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この項目では、鉱物グループについて説明しています。
- 燐灰石グループの一般的な性質については「燐灰石」をご覧ください。
- 最も普通の鉱物種については「フッ素燐灰石」をご覧ください。
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燐灰石スーパーグループ |
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分類 |
リン酸塩鉱物 ケイ酸塩鉱物 硫酸塩鉱物 |
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シュツルンツ分類 |
8.BN.05 9.AH.25 7.BD.20 |
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化学式 |
A5(XO4)3Z A: Ca, Pb, Sr, Ba, Y, La, Ce, Nd, Na, Bi, Th, Fe, REE, Ln X: P, S, Si, As, V, B, Al Z: F, Cl, (OH), O |
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結晶系 |
六方晶系 三方晶系 単斜晶系 |
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対称 |
H-M記号: 6/m 空間群: P 63/m |
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晶癖 |
六角柱状結晶 偽六角板状結晶 |
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へき開 |
{0001} 不明瞭 {1010} 悪い |
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断口 |
貝殻状 |
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粘靱性 |
脆い |
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モース硬度 |
5 |
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光沢 |
ガラス光沢 |
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色 |
白・黄・緑・赤・青など |
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条痕 |
白 |
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透明度 |
透明 - 半透明 |
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蛍光 |
なし |
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文献 |
[1][2] |
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プロジェクト:鉱物/Portal:地球科学 |
テンプレートを表示 |
燐灰石スーパーグループ (Apatite Supergroup) とは、鉱物グループの1つ[1]。
概要
燐灰石スーパーグループは、シュツルンツ分類ではリン酸塩鉱物を基本とするが、硫酸塩鉱物とケイ酸塩鉱物にも分類がまたぐグループである。これは、リン酸塩基と硫酸塩基、ケイ酸塩基が全て正四面体の構造をしており、大きさも似ているため、置換関係にあるためである。
結晶系は基本的には六方晶系であり、一部が三方晶系や単斜晶系に属する。結晶の形は、石英の結晶の頭を縮めたような、六角柱に似た結晶で産出する。また、結晶の頭が平らとなった、六角板状結晶もしばしば見られる。色は非常に様々である[1][2]。
化学式
燐灰石スーパーグループの鉱物の基本的な組成式は A5(XO4)3Z である[1]。ただし、結晶化学的には、組成式は A2A3(XO4)3Z と、Aが2つに分かれている[3]。フッ素燐灰石 (Fluorapatite) [4]のように、5つとも全て同じ種類の原子が入る場合も多いため、分けられずにまとめられる場合が多い。ベロフ石グループ[5]、ヘディフェングループ[6]の全てとブリソ石グループの一部[7]、及び燐灰石グループの宮久石 (Miyahisaite) [8]はより結晶化学的に正しい組成式で記述されている。またトリトマイト (Tritomite-(Y)・(Y,Ca,La,Fe)5(Si,B,Al)3)(O,OH,F)13) [9]とセリウムトリトマイト (Tritomite-(Ce)・(Ce,La,Y,Th)5(Si,B)3)(O,OH,F)13) [10]の組成式は上記のものと違うように見えるが、少し書き換えれば実際には同じであることが分かる[注釈 1]。
Aには Ca 、Pb 、Sr
、Ba 、Y 、La 、Ce 、Nd 、Na 、Bi が入る。希土類元素 (REE) 、ランタノイド (Ln) としてまとめられる事がある。また、不純物として Th 、Fe が入る事がある。
Xには P 、S 、Si 、As 、V が入る。また、不純物として B 、Al が入る事がある。
XにはF 、Cl 、(OH) が入る。また不純物として O が入る事がある。
分類・種類
燐灰石グループ
燐灰石グループ (Apatite Group) の鉱物は12種類が独立種として登録されている。全ての鉱物がリン酸塩鉱物に属する[注釈 2]。結晶系は全ての鉱物が六方晶系に属する。
独立種ではない燐灰石グループの鉱物
変更後の名称 |
組成 |
変更後の名称 |
削除年 |
備考・注釈
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英名 |
和名 |
英名 |
和名
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Carbonate-fluorapatite |
炭酸フッ素燐灰石 |
