Vz 58
Vz 58またはSa vz.58(Samopal vzor 58・1958年型短機関銃)は、チェコスロバキアのチェスカー・ズブロヨフカ国営会社(チェコ兵器廠国営会社、チェコ語:Česká zbrojovka, n.p.:ČZ、1992年民営化)で開発されたアサルトライフルである。 テーパーのかかった薬莢に対応する大きく湾曲した弾倉、上下二分割されたハンドガード、レシーバーデッキに銃床の根元が接しないなど、外見はAK-47に類似しているが、7.62x39mm弾を使用する以外に共通点はなく、ほとんど独自設計となっている。 日本赤軍によるテルアビブ空港乱射事件で用いられた自動小銃としても知られている。 概要チェコスロバキアは自動小銃の開発先進国で、1920年代末にZH-29を完成、1930年代末からZK38、ZK381等を試作したが1938年からナチスドイツによる併合を受けた為に量産化には至らなかった。 1942年から試作されていたZK420は戦後7.92~6.5mmと様々な口径の制式弾仕様が作られ、1946年にはイギリス、デンマーク、エチオピア、エジプト、スウェーデン、イスラエル、スイス等で次期主力小銃候補としてテストされた。しかし、1948年の共産党無血クーデターにより、チェコスロバキア共和国に人民民主主義体制を掲げる共産党一党独裁政権が成立し東側入りした為、どの国もこのライフルを採用しなかった。 1952年には、ZK420とは異なるコンセプトのvz. 52小銃を開発、チェコスロバキア軍が制式採用した。Vz 52は独自の7.62mm×45弱装弾を使用(この弾薬を使用するVz 52軽機関銃もある)するセミオートマチックカービンで、性能はソビエト連邦のSKSカービンに近い物であった。チェコスロバキアは比較的自由に兵器を設計していたが、この頃になるとワルシャワ条約機構加盟国の兵器、弾薬の統一を進めるソ連の圧力が高まり、1957年にはVz 52が7.62mm×39仕様に改修されVz 52/57が開発される。 さらに他の加盟国と同様、ソ連のAK-47採用を迫られたチェコスロバキアだが、独自のアサルトライフル開発は続けられ、1958年には外見こそAK-47によく似ているが、より軽量で命中精度も高いVz 58を独自設計で完成させ、軍が制式採用した。 その後の東欧自由化、チェコスロバキアのチェコとスロバキアへの分離を経た後も、Vz.58は両軍で使われている。NATO加盟などに合わせてチェスカー・ズブロヨフカ社が、旧ソ連のAK-74に強く影響を受けたCZ2000を開発したが両軍は採用しなかった。2007年からアフターマーケットで出回っているカスタムパーツを装備することで現代の歩兵システムに対応しているが、採用から50年あまり経ち老朽化が進む中、スロバキア軍はVz 58を使用し続けているが、チェコ軍では2011年から5.56mm NATO弾を使用するCz805の配備が開始され置き換えが進んでいる。 特徴AKがボルトキャリアと一体化したロングストロークガスピストンを備えたロータリーボルトロッキング機構を採用しているのに対し、Vz 58はボルトキャリアから独立したショートストロークガスピストンと、上下方向の回転式独立型ロッキングブロック機構を採用している。 ボルトキャリアの後退に伴いボルトキャリアから後ろ斜め下方向に突き出た突起が、ボルトに取り付けられたロッキングブロックの上部を、ブロック後端を支点として上方向に回転させながら持ち上げることにより、ロッキングブロックがレシーバー内部の窪みから外れボルトの結合が解除され、ボルトが後退し薬室が開放される[1][2]。 撃発機構は特異なリニアハンマー方式と呼ばれるもので、ボルトキャリアに組み込まれたリニアハンマーと呼ばれる細長い円筒形の撃鉄がシアによって後退位置で保持され、引き金が操作されるとリニアハンマーが解放されて結合するスプリングの力で前進し、ボルト内部の極めて短い撃針を押し出すというストライカー方式とハンマー方式の中間のようなタイプを採用している。このリニアハンマーは銃身と同軸で移動する為、AKの回転式ハンマーに比べて銃身の上下動を起こしにくい。これにより銃身内弾道が安定し、また作動方式に動揺の少ないショートストロークガスピストンを採用している事もありAKより優れた命中精度を発揮する。 AKには無い機能として、残弾が無くなると自動でボルトキャリアが後退位置で停止するボルトストップ機構も搭載している。マガジン側にもこの機構の一部が搭載されているためAKのマガジンと互換性は無いが、必要な強度を保ちつつもアルミニウムを採用し軽量化されている。 Vz 58は近代的な直銃床のフルオート小銃でありながらボルトキャリアがレシーバーデッキに覆われず露出している。このためボルトキャリアの後退時は極めて大きい排莢口となり排莢時のジャムが発生しづらくなっている。また、排莢はほぼ真上に向かって行われる。 この構造のため曲銃床のSKSカービンと同様にボルトを後退させた状態で、銃弾を束ねたストリッパー・クリップを用いて装填する事もでき、ボルトキャリアの先端にはクリップを保持するガイドとなる溝が彫られている。(サイト中盤にクリップで装填する画像あり) セレクター・レバーは安全装置を兼ね、AKと同様にレシーバーの右側面に位置するが、AKのようにダストカバーを兼ねていないため小型であり、グリップから手を離さず操作可能。バヨネットラグはAKのものと異なるため、専用の銃剣を使用し、バヨネットラグの後方から着脱する。 金属部分の仕上げによって外見が異なり、大きく分けて黒塗りされた物、グレーで塗装された物、グレーで焼付け塗装された物の三種類が確認されている。チェコスロバキア軍(現在のチェコ共和国軍及びスロバキア共和国軍)では、グレーで焼付け塗装した物が採用されている。ハンドガード、グリップ、ストックは、初期型では樫材使用の木製だったが、後期型ではエボナイト系樹脂に木材チップを混ぜたものになっている。 バリエーション
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出典
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