ビスカーチャ (学名:Lagostomus maximus )は、齧歯目 チンチラ科 ビスカーチャ属に分類される齧歯類。現生種では本種のみでビスカーチャ属を構成する(単型 )[ 2] 。別名ビスカッチャ 。
分布
アルゼンチン 北部、パラグアイ 南部および西部、ボリビア 南東部[ 1] [ 2] [ 3]
形態
全長53 - 73.5センチメートル[ 2] 。尾長13.5 - 17.5センチメートル[ 2] 。体重オス7 - 9キログラム、メス3.5 - 4.5キログラム[ 5] 。背面は灰色[ 4] 。顔に黒と白の縞模様が入る[ 4] [ 5] 。成体の体長は53~65cm。尾 はやや長め、形は柴犬のように巻き尾の形になっている。体重4~8kg。外見上、大きな耳を持っているのでウサギの仲間と思われがちだが、ネズミの仲間とされている(齧歯目チンチラ科、テンジクネズミ科の説もあり)。指の数は、前足が4本、後ろ足が3本であり、これはモルモットなどと同様である。夜間の気温は-15℃以下にもなるため、発達した毛皮を持っている [要出典 ] 。
分類
チリヤマビスカーチャ (Lagidium viscacia)
以下の分類はJackson et al.(1996)・MSW3(Woods & Kilpatrick,2005)に従う[ 2] [ 3] 。
Lagostomus maximus maximus (Desmarest, 1817)
Lagostomus maximus inmollis Thomas, 1910
Lagostomus maximus petilidens Hollister, 1914
生態
パンパスや低木林などに生息する[ 5] [ 6] 。夜行性 [ 2] 。十数頭から数十頭の群れで暮らし、地下に掘った共同の巣穴 で暮らす。巣穴の入り口には石や草・骨・糞などを積み上げる[ 4] [ 5] [ 6] 。
朝日が昇りはじめると、日光が当たるところにじっと座り込み、自らの身体を温める。このような習性は、爬虫類に多く見られるが、哺乳類でもワオキツネザルなどに見られる。オオミミマウスと生活圏を共にしていることもあり、オオミミマウスと並んで日光浴していることもある。山岳地帯などの高地で暮らしている。酸素が薄いために気温が保たれず、時には塩湖ですら凍り付くほど気温が下がるなど、生活環境はかなり過酷である。厚い毛皮を持ち、毛皮で寒さをしのいでいるために、毛繕いは欠かさない。厚い毛皮と多い赤血球で低酸素や寒さに耐えている。酸素濃度が薄いことから、体力を無駄に消耗しないようにするため、普段はほとんど動くことはない。落石以外はほとんど動かないとも言われるが、外敵を見かけると岩の上を素早く飛び回り、巣穴に逃げ込む。草についた霜が溶け始めると食物をさがし始める。基本的に草食性であり、草や草の種子などを食す。乾燥地には草があまりなく、採餌は楽ではない。生きるために必要な水分は食物からとる。生息域は岩場が主であり、マチュピチュ遺跡などにも生息することから、観光客の目に触れることも多い。幼体は母親の背中に乗ることもある。天敵はアンデスネコやキツネ、ピューマなどの食肉目やワシなどの猛禽類、ヒトなどである。ただし、酸素 濃度が薄いために捕食者 も追跡に体力を大きく消耗することから、深追いされることはあまりない [要出典 ] 。捕食者はピューマ ・ボアコンストリクター が挙げられる[ 2] 。幼獣の捕食者はパンパスギツネ ・グリソン が挙げられ、これらは本種の巣穴も利用する[ 2] 。メスがジョフロワネコ に追跡された報告例もあり、カニクイイヌ にも捕食されている可能性がある[ 2] 。
1回に2匹の幼獣を産む[ 2] [ 5] 。寿命は7 - 8年と推定されている[ 2] 。
人間との関わり
分布域が広く生息数も多いと考えられているため、絶滅の危険性は低いと考えられている[ 1] 。家畜との競合により影響を受けている可能性もある[ 1] 。
現地では狩猟 の対象である。主に食用 にされており、毛皮 をとる対象でもある。毛皮は頻繁に生え変わるため商品価値は同生息域のビクーニャ などに比べると低い。
出典
^ a b c d e f Roach, N. 2016. Lagostomus maximus . The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T11170A78320596. doi :10.2305/IUCN.UK.2016-2.RLTS.T11170A78320596.en , Downloaded on 29 April 2017.
^ a b c d e f g h i j k l m n John E. Jackson, Lyn E. Branch, Diego Villarreal Valladares, Amy L. Deane, and Jaime E. Jimenez, "Lagostomus maximus ," Mammalian Species , No. 543, American Society of Mammalogists, 1996, pp. 1-6.
^ a b c d e Charles A. Woods, C. William Kilpatrick, "Lagostomus ". Mammal Species of the World , (3rd ed.), Volume 2, Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, pp.1551-1552.
^ a b c d Ian R. Bishop 「その他のテンジクネズミ型げっ歯類」伊澤紘生訳『動物大百科 5 小型草食獣』今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編、平凡社 、1986年、116-119頁。
^ a b c d e f 川道武男 「テンジクネズミの仲間たち」『動物たちの地球 哺乳類II 9 リス・ビーバー・ヤマアラシほか』第9巻 57号、朝日新聞社 、1992年、284-285頁。
^ a b c d 今泉吉典・松井孝爾監修「ビスカッチャ」『原色ワイド図鑑3 動物』、学習研究社 、1984年、51、225頁。
関連項目
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