Ca5(PO4,CO3)3(F,O) |
Fluorapatite |
フッ素燐灰石 |
2008 |
Carbonate-rich Fluorapatite とも呼ばれる。[22]
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Carbonate-hydroxylapatite |
炭酸水酸燐灰石 |
Ca5(PO4,CO3)3(OH,O) |
Hydroxylapatite |
水酸燐灰石 |
2008 |
Carbonate-rich Hydroxylapatite とも呼ばれる。[23]
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Hydroxylapatite-M |
単斜水酸燐灰石 |
Ca5(PO4)3(OH) |
Hydroxylapatite |
水酸燐灰石 |
2010 |
当初は単斜晶系の水酸燐灰石として記載された。[24]
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Johnbaumite-M |
単斜ジョンバウム石 |
Ca5(AsO4)3(OH) |
Johnbaumite |
ジョンバウム石 |
2010 |
当初は単斜晶系のジョンバウム石として記載された。当初は Fermorite と呼ばれた。[25]
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Mimetite-M |
単斜ミメット鉱 |
Pb5(AsO4)3Cl |
Mimetite |
ミメット鉱 |
2010 |
当初は単斜晶系のミメット鉱として記載された。[26]
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ベロフ石グループ
ベロフ石グループ (Belovite Group) の鉱物は7種類が独立種として登録されている。全ての鉱物がリン酸塩鉱物に属する。結晶系はフルオロカファイト (Fluorcaphite) とフルオロストロファイト (Fluorstrophite) が三方晶系、その他の鉱物が六方晶系に属する[注釈 3]。
ベロフ石グループの鉱物[5]
英名 |
和名 |
化学組成 |
結晶系 |
備考・注釈
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Belovite-(Ce) |
ベロフ石 |
NaCeSr3(PO4)3F |
三方晶系 |
[27]
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Belovite-(La) |
ランタンベロフ石 |
NaLaSr3(PO4)3F |
三方晶系 |
[28]
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Carlgieseckeite-(Nd) |
カールギエセック石 |
NaNdCa3(PO4)3F |
三方晶系 |
[29]
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Deloneite |
デロネ石 |
(Na0.5REE0.25Ca0.25)(Ca0.75REE0.25)Sr1.5(CaNa0.25REE0.25)(PO4)3F0.5(OH)0.5 |
三方晶系 |
[30]
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Fluorcaphite |
フルオロカファイト |
SrCaCa3(PO4)3F |
六方晶系 |
名称は組成の頭文字をつなぎ合わせたもの。[31]
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Fluorstrophite |
フルオロストロファイト |
SrCaSr3(PO4)3F |
六方晶系 |
名称は組成の頭文字をつなぎ合わせたもの。[32]
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Kuannersuite-(Ce) |
クアンナースイト石 |
NaCeBa3(PO4)3F0.5Cl0.5 |
三方晶系 |
[33]
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ブリソ石グループ
ブリソ石グループ (Britholite Group) の鉱物は7種類が独立種として登録されている。全ての鉱物がケイ酸塩鉱物に属する。結晶系は5種の鉱物が六方晶系に属する(トリトマイトとセリウムトリトマイトは不明)。
ブリト石グループの鉱物[7]
英名 |
和名 |
化学組成 |
結晶系 |
備考・注釈
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Britholite-(Ce) |
ブリソ石 |
Ca2(Ce,Ca)3(SiO4,PO4)3(OH,F) |
六方晶系 |
[34]
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Britholite-(Y) |
イットリウムブリソ石 |
Ca2(Y.Ca)3(SiO4,PO4)3(OH,F) |
六方晶系 |
日本産新鉱物。阿武隈石 (Abukumalite) とも呼ばれる。[35]
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Fluorbritholite-(Ce) |
フッ素ブリソ石 |
Ca2(Ce,Ca)3(SiO4,PO4)3(F,OH) |
六方晶系 |
[36]
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Fluorbritholite-(Y) |
イットリウムフッ素ブリソ石 |
Ca2(Y,Ca,Ln)3(SiO4,PO4)3(F,OH) |
六方晶系 |
イットリウムブリソ石の水酸基がフッ素に置換しており、2009年に承認[37]。
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Fluorcalciobritholite |
フッ素灰ブリソ石 |
(Ca,Ce)5(SiO4,PO4)3F |
