6つの小品 (ヴェーベルン)『管弦楽のための6つの小品』(独: 6 Stücke für Orchester )作品6は、アントン・ウェーベルンが1909年[1]に作曲した管弦楽曲。4管編成の大管弦楽のために書かれたが、1928年にオーケストレーションと速度標語を変更した2管編成版が作られ、師であるシェーンベルクに捧げられた。4管編成版、2管編成版ともに演奏される。 概要全体は無調で書かれているが、難解なウェーベルンの作品の中では比較的分かりやすいポピュラーなものであり[2]、1909年に作曲されたシェーンベルクの『管弦楽のための5つの小品』との密接な関連性が指摘されている[2]。ウェーベルンが23歳の時に経験した母親の死(1906年)が作品の背景となっており、叙情的でありながら、全体は暗い雰囲気に覆われている[3]。各曲の持つ隠された標題は作曲者が1913年1月13日にシェーンベルクに宛てた手紙や、1933年の全ドイツ音楽協会の第63回音楽祭での演奏に寄せたコメントから察することができる。それらをまとめると次のようになる[3]。
各曲には標題はつけられておらず、第4曲のテンポ設定として「葬送行進曲」(marcia hunebre )の指示があるだけであったが、1928年の改訂の際にそれも削除され、「ごく普通の速度で」(Sehr mässig)に改められた。 6つの曲それぞれは平均で25小節という短さであり、最も長い第4曲で41小節、最も短い第3曲に至っては11小節しかない。しかし、デリケート[4]で表情豊かな旋律、色彩的な楽器の組み合わせなどにより、充実した内容と洗練された表現[2]を示している。 ウェーベルンの作風を"ピアニシモ・エスプレッシーヴォ"と表現することがあり[2]、これは『6つの小品』においても当てはまるが、第2曲や第4曲では激しい ff や fff が現れる。特に第4曲(葬送行進曲)の最後2小節における打楽器(4管編成版では8名の打楽器奏者による)の f から fff へのクレッシェンドは、ものすごい迫力を持っている[2]。 演奏時間11分半 - 12分[4] 初演編成4管編成版 (原典版)
各曲ごとに使用楽器が大幅に異なる。 2管編成版
作曲者自身による室内楽版(1920)※リノス・アンサンブルによる録音あり
構成()内の指示は2管編成版。
評価作曲家で哲学者のオドール・アドルノは作品の演奏時間の短さについて「まともに知覚すらできないうちに聴衆を沈黙へと置き去りにしてしまう、彼の多くの楽曲のショック的な短さ」と指摘した上で、作中を支配するピアニッシモの極小とフォルティッシモの轟音などの差について、初演時に起こっていた第一次世界大戦などを比喩的に用いながら「極めて繊細な魂のうごめきのこだまとのみ受け取ってはならない、これ以上考えられない極度の弱音は、無限に遠くから聞こえる無限に強大な爆音の威嚇するような影である。」と表現した[5]。 音楽学者の岡田暁生は作品の編成の大きさと演奏時間の短さについて、グスタフ・マーラーやリヒャルト・シュトラウスのような巨大編成と、本来ならば1時間ほどかけて展開されてもおかしくないものをわずか数分に圧縮して炸裂させていると表現した[6]。 脚注
参考文献外部リンク
|