
k
+
1
)
=
−
∑
n
=
1
∞
(
−
1
)
n
θ
2
n
(
2
n
)
!
∑
k
=
0
n
−
1
(
2
n
2
k
+
1
)
cos
2
θ
=
{
∑
n
=
0
∞
(
−
1
)
n
(
2
n
)
!
θ
2
n
}
2
=
∑
n
=
0
∞
∑
k
=
0
n
(
−
1
)
k
(
2
k
)
!
(
−
1
)
n
−
k
(
2
n
−
2
k
)
!
θ
2
n
=
∑
n
=
0
∞
(
−
1
)
n
θ
2
n
(
2
n
)
!
∑
k
=
0
n
(
2
n
2
k
)
=
1
+
∑
n
=
1
∞
(
−
1
)
n
θ
2
n
(
2
n
)
!
∑
k
=
0
n
(
2
n
2
k
)
{\displaystyle {\begin{aligned}\sin ^{2}\theta &=\left\{\sum _{n=0}^{\infty }{\frac {(-1)^{n}}{(2n+1)!}}\theta ^{2n+1}\right\}^{2}\\&=\sum _{n=0}^{\infty }\sum _{k=0}^{n}{\frac {(-1)^{k}}{(2k+1)!}}{\frac {(-1)^{n-k}}{(2n-2k+1)!}}\theta ^{2n+2}\\&=\sum _{n=0}^{\infty }{\frac {(-1)^{n}\theta ^{2n+2}}{(2n+2)!}}\sum _{k=0}^{n}{\binom {2(n+1)}{2k+1}}\\&=\sum _{n=1}^{\infty }{\frac {(-1)^{n-1}\theta ^{2n}}{(2n)!}}\sum _{k=0}^{n-1}{\binom {2n}{2k+1}}\\&=-\sum _{n=1}^{\infty }{\frac {(-1)^{n}\theta ^{2n}}{(2n)!}}\sum _{k=0}^{n-1}{\binom {2n}{2k+1}}\\\cos ^{2}\theta &=\left\{\sum _{n=0}^{\infty }{\frac {(-1)^{n}}{(2n)!}}\theta ^{2n}\right\}^{2}\\&=\sum _{n=0}^{\infty }\sum _{k=0}^{n}{\frac {(-1)^{k}}{(2k)!}}{\frac {(-1)^{n-k}}{(2n-2k)!}}\theta ^{2n}\\&=\sum _{n=0}^{\infty }{\frac {(-1)^{n}\theta ^{2n}}{(2n)!}}\sum _{k=0}^{n}{\binom {2n}{2k}}\\&=1+\sum _{n=1}^{\infty }{\frac {(-1)^{n}\theta ^{2n}}{(2n)!}}\sum _{k=0}^{n}{\binom {2n}{2k}}\end{aligned}}}
となる[ 注 3] 。ここで二項定理 より
∑
k
=
0
n
(
2
n
2
k
)
−
∑
k
=
0
n
−
1
(
2
n
2
k
+
1
)
=
∑
m
=
0
2
n
(
−
1
)
m
(
2
n
m
)
=
(
1
−
1
)
2
n
=
0
{\displaystyle {\begin{aligned}\sum _{k=0}^{n}{\binom {2n}{2k}}-\sum _{k=0}^{n-1}{\binom {2n}{2k+1}}&=\sum _{m=0}^{2n}(-1)^{m}{2n \choose m}\\&=(1-1)^{2n}=0\end{aligned}}}
である。したがって
sin
2
θ
+
cos
2
θ
=
1
{\displaystyle \sin ^{2}\theta +\cos ^{2}\theta =1}
が得られる。
あとはこれまでと同様にして
a
2
+
b
2
=
c
2
{\displaystyle a^{2}+b^{2}=c^{2}}
が得られる[ 30] 。
回転行列を用いた証明
平面において原点を中心とする角 θ の回転 の表現行列は
R
(
θ
)
=
[
cos
θ
−
sin
θ
sin
θ
cos
θ
]
{\displaystyle R(\theta )={\begin{bmatrix}\cos \theta &-\sin \theta \\\sin \theta &\cos \theta \end{bmatrix}}}
であるが、このことも三平方の定理を用いないで証明が可能である。
R (θ ) R (−θ ) = I 2 (単位行列 )であるが[ 31] 、この式の左辺を直接計算すると
