S&W M27(Smith&Wesson Model.27) は、アメリカ のS&W 社が開発し1935年に発表した回転式拳銃 である。
当初はその名を冠して、単に「(スミス&ウェッソン).357マグナム (S&W 357 Magnum )」と称され[ 1] 、「レジスタード・マグナム (Registered Magnum )」の名でも呼ばれた。これらの名は1957年 にモデルナンバー制度が導入されたあとでも、引き続き通称として用いられている[ 2] 。
本項では基礎となったM27の他、後年に発売された派生型である2種類のM627 、およびM327 についても記述する。
概要
本銃は.357マグナム弾 と同時に発表され、その使用に公式対応した同社初の量産銃であり、.357マグナム弾という比較的小口径 ながら強力な実包 を採用していることから、より大口径の.44スペシャル弾 のために設計された大柄で重いが、耐久性の高いNフレームを用いて設計されている。これは、先行して1930年 に発表された.38/44ヘビーデューティー (英語版 ) などと同じアプローチである。同銃で用いられていた.38/44ヘビーデューティーは、単なる.38スペシャル弾 の強装弾 というよりは.357マグナム弾に帰結する試みの1つであり、実のところ、シリアル・ナンバー上は本銃は.38/44ヘビーデューティーと混在している[ 1] 。
1935年 に発表され、当初は一般販売は行われず、特別注文のみで購入できる限定品の扱いであった。そして又、注文時に銃身長、グリップ、サイト、トリガー、ハンマー、仕上げ等を細かく指定する事が出来、通称の「レジスタード・マグナム(Registered Magnum)」の名は、1939年 までは購入者には引渡し時に品質保証書を兼ねた所有者登録証(レジストレーション=registration.「登録」の意)が発行されたことに由来している。そういった経緯から、銃の表面は丁寧に仕上げられており、フレームトップの反射防止用の細かく彫られたチェッカリング、より細かく調節できるリアサイト が装備されているなど、当時としては高級な拳銃 として位置づけられている。
3.5インチモデルはジョージ・パットン 将軍 がSAA と共に愛用していた。また、ベトナム戦争 時のアメリカ軍 特殊部隊 員も接近戦用やバックアップ用として個人で所持していたとの情報がある。
21世紀 に入り、2016年現在となっても、M27は“CLASSICS”シリーズという形ではありながらもS&W社のカタログに記載されており、4インチ銃身モデルと6 1/2インチ銃身モデルが販売されている。
バリエーション
M27 6インチ ニッケルメッキモデル
M27は本銃の普及版と位置づけられている[ 1] 1954年 発表のM28 の他には、銃身長の他、製造時期による仕様の差以外には長らく公式のバリエーションモデルが存在しなかった。第二次世界大戦後のスミス&ウェッソン 社の殆どの拳銃にはモデル番号に「6」の字を冠するステンレス モデルがラインナップされているが、本銃は酸化焼入処理(ブルーイング) の施されたもの以外にはニッケルメッキモデルがあるのみで、材質はスチールのみであった。
M627
発売開始から半世紀以上経った1989年 には、材質をステンレス鋼 とし、シリンダーを側面に溝のないノンフルーテッドシリンダー、銃身をM586/686 と同じバレルアンダーラグを持つ5 1/2インチのものとしたモデルが「M627 」として発売されたが、銃身側面の刻印に".357 MAGNUM MODEL OF 1989"とあったことから、M627の名称よりは「S&W Model of 1989 」の名称で知られている。この初代M627は1989年から1997年の生産停止までの間に約5,000丁が生産された。
PC M627
M27やM28はフレームが前述の通り大柄なN-フレームである分、シリンダー (弾倉 )も大きいので細身の.357マグナム弾ならば7-8発分の収納スペースを作ることができる。このため、アメリカ の射撃愛好家達による多弾装化カスタム が数多く製作され、1996年には、S&W のオフィシャルカスタム部門であるパフォーマンス・センターによるカスタムモデルという扱いながら、シリンダーを8連装とした公式多装弾モデルである「PC M627 (Performance Center M627 )」が生産された[ 2] 。
この新たなM627は、根本から絞り込まれたような独特のバレルシュラウドの形状から「 "contoured slabside" barrel profile」の通称があり、2.625インチ銃身の“スナブノーズ”モデル[ 3] の他、4[ 4] /5[ 5] /6.5インチ銃身のバリエーションがあり、この他に銃口にシルバーカラーの取り外し可能なコンペンセイター を装着し、バレルシュラウドをフルカバータイプとしてトリガー他を高精度のものとした競技用カスタムモデルである「V-COMP」[ 6] がラインナップされている。
M327
M327 PD
2003年 にはパフォーマンス・センターカスタムの一つとして、PC M627の銃身を2インチとし、フレームの材質をスカンジウム合金(スカンジウム 添加アルミニウム合金 )、バレルシュラウドとシリンダーの材質をチタニウム 合金とした「M327 」[ 7] (「M327SC」「M327 Carry」の通称もある)が発表され、2004年 にかけて少数生産された[ 2] 。
これが市場で好評を博したため、S&Wでは2006年 に、同じくパフォーマンス・センターカスタムとして「M327 M&P R8 」[ 8] および「M327 TRR8 」[ 9] を発表した。両モデルともシリンダーとバレルシュラウドの材質をマットブラックフィニッシュのステンレスとし、5インチのバレルの上下面にピカティニーレール を設けたもので、他にもV-ノッチリアサイト、フレーム内側にスチール製の耐熱ガード等を備えている。M&P R8は警察および軍事組織向け、TRR8は競技用として販売され、TRR8はピカティニーレールが取り外せるようになっていることが特徴である。
2008年 には更なるバリエーションとして、4インチ銃身にアンダーラグのあるステンレス製バレルシュラウドを持ち、HI-VIZ集光式フロントサイトと調節可能なV-ノッチリアサイトを備え、スカンジウム製フレーム、チタン製シリンダーを持つ「M327 PD 」[ 10] 、2.5インチ銃身としシリンダーとバレルシュラウドをスチール製とした「M327 NG (M327 Night Guard)」)[ 11] が発表された。しかし、これらのモデルは2016年現在ではS&Wの公式カタログに「過去の製品」として記載されているのみである。
登場作品
漫画・アニメ
『シティーハンター 』
冴羽獠 が所持。使用というよりも分解して隠し持っている。
『ルパン三世シリーズ 』
主に劇場版作品にて次元大介 が所持し、同社製のM19 に変わって使用している(実銃のM19は.357マグナム弾 を撃つのに適していない)。
ゲーム
『コール オブ デューティ ワールド・アット・ウォー 』
「.357 Magnum」の名称で登場する。キャンペーンでは使用できず、マルチプレイ・ゾンビモードでのみ使用できる。
『バトルフィールドV 』
「Model 27」としてマルチプレイでのみ使用可能。開発スタッフのお気に入りで、この銃のみ取り出し時にガンスピンのモーションが設けられている。
出典
参考文献
Supica, Jim; Nahas, Richard (2007). Standard Catalog of Smith & Wesson (Third Edition) . Gun Digest Books. ISBN 978-0896892934
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、
S&W M27 に関連するメディアがあります。
外部リンク