CBX5CBX5(chromobox 5)またはHP1α(heterochromatin protein 1 alpha)は、ヒトではCBX5遺伝子にコードされるタンパク質である[5][6]。高度に保存されており、ヘテロクロマチン形成に関与する構成する非ヒストンタンパク質ファミリーの1つである、HP1ファミリーに属する。HP1のN末端にはクロモドメインが存在し、メチル化されたリジンに対して作用してエピジェネティックな抑制をもたらす[7]。C末端領域にはクロモシャドウドメインが存在し、ホモ二量体化やさまざまなクロマチン関連非ヒストンタンパク質との相互作用を担う[8]。 構造HP1αは191アミノ酸から構成される[7][8]。上述したように、このタンパク質には、N末端のクロモドメイン(CD)とC末端のクロモシャドウドメイン(CSD)の2つのドメインが存在する。CDはメチル化されたヒストンH3リジン9番残基(H3K9)に結合する。CSDはホモ二量体化し、他のさまざまなクロマチン関連非ヒストンタンパク質と相互作用する[8]。この2つのドメインはヒンジ領域で連結されている[9]。 クロモドメインクロモドメインは、3本のストランドのβシートと1本のαヘリックスからなる球状のコンフォメーションをとる。βシートはC末端側に位置するαヘリックスに対してパッキングする[9]。CDのメチル化H3K9への特異的結合は、"hydrophobic box"と呼ばれる3つの疎水性側鎖によって媒介されている。HP1上のその他の部位はH3のN末端テールと相互作用し、柔軟なテール領域は一定の構造をとるようになる。テールの隣接領域の翻訳後修飾によってHP1の結合に影響が生じる場合がある[9]。 クロモシャドウドメインCSDの形状はCDとよく似ている。3本のストランドからなるβシートを持つ球状ドメインであるが、αヘリックスは2本存在する[9]。CSDはin vitroでは容易にホモ二量体化し、その結果、PxVxLの特異的コンセンサス配列を有するHP1結合タンパク質を結合するための溝が形成される[8]。 作用機序HP1αは主に遺伝子のサイレンシングをもたらす因子として機能し、その作用はCDとメチル化H3K9との相互作用に依存している[10]。CD上に存在するhydrophobic boxは、メチル化リジン残基の結合に適した環境を提供する。HP1αが遺伝子のサイレンシングをもたらす正確な機構は不明であるが、HP1はヘテロクロマチン領域でも迅速に交換されていることが実験的に示されている。このことは、ヘテロクロマチンはHP1が「糊」のように機能することで維持されているのではなく、むしろ多くの因子の動的な競合によってヘテロクロマチン構造と遺伝子の抑制、そしてユークロマチン構造と遺伝子の活性化が維持されていることを示唆している。H3K9がメチル化されている染色体領域ではHP1はより高濃度かつより静的となり、遺伝子が抑制されたヘテロクロマチン構造がもたらされる[9]。 進化的保存性HP1αは進化的に保存されたタンパク質であり、分裂酵母Schizosaccharomyces pombeなどの種からヒトまで広く存在する[9]。ヒトとショウジョウバエのホモログの比較では、N末端のCDとC末端のCSDの保存性がより高く(50–70%のアミノ酸類似性)、ヒンジ領域は比較的低い(25–30%のアミノ酸類似性)[9]。 相互作用CBX5(HP1α)は次に挙げる因子と相互作用することが示されている。 出典
関連文献
関連項目外部リンク
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