六方晶系 |
[38]
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Tritomite-(Ce) |
セリウムトリトマイト |
(Ce,La,Y,Th)5(Si,B)3)(O,OH,F)13 |
六方晶系? |
含有する放射性元素の影響でメタミクト化しているものが多く、結晶系の詳細など不明な点が多い[10]。「セリウムトリトメ石」とも。
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Tritomite-(Y) |
トリトマイト |
(Y,Ca,La,Fe)5(Si,B,Al)3)(O,OH,F)13 |
六方晶系? |
セリウムトリトマイトと同様[9]。
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独立種ではないブリソ石グループの鉱物
変更後の名称 |
組成 |
変更後の名称 |
削除年 |
備考・注釈
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英名 |
和名 |
英名 |
和名
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Britholite-(La) |
ランタンブリソ石 |
Ca2(La,Ca)3(SiO4,PO4)3(OH,F) |
(承認されていない) |
(なし) |
発見の報告があるが、承認されていない。[39]
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Calciobritholite |
カルシオブリソ石 |
(Ca,Y)5(SiO4,PO4)3(OH) |
(承認されていない) |
(なし) |
発見の報告があるが、承認されていない。[40]
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UM2007-44-SiO:CaFREE |
― |
(Ca,Ce)2(Nd,Y,Ce)3(SiO4,PO4)3(F,OH) |
(承認されていない) |
(なし) |
セリウムフッ素ブリソ石のネオジム卓越体。発見の報告があるが、承認されていない。[41]
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エレスタド石グループ
エレスタド石グループ (Ellestadite Group) の鉱物は4種類が独立種として登録されている。全ての鉱物がケイ酸塩鉱物に属する[注釈 4]。結晶系は全ての鉱物が六方晶系に属する。
エレスタド石グループの鉱物[42]
英名 |
和名 |
化学組成 |
結晶系 |
備考・注釈
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Chlorellestadite |
塩素エレスタド石 |
Ca5(SiO4)1.5(SO4)1.5Cl |
六方晶系 |
合成実験では存在が示されていたが、ジョージアの南オセチアの火山噴出物から発見され、2017年に承認された[43]。旧称Ellestadite-(Cl) 。
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Fluorellestadite |
フッ素エレスタド石 |
Ca5(SiO4)1.5(SO4)1.5F |
六方晶系 |
Ellestadite-(F) とも呼ばれる。[44]
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Hydroxylellestadite |
水酸エレスタド石 |
Ca5(SiO4)1.5(SO4)1.5(OH) |
単斜晶系 |
Ellestadite-(OH) とも呼ばれる。1970年発見の日本産新鉱物とされていたが、1937年に記載されていた「エレスタド石」と同一と判明した。[45]
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Mattheddleite |
マットヘドル石 |
Pb5(SiO4)1.5(SO4)1.5(Cl,OH) |
六方晶系 |
水酸基卓越体の存在が推測されている[46]
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ヘディフェングループ
ヘディフェングループ (Hedyphane Group) の鉱物は7種類が独立種として登録されている。アイオロス石 (Aiolosite) 、カラコレス石 (Caracolite) 、セサノ石 (Cesanite) が硫酸塩鉱物、フッ素燐ヘディフェン(Fluorphosphohedyphane) 、ヘディフェン (Hedyphane) 、モレランド石 (Morelandite) 、燐ヘディフェン (Phosphohedyphane) はリン酸塩鉱物に属する。結晶系はカラコレス石が単斜晶系、その他の鉱物が六方晶系に属する。
日本産新鉱物
燐灰石スーパーグループに属する、日本で発見された新鉱物は、1966年[53]に福島県で発見されたイットリウムブリソ石 (Britholite-(Y)) [35]、2011年に大分県で発見された宮久石 (Miyahisaite) [8]がある。イットリウムブリト石は当初発見地にちなんで阿武隈石 (Abukumalite) [35]と呼ばれていた。
なお、1971年に埼玉県で発見されたとされていた水酸エレスタド石 (Hydroxylellestadite) [45]は、2010年の再定義に伴って模式地がアメリカ・カリフォルニア州に変更された。
注釈
- ^ トリトマイトの (O,OH,F) の数は 13 であり、これは 4×3+1 と等しく、燐灰石スーパーグループの A5(XO4)3Z に合わせ、書き換えることが出来る。
- ^ ジョンバウム石、ミメット鉱、スヴァブ石、ターノール石は砒酸塩鉱物、褐鉛鉱はバナジン酸塩鉱物であるが、全てリン酸塩鉱物に属している。
- ^ 三方晶系と六方晶系は同一の結晶構造と見る場合もある、
- ^ エレスタド石グループの鉱物はケイ酸塩基と硫酸塩基が等量であるため、理屈上はどちらに分類されてもよい。実際にはケイ酸塩基が含まれている鉱物は、量に関わらず原則的にケイ酸塩鉱物に分類される傾向がある。
出典
関連項目