有声声門摩擦音(ゆうせい・せいもん・まさつおん 英:voiced glottal fricative)とは子音の類型の一つで、息漏れ声またはささやき声の短いものである。国際音声字母で[ɦ]と記述される。
「有声」といわれるが通常の有声音とは異なり、声帯の接近は少なく、声門に隙間を残して不完全な振動をする。ピーター・ラディフォギッドによれば、このような声門の状態はつぶやき声を発音する時のそれに等しい。[1]
特徴
- 気流の起こし手
- 肺臓からの呼気
- 発声
- 声帯の不完全な振動を伴う息漏れ声またはささやき声
- 調音
-
- 調音位置
- 声帯と声帯の間による声門音
- 調音方法
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- 口腔内の気流
- 調音器官の接近度
- 隙間による摩擦音(ただし、声帯の働きは発声であり、隙間を狭めると声を作る役割を果たす。発声に対してはむしろ声門の開いた状態であり、口腔内の摩擦音とは異なる。)
- 口蓋帆の位置
- 口蓋帆を持ち上げて鼻腔への通路を塞いだ口音
言語例
多くは無声声門摩擦音 /h/ の異音として現れる。
- ウクライナ語 - гора [ɦɔˈra]
- 英語 - behind [bɪˈɦaɪnd]
- オランダ語 - haat [ɦaːt]
- 上海語 - 単独で語頭子音(声母)となる場合と、語頭で他の無声子音と組み合わせて発音される場合がある。例:前後 [ɕɦiɦɤ]
- ズールー語 - ihhashi [iːˈɦaːʃi]
- スロバキア語 - hora [ˈɦɔra]
- チェコ語 - hora [ˈɦora]
- 朝鮮語 - 語中のㅎ/h/に現れることがある。
- フィンランド語 - raha [rɑɦɑ]
- ベラルーシ語 - гара [ɦaˈra]
出典・脚注
- ^
亀井孝; 河野六郎; 千野栄一; 西田龍雄, ed. (1988), “有声のh”, 言語学大辞典 第6巻 術語編, 6, 三省堂, p. 1366, ISBN 4385152152
- 子音
- 国際音声記号 - 子音