歴史問題における謝罪(れきしもんだいにおけるしゃざい)は、戦争や紛争による被害、反対勢力への弾圧、奴隷貿易、ジェノサイド(集団虐殺)、人種差別、先住民差別など、過去の政府などがとった政策により与えた損害について、継承国政府・議会、指導者らが、政策による被害者とされる側に、公式あるいは非公式に表明してきた「謝罪」のことである。
アジア・オセアニア
(日本については関連項目参照)
北米・中南米
- 1988年8月10日「日系米人の強制収容」アメリカのロナルド・レーガン大統領は「市民の自由法」に署名し謝罪。1人当たり2万ドルの損害賠償を行う。
- 1988年9月「第2次世界大戦中の日系カナダ人に対する強制収容」戦時補償問題の合意書が締結され、カナダ政府が謝罪、生存者に損害賠償を行う。
- 1993年「ハワイ王国の武力制圧」ビル・クリントン大統領が「ハワイ王国の転覆とハワイ先住民の自決権はく奪」について謝罪。
- 1997年5月、「タスキギー梅毒実験」。ビル・クリントン大統領は、「国を代表して言うべき時がきた アメリカ政府がやったことは恥ずべき行為」と謝罪。
- 1998年「ルワンダ虐殺」クリントン大統領は、米国が虐殺阻止の行動をとらなかったことを謝罪。
- 2005年4月18日「奴隷制度」ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領は、セネガルのゴレ島にある「奴隷館」を訪れ、「16、17、18世紀に起きたことに対する責任は私にはない。しかし私は、黒人に対する仕打ちについて許しを請う」と謝罪。[10]
- 2008年6月11日「カナダの寄宿学校強制入学」スティーヴン・ハーパー首相は、同化政策の一環として先住民15万人を寄宿学校に強制的に入学させたことについて、「先住民の文化、遺産、言語を修復しがたく大きく損なったことを認める」「カナダ史における悲しみの1章」だと謝罪。
- 2008年7月29日「奴隷制と人種差別政策」米下院は奴隷制とアフリカ系米国人に対する人種差別政策について「根本的に不当、残虐、野蛮、非人間的」であったと謝罪する決議を採択。
- 2010年10月「米政府がグアテマラで実施した性病人体実験(1940年代後半)」バラク・オバマ大統領がグアテマラのアルバロ・コロン大統領に電話で謝罪。
- 2011年6月14日「第2次大戦中に日本人移民数千人を無作為に逮捕して米国の強制収容所に送還」ペルーのアラン・ガルシア大統領が「無法者たちはあなたがたの家や会社を略奪し、財産をわが物にした。本日、ペルーの大統領として、日系人の人権と尊厳を踏みにじったゆゆしき事実について謝罪する」と述べた。[11]
- 2011年10月6日「中国人排斥法(19世紀末~20世紀初)」米上院、中国人を差別する法律に対して謝罪する法案を全会一致で可決。
- 2012年5月7日「カナダ連邦政府が第二次世界大戦中に2万2000人の日系カナダ人を強制収容」カナダのブリティッシュコロンビア州政府が公式に謝罪を表明。同州政府のヤマモト・ナオミ高等教育大臣が州議会に謝罪を含む動議を提出し、満場一致で可決された。州議会議長は「日系カナダ人に対して差別的な扱いをしたことを大変遺憾に思っている」と謝罪を表明。[12]
- 2012年6月18日「中国人排斥法(19世紀末~20世紀初)」米下院、中国人を差別する法律に対して謝罪する法案を全会一致で可決。
- 2013年10月10日「第二次世界大戦中や戦後に起きた日系ブラジル人への迫害」ブラジル軍事政権下での人道犯罪を調べるジルマ・ルセフ政権の「真実委員会」が謝罪、同委員会専属のロサ・カルドソ弁護士は「ブラジル国民を代表して謝罪するだけでなく、許しを請いたい。(迫害の)背景には人種差別があった」と語った。
- 2016年5月18日「インド人を乗せた『駒形丸』入国拒否事件」カナダのジャスティン・トルドー首相が、「カナダ政府を代表し駒形丸事件を謝罪する。100年以上前のことだが、ひどい不正が行われた」「乗客が経験した痛みや苦しみはどんな言葉をかけても消えることはない」と謝罪。[13]
- 2019年6月18日「ゴールドラッシュでの先住民虐殺」アメリカ・カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事が、「カリフォルニアは暗い歴史を清算しなければならない」と先住民のリーダーに謝罪。迫害の実態を調べる委員会を立ち上げ、報告することを明言する。[14]
