胆管周辺の模式図肝臓 、右肝管 、左肝管 、総肝管 、胆嚢管 、総胆管 、胆嚢 、オッディ括約筋 、ファーター膨大部 、膵管 、膵臓 、十二指腸
胆汁 (たんじゅう)は、肝臓 で生成される黄褐色でアルカリ性 の液体である。肝細胞 で絶えず生成され、総肝管 を通って胆のう に一時貯蔵・濃縮される。食事時に胆のうが収縮され、総胆管の十二指腸 開口部であるオッディ括約筋 が弛緩し十二指腸 に排出されて働く。
胆汁は3つに分類される[ 1] :
A胆汁(胆管胆汁)
ファーター乳頭 から分泌される。
B胆汁(胆嚢胆汁)
胆嚢で濃縮される。
C胆汁(肝胆汁)
肝細胞で産生される。
胆汁の働き
胆汁は1日に約600ml分泌される。胆汁酸 と胆汁色素を含み、前者は界面活性剤 として食物中の脂肪 を乳化 して細かい粒とし、リパーゼ と反応しやすくすることで脂肪の消化吸収に重要な役割を果たすが、消化酵素 は含まれない。
胆汁酸
脂肪を乳化して消化酵素の働きを助ける。更に脂肪の分解産物に作用して小腸 から吸収されやすく変化させる。また腸内に分泌された胆汁酸の殆どは小腸で再吸収され、肝臓に戻される(腸肝循環 )。
胆汁色素
破壊された赤血球 から遊離したヘモグロビン のタンパク質 部分から切り離されたヘム が、肝臓の細胞で代謝され黄色のビリルビン に変化する。ビリルビンは肝臓でグルクロン酸抱合 を受けて水溶性が高められて胆汁色素として胆汁とともに分泌される。ビリルビンの大半は腸内で腸内細菌 によりウロビリノーゲン に還元され、その一部が体内に再度吸収される。ウロビリノーゲンは抗酸化作用 を有し[ 2] [ 3] 、これが体内で酸化を受けると黄色のウロビリン に変化する。通常の尿の黄色はウロビリンによるものである。これらの循環は腸肝ウロビリノーゲンサイクルと呼ばれている。一方、腸内に残ったウロビリノーゲンは腸内細菌によりステルコビリノーゲン に還元される。ステルコビリノーゲンが酸化を受けると茶色のステルコビリン に変化する。ステルコビリンは大便 とともに排泄され、大便が茶色になる要因となる。
胆石
ヒトにおけるコレステロール の排泄は肝臓から胆汁として分泌されるが、その際にコレステロールの一部から肝臓 で生合成 される胆汁酸 と複合体を形成して排泄 される。
胆汁の中のコレステロールは胆汁酸により分散安定化されているが、胆のう で胆汁が濃縮される際に何らかの原因で遊離しコレステロールの結晶が成長すると、胆のうあるいは胆管においてコレステロール胆石 症の原因となる場合もある。胆石の他の原因であるレシチン やビリルビン による結石 は稀である。
脚注
^ 「胆汁 」『日本大百科全書(ニッポニカ)』。https://kotobank.jp/word/%E8%83%86%E6%B1%81#E6.97.A5.E6.9C.AC.E5.A4.A7.E7.99.BE.E7.A7.91.E5.85.A8.E6.9B.B8.28.E3.83.8B.E3.83.83.E3.83.9D.E3.83.8B.E3.82.AB.29 。コトバンク より2022年11月9日 閲覧 。
^ 中村宜司、佐藤克行、秋葉光雄「胆汁色素代謝物ウロビリノーゲンの抗酸化作用」中村宜司 『日本農芸化学会誌』2001年3月5日、75巻、144ページ。胆汁 - J-GLOBAL
^ NAKAMURATakashi; SATOKatsuyuki; AKIBAMitsuo; OHNISHIMasao (2006). “Urobilinogen, as a Bile Pigment Metabolite, Has an Antioxidant Function”. Journal of Oleo Science (日本油化学会) 55 (4): 191-197. doi :10.5650/jos.55.191 . NAID 130000055572 .
関連項目