この項目では、中国の伝説の女戦士について説明しています。
木蘭と父の像(新郷市 )
木蘭 (もくらん、繁体字 : 木蘭 ; 簡体字 : 木兰 ; 拼音 : Mùlán ; ウェード式 : Mu4 -lan2 、ムーラン)は、中国における伝承文芸・歌謡 文芸で語られた物語上の女性主人公。木蘭の姓 は「花」「朱」「木」「魏」など一定していないが、京劇 では「花木蘭」とされる。
概要
老病の父に代わり、娘の木蘭が男装して従軍、異民族(主に突厥 )を相手に各地を転戦し、自軍を勝利に導いて帰郷するというストーリーである。
陳 の釈智匠『古今楽録』に収められた北魏 の『木蘭詩』(木蘭辞とも、作者不詳)が記録された最も古い文献とされる。
中国語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります。
『楽府詩集 』[ 1] 25巻橫吹曲辭5の「梁 鼓角橫吹曲十二首」に木蘭詩2首が収められている[ 2] 。南北朝時代 の北朝の民間民謡に由来するとされる。その注に「古今楽録曰 木蘭不知名 浙江西道観察使兼御史中丞韋元甫續附入 」と『古今楽録』の記事が記載される。
木蘭従軍故事は後代、詩歌や戯曲 ・小説 の題材となった。戯曲では、明 の徐渭 が編んだ雑劇 『雌木蘭』などがある。また現在の京劇 などでは『花木蘭』の題で演じられている。小説では清 初の褚人穫 (中国語版 ) 『隋唐演義 』[ 3] にも含まれている。日本では田中芳樹 が、これを題材にした小説『風よ、万里を翔けよ 』を書いている。
木蘭は中国 では英雄的女性 であるが、鮮卑族 だったというのが学界の主流の見解である[ 4] [ 5] [ 6] [ 7] 。木蘭は、唐代 以降、漢人 の社会概念を加味した口承物語として漢人に伝えられたが、その後の作品の改編で木蘭の遊牧民 の出自が消去され、明代 には徐渭 の『雌木蘭』に、北魏 や胡族 がおこなっていなかった纏足 というストーリー加味された[ 8] 。遊牧民 の女性は兵士として男性と共に戦争を戦っていたとみられ[ 7] 、2020年 、考古学者 のChristine LeeとYahaira Gonzalezは、モンゴル から出土した女性の遺骨の関節炎 、骨格 の外傷 、筋肉 の付着の痕跡などからから判断して、生前に「弓を射る武術に長けていた」可能性のある鮮卑の女性であることを特定し、匈奴 や突厥 よりも鮮卑の女性の方が騎乗していたことを発見し、鮮卑の平民女性は騎兵 として常時戦争に赴いていたのではないかと推測している[ 9] 。
木蘭を題材とした作品(20世紀以後)
『百美新詠図伝 』
木蘭(『古今百美圖』)
映画
テレビドラマ
小説・コミック
絵画
注・出典
^ 郭茂倩 (中国語), 樂府詩集 , ウィキソース より閲覧。
^ 2首のうち1首目の日本語訳は、『中国名詩選 中』松枝茂夫 編 1984年 岩波文庫 ISBN 978-4003203323 、南北朝時代の歌謡〔北朝の歌謡〕 p.196-204 がある。もう1首は後の時代に追加されたもので、(唐 )韋元甫(中国語版) 作のものである。
^ 単に『木蘭従軍』の逸話を取り込んだもので史実とは無関係であり、作品の主要な要素ではない。
^ Lan, Feng (2003). The Female Individual and the Empire: A Historicist Approach to Mulan and Kingston's Woman Warrior . Comparative Literature, 55(3). p. 232. "Western scholars, not burdened by Chinese scholars' anxiety to affirm the continuity of Chinese civilization, do not hesitate to point out Mulan's "non-Chinese" origin (Nienhauser 77nl; Allen 346). [...] Opinions on Mulan's ethnic identity have varied among Chinese scholars. For instance, while Yao Darong argues that Mulan was from a Han-Chinese family [姚大荣《木兰从军时地补述》, 1925, 頁80,頁85], Xu Zhongshu insists that Mulan was of Xianbei stock [徐中舒的《〈木兰歌〉再考》, 1925, 頁82]. Recent Chinese scholars tend to downplay this issue by recognizing Mulan as a Northern woman from a region that was then characterized by racial mixture."
^ “The Controversial Origins of the Story Behind Mulan” . タイム . (2020年9月11日). オリジナル の2021年5月12日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210512190419/https://time.com/5881064/mulan-real-history/
^ 陳三平 『木蘭與麒麟 』八旗文化 、2019年5月15日、2頁。https://www.google.co.jp/books/edition/木蘭與麒麟/AnMWEAAAQBAJ?hl=ja&gbpv=1&pg=PT2&printsec=frontcover 。
^ a b 陳三平 (2019年6月5日). “《木蘭與麒麟》:唧唧復唧唧──木蘭其實是「胡人」?” . 関鍵評論網 . オリジナル の2021年11月8日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20211108112910/https://www.thenewslens.com/article/120339 . "一九九九年一月二十三日、一則出自伊斯坦堡的美聯社報導:〈土耳其國族主義者抗議《花木蘭》〉(“Turkey Nationalists Protest ‘Mulan’”)、指出土耳其的國族主義政黨抵制迪士尼電影《花木蘭》在土耳其上映、因為「這部動畫電影藉由宣揚匈奴人是壞人、中國人是和平愛好者、來扭曲並詆毀突厥歷史」。如同本章將闡述的、諷刺的是、巾幗英雄木蘭的特殊名字、並不是源自迪士尼電影所附會的傳說中的文化背景、甚至連漢語都不是、而是來自突厥-蒙古遊牧民的社會環境。且就像本章的標題所示、木蘭之名的真正意涵可能更接近另一個動畫電影中常見的通俗角色。除了這幾點之外、還有一個事實也許更加諷刺——據一些古代和現代語言學家的說法、木蘭故事中占優勢的「中國人」不是別人、正是突厥集團中的拓跋部。"
^ 蔡娪嫣 (2020年9月10日). “千年傳說的「中國化」:花木蘭如何從蒙古女戰士變成「漢人」?” . 風傳媒 . オリジナル の2021年5月31日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210531150946/https://www.storm.mg/article/3019137?mode=whole
^ Katherine J. Wu (2020年4月29日). “Researchers Uncover New Evidence That Warrior Women Inspired Legend of Mulan”. Smithsonian Magazine
^ 新華影業公司 (英語版 ) 、日本の占領期間に唯一残った映画会社。
^ “黄金の国の屏風(10) 橋本関雪「木蘭」(左隻) ”. 日本経済新聞 (2023年12月28日). 2023年12月27日 閲覧。
関連項目