R
(
θ
)
⋅
R
(
−
θ
)
=
[
cos
θ
−
sin
θ
sin
θ
cos
θ
]
[
cos
θ
sin
θ
−
sin
θ
cos
θ
]
=
[
cos
2
θ
+
sin
2
θ
cos
θ
sin
θ
−
sin
θ
cos
θ
sin
θ
cos
θ
−
cos
θ
sin
θ
sin
2
θ
+
cos
2
θ
]
=
[
sin
2
θ
+
cos
2
θ
0
0
sin
2
θ
+
cos
2
θ
]
{\displaystyle {\begin{aligned}R(\theta )\cdot R(-\theta )&={\begin{bmatrix}\cos \theta &-\sin \theta \\\sin \theta &\cos \theta \end{bmatrix}}{\begin{bmatrix}\cos \theta &\sin \theta \\-\sin \theta &\cos \theta \end{bmatrix}}\\&={\begin{bmatrix}\cos ^{2}\theta +\sin ^{2}\theta &\cos \theta \sin \theta -\sin \theta \cos \theta \\\sin \theta \cos \theta -\cos \theta \sin \theta &\sin ^{2}\theta +\cos ^{2}\theta \end{bmatrix}}\\&={\begin{bmatrix}\sin ^{2}\theta +\cos ^{2}\theta &0\\0&\sin ^{2}\theta +\cos ^{2}\theta \end{bmatrix}}\end{aligned}}}
となる[ 32] 。したがって
sin
2
θ
+
cos
2
θ
=
1
{\displaystyle \sin ^{2}\theta +\cos ^{2}\theta =1}
が得られる[ 33] 。
あとはこれまでと同様にして
a
2
+
b
2
=
c
2
{\displaystyle a^{2}+b^{2}=c^{2}}
が得られる。
三角関数と双曲線関数を用いた証明
任意の z ∈ C に対し
sin
2
i
z
+
cos
2
i
z
=
(
i
sinh
z
)
2
+
cosh
2
z
=
cosh
2
z
−
sinh
2
z
=
1
{\displaystyle {\begin{aligned}\sin ^{2}iz+\cos ^{2}iz&=(i\sinh z)^{2}+\cosh ^{2}z\\&=\cosh ^{2}z-\sinh ^{2}z\\&=1\end{aligned}}}
である[ 34] [ 35] 。よって任意の θ ∈ C に対して
sin
2
θ
+
cos
2
θ
=
1
{\displaystyle \sin ^{2}\theta +\cos ^{2}\theta =1}
が成り立つ。
あとはこれまでと同様にして
a
2
+
b
2
=
c
2
{\displaystyle a^{2}+b^{2}=c^{2}}
が得られる。
ピタゴラスの定理の逆
ピタゴラスの定理は、逆 も真となる。すなわち、△ABC に対して
a
2
+
b
2
=
c
2
{\displaystyle a^{2}+b^{2}=c^{2}}
が成立すれば、△ABC は ∠C = π / 2 の直角三角形となる。
証明
ピタゴラスの定理に依存しない証明
ピタゴラスの定理に依存しない証明
△ABC が a 2 + b 2 = c 2 を満たすとする。線分 AB を b 2 : a 2 に内分する点を D とすると
AD
=
c
×
b
2
b
2
+
a
2
=
c
×
b
2
c
2
=
b
2
c
{\displaystyle {\begin{aligned}{\text{AD}}&=c\times {\frac {b^{2}}{b^{2}+a^{2}}}\\&=c\times {\frac {b^{2}}{c^{2}}}\\&={\frac {b^{2}}{c}}\end{aligned}}}
である。これより
AC
:
AD
=
b
:
b
2
c
=
c
:
b
=
AB
:
AC
{\displaystyle {\text{AC}}:{\text{AD}}=b:{\frac {b^{2}}{c}}=c:b={\text{AB}}:{\text{AC}}}
であるから2辺比夾角相等 より
△
ACD
∼
△
ABC
{\displaystyle \triangle {\text{ACD}}\sim \triangle {\text{ABC}}}
。
∴
∠
