精神保健法(せいしんほけんほう、英: mental health law)は、精神疾患と診断されるか診断されうる人に適用され、またそのような人々を管理したり治療することに関した法律の分野である。
2012年のWHO総会では、世界の50%の国々が2020年までに、国際・地域の人権規約に即して、精神保健法を制定または更新する決議がなされている[1]。
各国の法律
同名の個々の法律については以下を参照のこと。
イギリス
日本
WHOの指針
世界保健機関は、1996年に「精神医療法:10の原則」を公表し、以下の指針を示している[2]。
精神医療法:10の原則(MENTAL HEALTH CARE LAW: TEN BASIC PRINCIPLES)
- 精神保健の推進と精神障害の予防。全ての人は最良の精神的健康づくりと精神疾患予防によって、利益を得られるべきである。
- 基本的精神保健ケアへのアクセス。必要とする全ての人は、基本的精神保健ケアへにアクセスする権利を持つ。
- 国際的に承認された原則に則った精神保健診断。診断は国際的に承認を得た基準(WHO ICD-10など)に沿うべきである。
- 精神保健ケアにおける最小規制の原則。患者への規制は最小限とされるべきである。
- 自己決定権。あらゆる介入は事前に患者からの同意を求めるべきである。
- 自己決定権を擁護される権利。患者は自己決定が可能だが困難を覚えている場合、当人の選択した専門的第三者からの支援によって利益を得ることができるとされる。
- レビュー手続きの利用。判事、後見保護者、医療機関などによる意思決定に際しては、必ずレビュー手続きを経なければならない。
- 定期的レビューのメカニズム。患者への処置(治療)や拘束(入院)が長期間に渡る場合には、機械的に定期レビューが実施される制度が存在していなければならない。
- 意思決定者のクオリティ。判事、後見保護者などについては、認証制度を持たなければならない。
- 法の遵守。決定は現行法に沿ってなされるべきであり、その他の基準や裁量で行ってはならない。
— 世界保健機関、2014年[2]
各国の状況
すべての国が精神保健の法律を有しているわけではない。
2001年のThe World Health Reportは、地域ごとに国々が精神保健の法律を制定しているか否かについて、その比率を挙げている[3]。
世界各国の精神保健法の制定状況[3]
地域
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制定している
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制定していない
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アフリカ |
59% |
41%
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アメリカ |
73% |
27%
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地中海東側 |
59% |
41%
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欧州 |
96% |
4%
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東南アジア |
67% |
33%
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西太平洋 |
72% |
28%
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OECD各国の精神保健制度の整備状況[4]
単独で精神保健法がある
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カナダ、エストニア、フィンランド、フランス、アイスランド、イスラエル、イタリア、日本、韓国、ルクセンブルグ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロベニア、スウェーデン、英国イングランド
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他の法制度の一部として整備
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オーストリー、豪州、カナダ、ドイツ、ハンガリー、イスラエル、イタリア、オランダ、ノルウェー、スロバキア、スペイン、スイス、トルコ、米国
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精神保健法があるが、 他の法制度でも規定される
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カナダ、イスラエル、イタリア、ルクセンブルグ、ノルウェー
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脚注
出典
参考文献
関連項目
外部リンク