- 2021年2月19日「日系アメリカ人強制収容」ジョー・バイデン大統領は声明で、過去の米政府による公式謝罪を改めて確認し、「米国史で最も恥ずべき時期の一つだった」と指摘。[15]
- 2021年5月4日「先住民マヤ人に対する迫害」メキシコのアンドレアス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は、「3世紀にわたる植民地時代と2世紀にわたるメキシコの歴史において、個人や国家、外国政府がマヤ人に行ってきたひどい虐待を心から謝罪する」と述べる。[16]
- 2021年5月17日「トレオンの虐殺(1911年)」ロペス・オブラドール大統領は、北部トレオンで中国人300人以上が反政府の革命軍によって殺害された事件について、中国側に公式に謝罪。[17]
- 2022年4月16日「中国人排斥事件」(1880年)」米コロラド州デンバー市のマイケル・ハンコック市長が公告に署名し謝罪。これにより、デンバー市は、米国で中国人排斥の歴史について謝罪した5番目の都市、カリフォルニア州以外では最初の都市となる。[18]
- 2022年2月19日「日系アメリカ人強制収容」ジョー・バイデン大統領は声明を発表し、米政府として改めて謝罪。同じ過ちを繰り返さないとして日本語を用いて「二度とないように」と誓う。[19]
- 2024年2月19日「日系アメリカ人強制収容」ジョー・バイデン大統領は声明を発表し、「恥ずべきことだ。家族を離れ離れにし、尊厳を奪った」と改めて謝罪。、ローマ字で「Nidoto Nai Yoni(二度とないように)」と誓う。[20]
- 2024年7月25日「第2次大戦後の日本人移民らの迫害」ブラジル政府の諮問機関である恩赦委員会は、独裁政権下で起きた一連の行為を人権侵害と認めて初めて謝罪。エネア・アルメイダ委員長は「ブラジル国家を代表し、あなたたちの祖先が受けた迫害や残虐行為、人種差別について謝罪したい」と述べた。[21]
- 2024年10月25日「150年間にわたる先住民寄宿学校への強制入学」バイデン米大統領は、アリゾナ州の先住民居留地を訪問し、先住民を寄宿学校に強制的に入学させていたことを初めて正式に謝罪。「米国史の汚点だ。弁解の余地はない」と述べる。少なくとも約1万8000人が通い、病気や栄養失調などで970人以上が亡くなった。[22]
ヨーロッパ
ホロコースト・ポグロム関連
地方自治体・組織・団体・個人による謝罪
遺憾の意
謝罪・賠償要求
(日本については関連項目参照)
- ナミビア→ドイツ ドイツが20世紀初頭に当時の植民地ナミビアで犯した虐殺。[72]
- インド→イギリス 英国の植民地時代に起こったアムリットサル事件(1919年4月13日)[73]
- アルメニア→トルコ アルメニア人虐殺(19世紀末~20世紀初頭)
- アルジェリア→フランス「132年間にわたる植民地支配」2000年6月、アルジェリアのアブデルアジズ・ブーテフリカ大統領が訪仏、植民地支配についてフランスの「悔悛」を求める。
- ジャマイカ→イギリス 2015年9月「奴隷貿易に対する謝罪と賠償」ジャマイカを訪問したイギリスのキャメロン首相は賠償はしないと言明、「未来を築き続けよう」と述べる[74]
- 韓国→アメリカ 2016年5月26日「広島市への原子爆弾投下」オバマ大統領の広島訪問の前に韓国人被爆者らがソウルにあるアメリカ大使館の前で26日に集会を行い、韓国人原爆犠牲者慰霊碑に献花するよう求め、アメリカ政府に謝罪と賠償を訴えた。27日にも広島平和記念公園で集会をし、オバマ大統領に直接謝罪要求の書簡を渡したいとしている[75]。
- イギリス、ベトナム→韓国[注釈 2] 「ベトナム戦争時のライダイハン」2017年9月12日にイギリスで設立された市民団体「ライダイハンのための正義」に参加したジャック・ストロー元外相は基調講演で、「ベトナムで韓国兵が行った性的暴行は重大な人権問題だ。被害女性が求めているのは賠償ではなく謝罪。韓国政府は女性たちに謝罪すべきだ。人権重視の英国から被害実態を調査することを国際社会に求めたい」と述べた。韓国兵は多くのベトナム女性に性的暴行を加えたり、慰安婦として強制的に慰安所で働かせていたりした、とされる[76]。2019年7月下旬には、彫刻家のレベッカ・ホーキンスによって制作された「ライダイハン像」がロンドン中心部の公園で一般公開された[77]。