ADC
=
∠
ACB
{\displaystyle \therefore \angle {\text{ADC}}=\angle {\text{ACB}}}
同様に
∠
BDC
=
∠
BCA
{\displaystyle \angle {\text{BDC}}=\angle {\text{BCA}}}
となるから
∠
ADC
=
∠
ACB
=
∠
BDC
{\displaystyle \angle {\text{ADC}}=\angle {\text{ACB}}=\angle {\text{BDC}}}
(1 )
となる。
(1) より
∠
ADC
=
∠
BDC
{\displaystyle \angle {\text{ADC}}=\angle {\text{BDC}}}
(2 )
一方
∠
ADC
+
∠
BDC
=
π
{\displaystyle \angle {\text{ADC}}+\angle {\text{BDC}}=\pi }
(3 )
であるから、(2) , (3) より
∠
ADC
=
∠
BDC
=
π
2
{\displaystyle \angle {\text{ADC}}=\angle {\text{BDC}}={\frac {\pi }{2}}}
(4 )
(1) , (4) より
∠
ACB
=
π
2
{\displaystyle \angle {\text{ACB}}={\frac {\pi }{2}}}
ゆえに △ABC は ∠C = π / 2 の直角三角形である[ 26] 。
同一法を用いた証明
ピタゴラスの定理を用いた証明
B'C' = a , A'C' = b ,∠C' = π / 2 である直角三角形 A'B'C' において、A'B' = c' とすれば、ピタゴラスの定理より
a
2
+
b
2
=
c
′
2
{\displaystyle a^{2}+b^{2}=c'\,^{2}}
(1 )
が成り立つ。
一方、仮定から △ABC において
a
2
+
b
2
=
c
2
{\displaystyle a^{2}+b^{2}=c^{2}}
(2 )
が成り立っている。(1) , (2) より
c
2
=
c
′
2
{\displaystyle c^{2}=c'\,^{2}}
c > 0, c' > 0 より
c
=
c
′
{\displaystyle c=c'}
したがって、3辺相等 から
△
ABC
≡
△
A
′
B
′
C
′
{\displaystyle \triangle {\text{ABC}}\equiv \triangle {\text{A}}'{\text{B}}'{\text{C}}'}
∴ ∠C = ∠C' = π / 2 。ゆえに △ABC は ∠C = π / 2 の直角三角形である[ 26] 。
対偶を用いた証明
△ABC において ∠C ≠ π / 2 であると仮定する。頂点 A から直線 BC に下ろした垂線の足を D とし、AD = h , CD = d とする。
∠C < π / 2 の場合、直角三角形 ABD においてピタゴラスの定理より
c
2
=
(
a
−
d
)
2
+
h
2
=
a
2
−
2
a
d
+
d
2
+
h
2
{\displaystyle {\begin{aligned}c^{2}&=(a-d)^{2}+h^{2}\\&=a^{2}-2ad+d^{2}+h^{2}\end{aligned}}}
であり、同様に直角三角形 ACD では
b
2
=
d
2
+
h
2
{\displaystyle b^{2}=d^{2}+h^{2}}
である。よって
c
2
=
a
2
−
2
a
d
+
b
2
<
a
2
+
b
2
{\displaystyle c^{2}=a^{2}-2ad+b^{2}<a^{2}+b^{2}}
となる。
∠C > π / 2 の場合も同様に考えて
c
2
=
(
a
+
d
)
2
+
h
2
=
a
2
+
2
a
d
+
d
2
+
h
2
=
a
2
+
2
a
d
+
b
2
{\displaystyle {\begin{aligned}c^{2}&=(a+d)^{2}+h^{2}\\&=a^{2}+2ad+d^{2}+h^{2}\\&=a^{2}+2ad+b^{2}\end{aligned}}}
ゆえに
c
2
>
a
2
+
b
2
{\displaystyle c^{2}>a^{2}+b^{2}}
となる。
よっていずれの場合も
a
2
+
b
2
≠
c
2
{\displaystyle a^{2}+b^{2}\neq c^{2}}
である。対偶を取って、a 2 + b 2 = c 2 ならば ∠C = π / 2 である。
