目的語 (もくてきご、ラテン語 : objectum )は、文 の構成素 、文の成分 の一つ。客語 (きゃくご、かくご)、賓語 (ひんご)、対象語 と呼ぶ場合もあるが、注意を要する。
ロマンス諸語 では目的補語 と呼ぶことが多い。日本語 ではおもに助詞「を」や「に」で示される。目的語を示す格 を目的格 と呼ぶ。
行為の直接的な対象を表す直接目的語 (主として対格 、日本語では「を」等で示される)と、その行為によって間接的に影響を受ける対象を表す間接目的語 (主として与格 、日本語では「に」等で示される)に分類される。
英語
英語 においても、日本語に直訳した場合に「……を」・「……に」の「……」に相当する語 、句 または節 と理解して大きな間違いはないが、動詞 の語法や文型との兼ね合いから若干の注意が必要となる。というのは、英語には助詞 がなく、それに相当する役割を動詞の語法(文型)と前置詞の組合せが担っており、それとの兼ね合いが問題となるからである。
ここでは、目的語を「動詞の目的語」と「前置詞の目的語」に分類して説明する。目的語になれるのは、名詞 ・動名詞 ・不定詞 ・代名詞 (名詞句・名詞節を含む)である(動詞の目的語か前置詞の目的語かによらない)。代名詞のうち、人称代名詞 ・疑問詞 ・関係詞 は目的格をとる。
以下では基本5文型 に従い、次の例文を用いて説明する。
I go to school. (S+V: 第1文型) 私は学校 に 通う。
I love you. (S+V+O: 第3文型) 私はあなた を 愛する。
He gave you a lot of money. (S+V+IO+DO: 第4文型) 彼はあなた に たくさんのお金 を あげた。
This news made me sad. (S+V+O+C: 第5文型) そのニュースは私 を 悲しませた。
上記の例文において S は主語 、V は動詞、C は補語 、O・IO・DOは(動詞の)目的語・間接目的語・直接目的語の略称である。ここでは第2文型 (S+V+C) は挙げていない。
前置詞の目的語
まず、上記の例文 1. の直訳は、「私は学校に通う」である。この場合、 “to school”は「学校に」と直訳されるが、これを「動詞 go の目的語」とは考えない。このように、「……を」・「……に」に相当する語句であっても、to, in などの前置詞を伴ってはじめて「……を」・「……に」という意味を成す場合には[ 注釈 1] 、「動詞の目的語」とは考えない。この例文における“to school”の“school”は「前置詞 to の目的語」である。一般に、前置詞に続く名詞・動名詞・代名詞(名詞句・名詞節を含む)が前置詞の目的語である。
動詞の目的語
第2文型以外で、動詞の直後に、前置詞を置かずに現れる名詞または代名詞は、動詞の目的語である。ただし、動詞とその名詞または代名詞との間に、それを修飾する形容詞 や、形容詞をさらに修飾する副詞 、および限定詞 (冠詞 など)を伴うことがある。それらの場合でも、前置詞は挟まない。
例文 2. において、 “you”は動詞 love の目的語である。
例文 3. において、 “you”は動詞 give の間接目的語 (IO)、 “a lot of money”は動詞 give の直接目的語 (DO)である。
例文 4. において、 “me”は動詞 make の目的語である( “sad”は目的格補語である)。
ドイツ語
ドイツ語 では、与格 (Dativ、3格)の目的語を間接目的語(Dativobjekt、3格目的語)、対格 (Akkusativ、4格)の目的語を直接目的語(Akkusativobjekt、4格目的語)と呼ぶ。冠詞 、形容詞 、代名詞 などの格変化 において、与格と対格を区別する。
他動詞 とは直接目的語をとる動詞のことをいい、それ以外の動詞は自動詞 と呼ぶ。例えば、 “Ich liebe dich.” (英語: “I love you.”) における dich は対格であり、したがって liebe (不定形: lieben)は他動詞である。一方、 “Er half dir.” (英語: “He helped you.” )における dir は与格であり、したがって half (不定形: helfen)は自動詞である。
また、目的語を文頭に置いた場合、主語 は動詞 の次に置かれる(V2語順 )。
Ich liebe dich. → Dich liebe ich.
Er half dir. → Dir half er.
通常、目的語と副詞 が動詞の後ろに並ぶときは、副詞、目的語の順に並ぶ。
Ich lese nachts das Buch. (英語: I read the book at night. )
脚注
注釈
^ to 不定詞(to に続くのが動詞)はこれに含まない。ただし、不定詞には副詞的用法もあり、この場合は動詞の目的語ではない。
関連項目