形 (囲碁)
形(かたち)は囲碁用語。 眼を作りやすい、相手の攻撃を受けにくい、相手を封鎖しやすいなど何らかのメリットがある、部分的に定まった打ち方のことを指す。「ここはこう打つのが形」「形を整えて反撃を狙う」といったように用いられる。 例えば下図の場合、黒1とサガると、白2スベリから4のツキアタリを利かされ、眼形を奪われる。 黒1とカケツイでおけば眼形に不安はなく、後を強く戦える。この場合「黒1のカケツギが形」などと表現される。 これと逆に、石の働きが重複して能率が悪い形などを「悪形」「愚形」などと表現する。「形」に従って打つことは絶対ではなく、愚形の妙手というものも存在するが、ある程度の形を身につけることは上達に重要である。 好形石の働きが重複せず、打ちやすい姿であることを「好形」と表現する。眼が作りやすい、後に相手からの利かしや反撃の余地を与えないなどの状態を指す。 星に三々入りした場合の定石。aとbの2つの断点が生じているが、ここでは黒1とカケツぐのが好形。2つのキリを同時に防いでおり、万一包囲されても眼形が豊富なので負ける確率が少ない。aやbに堅くツぐのは、眼形が少なく、働きに乏しい。 1やaの点に打ってもキリは防げるが、白2のハサミツケなどから下辺侵入の手がかりを与えてしまう。 愚形好形と逆に、石の働きが重複している姿を「愚形」と呼ぶ。本来広く展開できる石が不必要に固まっている状態などを呼ぶ。 空き三角
上左図が「空き三角」と呼ばれる典型的な愚形。aの点のダメが空いた三角形なのでこの名がある。本来2つ並んだ石からは、上右図の▲のようにトンでも切断されることはないにも拘わらず、左図のように隣接させて打っているのは、石の働きがだぶっていると考えられるが、グズミのように、自らわざとアキ三角を作りに行き、狙いを作る手もある。なおaの点に白石がある場合には「空き三角」とは呼ばず、愚形でもない。 陣笠白5までの姿は、その形から「陣笠」と呼ばれる。空き三角にさらに石がくっついた愚形。眼形も乏しく、黒に攻撃目標を与えるだけとなる。白5ではaとコウで戦うなどが普通。 凝り形石が密集し、その効果が重複して効率の悪い形になっていることを「凝り形」と呼ぶ。 白1と二間にヒラくと、黒2とコスミツケられ、白3となる。この場合、白の2つ並んだ石からは本来aくらいまでヒラきたいところであるにも拘わらず(二立三析)、狭く開いてしまっていることになる。これは効率が悪く、「凝り形」ということになる。
右下・左下はそれぞれ定石形であるが、黒1から白7と進行すると、結果として堅い黒7までの石から黒▲へと一間に狭くヒラいた形になっており、効率が悪い姿。黒はこうした凝り形にならないよう、黒1で別のカカリ方をするなど工夫をする必要がある。 裂かれ形図の形から、例えば隅を守ることだけを考えて黒1・3とツケヒくのは、白4とツガれて黒▲との連絡を自ら断ち切ってしまう。▲は白の強い石に張り付いた形で、自軍の石を自ら弱体化させたことになる。このように、自ら分断されに行くような手を「裂かれ形」と称し、悪形の代表とされる。 参考図書三村智保『石の形 集中講義―楽に身につくプロの感覚 (MYCOM囲碁ブックス)』2006年 |