BOE (企業)
BOEテクノロジーグループ(京東方科技集団、簡体字中国語: 京东方科技集团股份有限公司、英: BOE Technology Group Co., Ltd.、SZSE: 000725)は、中華人民共和国北京市大興区の北京経済技術開発区[1]に本社を置く電子製品製造メーカー。液晶ディスプレイ製造分野では、2019年より世界1位のシェアを誇る。略称BOE。 創設者は王東升で、赤字の真空管工場を25年で世界1位の液晶ディスプレイメーカーにまでのし上げた。2019年に王が引退し、董事長はBOE創設以来の部下である陳炎順となった。日本法人として、BOEジャパン株式会社(英: BOE Japan Co.,Ltd.)が2011年11月に設立された。 概要中国の大手ディスプレイメーカーで、主に液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどを製造している。 2022年現在、ディスプレイの市場シェア世界1位。内訳では、スマートフォン向けで1位、タブレット向けで1位、ノートパソコン向けで1位、汎用ディスプレーで1位、テレビ向けで1位、つまり全ての分野で1位[2]。小型液晶パネルでは世界1位、大型液晶パネルでも世界1位だが、有機EL(OLED)パネルは弱く、サムスンディスプレイとLGディスプレイに次ぐ世界3位[3]。 2010年代後半より有機ELディスプレイ(OLED)に力を入れており、2018年には成都市にOLED工場(B7)を稼働。当初はファーウェイを主要な顧客としていたが、ファーウェイは2020年より米中関係悪化の煽りを受けてスマホ部門が縮小したため、Appleなど他のスマホメーカーにOLEDの供給を広げている。2019年、四川省綿陽市の工場(B11)にiPhone専用OLED生産ラインを稼働し、2021年よりApple社のiPhoneへの供給を開始。それまでサムスンD製OLEDしか使わなかったサムスン電子の「Galaxy」シリーズにも2021年よりOLEDを供給したことで話題となった[4]。 2020年には、シャープより技術供与を受けてIGZO液晶を製造していたCECパンダの成都工場と南京工場(現・BOE B18、B19)を買収。「IGZO」(VAパネル&酸化物TFT-LCD)の技術を獲得し、IGZO液晶を生産すると同時に、将来のテレビ向けの大型OLEDパネルの量産を目指してIGZO OLEDの開発を行っている。 Appleとの関係2020年よりAppleのサプライヤーとして参画している[5]。MacBookとiPadの一部モデル向けにIGZO液晶を納入している。またiPhone向けにOLEDディスプレイを納入している。2022年現在、ディスプレイに関してはサムスンDとLGDに次ぐ第3位のサプライヤーであり、成都工場(B7)や重慶工場(B11、B12、B13)などApple専用ラインを多数持つ。 2022年1月、Appleに無断でディスプレイの仕様を変更してiPhone向けに出荷していたことが発覚し、Appleが激怒。納入がストップした。5月に納入が再開。サプライチェーンから除外はされなかったものの、納入数がかなり減らされた[6]。 2022年、iPad用ディスプレイではLGDを抜いて第1のサプライヤーとなったが、iPhone用ディスプレイでは許されず、iPhone 14でも納入数がかなり減らされた[7]。予定ではiPhone 14に最大3000万枚を供給し、LGの供給量を上回ると想定されていたが、500万枚にされた。 iPad用OLEDの開発を目指してサムスンD、LGDとしのぎを削っており、2022年には重慶工場(B12)にiPad用のリジッドOLEDラインを稼働。iPad Air (第5世代)より搭載される予定だったが、量産に難航し、BOEによるiPad用OLEDの開発は断念された[8]。 歴史1951年に国営の真空管工場である「北京電子管廠」として設立。この工場が、北京市の経済改革の一環で1993年に独立することになった。 1993年にBOEが設立された。設立当初の英語名はBeijing Oriental Electronics Group Co., Ltd。北京電子管廠の工場長だった王東升が董事長に就任し、赤字で潰れかけだった国営の真空管製造工場を建て直した[9]。 1997年6月10日に深圳証券取引所のA株に上場し、2001年1月12日に同取引所のB株に上場した[10]。 2003年、IPS方式のバリエーションである「FFS方式」を開発した韓国Hydis社(韓国のハイニックスの液晶ディスプレイ部門を2001年に分社化したもの)を買収した。しかしHydis社の経営を改善することはできず、Hydis社は2006年に不渡りを出したため[11]、2007年に台湾の液晶パネルメーカーであるPrime View International社(2009年にE-ink社に改称)に売却した[12]。一方BOEは「FFS方式」をベースに「ADS方式」の液晶パネルを開発した。 特に2010年代以降は、ADSパネルが各社のテレビに採用されるなど、液晶ディスプレイメーカーとして急成長。2014年までに、北京市(B4)、内モンゴル自治区オルドス市(B6)、重慶市(B8)などに巨大な液晶ディスプレイ工場を次々と稼働させた。こうした工場群を背景に液晶ディスプレイの出荷量は年々増加。2017年1月には大型液晶パネルの月間の出荷量で初めて世界1位となり[13]、2019年には年間でも出荷枚数、出荷面積ともにLGディスプレイを抜き、液晶パネル世界シェア1位となった[14]。 2019年には中国政府の後押しを受け、1.6兆円の投資をして中国各地に新工場を建設する計画を発表[15]。重慶の有機ELパネル工場(B12)は2021年に量産開始。 トリビア
脚注
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