- メキシコ→スペイン、カトリック教会 2019年3月25日「1519年から約300年続いたスペイン統治時代の暴虐」メキシコのロペス・オブラドール大統領が、スペイン政府とローマ法王に謝罪を要求。「かつて大虐殺と抑圧があった。剣と十字架による侵略が行われ、彼らは先住民たちの神殿の上に教会を築いた」と述べる。[78]
- ギリシャ→ドイツ 2019年4月17日、ギリシャ議会は、第二次世界大戦中のナチス・ドイツによる占領に伴う損害賠償を、ドイツ政府に正式に要求する方針を可決。ギリシャ議会の委員会は2016年、被害額は3000億ユーロ(約38兆円)超と試算している。[79]
- 韓国→アメリカ 2019年6月28日「広島市への原子爆弾投下」ドナルド・トランプ大統領が米韓首脳会談のため29日に訪韓するのを前に、韓国原爆被害者協会や韓国原爆2世患友会が28日、ソウルで集会を開き、広島と長崎に原爆を投下したアメリカの責任を巡り、トランプに謝罪と賠償を求め、アメリカ大使館の周辺を行進した。同協会の李圭烈会長は「米国に対し、加害の責任を認めて謝罪することを強く求める」と述べた[80]。
- アルジェリア→フランス「132年間にわたる植民地支配」2020年7月4日、アルジェリアのアブデルマジド・テブン大統領がフランスからの謝罪を「待っている」と表明。[81]
- ポーランド→ドイツ 2022年9月1日、ポーランド政府は、第2次大戦中のナチス・ドイツの侵攻と占領による損害が約6兆2000億ズロチ(約183兆円)に上るとの試算を公表し、ドイツ政府に賠償交渉を求める方針を示す。[82]
- メキシコ→スペイン、カトリック教会 2020年10月10日「ローマ・カトリック教会による先住民迫害」ロペス・オブラドール大統領はローマ・カトリック教会が先住民迫害に関与したことを謝罪するよう、フランシスコ教皇に書簡で求めた。スペイン人が1521年にメキシコに到達した後の「最も非難されるべき残虐行為」について、スペイン国王と同国政府、バチカンのカトリック教会は謝罪すべきだと述べた。その上で、スペインと教会は「われわれから寛容な態度を受けるのに値するが、それだけではなく、彼らの信仰や文化を冒涜(ぼうとく)する行為を二度としないと誠実に公約してしかるべきだ」と強調[83]。
- アルジェリア→フランス「フランスによる植民地支配」2017年7月5日、アルジェリアのアブデルアジズ・ブーテフリカ 大統領は、132年にわたってアルジェリアを植民地支配したフランスからの謝罪を要求。[84]
- 仏領ポリネシア→フランス「1966年~96年に実施した193回の核実験」2021年7月27日、タヒチ島を訪れたマクロン大統領は「フランスは核実験を繰り返してきたという借りがある」と演説。実験情報の開示や補償に向けた健康調査の加速を約束するも、謝罪は口にせず。[85]
- ジャマイカ→イギリス「英王室が関与した奴隷貿易」2022年3月22日、ジャマイカの首都キングストンでデモ隊が集結、ウィリアム王子とキャサリン妃の公式訪問に抗議し、奴隷貿易への賠償と謝罪を要求する。[86]
- メキシコ→スペイン「アステカ王国征服と約300年にわたる植民地支配」2024年10月1日、シェインバウム前メキシコ市長は、謝罪要求に応じていないとして、自身の大統領就任式に国王フェリペ6世を招待せず。スペインが反発し、政府当局者も就任式に欠席する。[87]
- 英連邦→イギリス「奴隷貿易」2024年10月26日、イギリス連邦は首脳会議で、奴隷貿易によって被害を受けた国への賠償について協議を始めることで合意する。英国のキア・スターマー首相は「首脳会議では金銭に関する議論はなかった。その点についてわれわれの立場は非常に明確だ」と述べ、金銭による賠償以外の方法を模索する考えを示す。一方、チャールズ国王は25日のスピーチで「英連邦全ての人々の話を聞き、過去の最も痛ましい側面がいかに今も響き続けているか分かった」「われわれが歴史を理解することは、将来正しい選択をするための指針として極めて重要だ」と述べる。[88][89]
文化財の返還
脚注
注釈
- ^ この際の負傷がもとで後に1人が死亡したことにより、最終的に死者14人になった。
- ^ イギリスは「韓国はベトナムに謝罪すべきだ。」と訴えている。ベトナム政府は謝罪を要求していないが、ベトナム人被害者らが謝罪を要求している。
出典
関連項目
外部リンク