なお、この証明から分かるように、
∠C < π / 2 ⇔ a 2 + b 2 > c 2
∠C = π / 2 ⇔ a 2 + b 2 = c 2
∠C > π / 2 ⇔ a 2 + b 2 < c 2
という対応がある。
余弦定理を用いた証明
余弦定理を用いた証明
ピタゴラスの定理は既知とすると、それより導かれる余弦定理 を用いることができる。△ABC において、a = BC, b = CA, c = AB, C = ∠ACB とおくと、余弦定理より
c
2
=
a
2
+
b
2
−
2
a
b
cos
C
{\displaystyle c^{2}=a^{2}+b^{2}-2ab\cos C}
一方、仮定より
a
2
+
b
2
=
c
2
{\displaystyle a^{2}+b^{2}=c^{2}}
であるから
cos
C
=
0
{\displaystyle \cos C=0}
となる。三角形の内角の和は π であるから 0 < C < π より、
C
=
cos
−
1
0
=
π
2
{\displaystyle C=\cos ^{-1}0={\frac {\pi }{2}}}
ゆえに △ABC は ∠C = π / 2 の直角三角形である。
ベクトルを用いた証明
△ABC において
‖
c
→
‖
2
=
‖
a
→
‖
2
+
‖
b
→
‖
2
{\displaystyle \Vert {\vec {c}}\|^{2}=\Vert {\vec {a}}\|^{2}+\Vert {\vec {b}}\|^{2}}
であり
c
→
=
b
→
−
a
→
{\displaystyle {\vec {c}}={\vec {b}}-{\vec {a}}}
である。
ここで
‖
c
→
‖
2
=
c
→
⋅
c
→
=
(
b
→
−
a
→
)
⋅
(
b
→
−
a
→
)
=
‖
b
→
‖
2
−
2
b
→
⋅
a
→
+
‖
a
→
‖
2
{\displaystyle {\begin{aligned}\Vert {\vec {c}}\|^{2}&={\vec {c}}\cdot {\vec {c}}\\&=({\vec {b}}-{\vec {a}})\cdot ({\vec {b}}-{\vec {a}})\\&=\Vert {\vec {b}}\|^{2}-2{\vec {b}}\cdot {\vec {a}}+\Vert {\vec {a}}\|^{2}\\\end{aligned}}}
である。したがって
b
→
⋅
a
→
=
0
{\displaystyle {\vec {b}}\cdot {\vec {a}}=0}
である。よって
∠
C
=
π
2
{\displaystyle \angle {\text{C}}={\frac {\pi }{2}}}
である。ゆえに、ピタゴラスの定理の逆が証明された。
脚注
注釈
^ 故に (a , b , c ) の自由度 は2次元である。
^ 2次元直交座標系においては、原点O(0, 0) と点P(x , y ) の距離は √ x 2 + y 2 と表すことができる。ここで √ は負でない平方根 を表す。
^ 級数の収束半径は ∞ であるからこれは任意の複素数 θ に対して成り立つ。
出典
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^ a b c 片野善一郎『数学用語と記号ものがたり』裳華房 、2003年8月25日、157頁。
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^ a の順序はオンライン整数列大辞典 の数列 A020884 による。b , c を昇順に並べると、それぞれオンライン整数列大辞典 の数列 A020883 およびオンライン整数列大辞典 の数列 A020882 になる。
^ 足立 (1995 , pp. 31–34, 106–109)
^ 足立 (2006 , pp. 19–22, 49–55)
^ a の順序はオンライン整数列大辞典 の数列 A020884 による。
^ 足立 (2006 , pp. 93–95, 99–101)、高瀬 (2019 , pp. 114–115, 180)
^ 高瀬 (2019 , pp. 99–101, 147–149)
^ 高瀬 (2019 , pp. 151, 174–177)、オンライン整数列大辞典 の数列 A166930 を参照。ただしオンライン数列内のコメント内にある a の値が間違っているので注意が必要。
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参考文献
関連項目
外部リンク