塩化オキサリル(えんかオキサリル, oxalyl chloride)は構造式 (COCl)2で表される化合物である。シュウ酸の2つのカルボン酸がカルボン酸塩化物となった構造を持つ、無色の液体である。有機合成化学においてよく用いられる[4]。シュウ酸を五塩化リンで処理すると得られる[5]。
有機化学への応用
酸塩化物の合成
有機合成化学では、カルボン酸を対応する酸塩化物へと変換する際によく用いられる。塩化チオニルと同様、塩酸などの揮発性の副生成物が発生する。
塩化オキサリルは比較的マイルドで、より選択性のある試薬だと考えられている。触媒量のジメチルホルムアミドを添加することが多い。
芳香族化合物のアシル化
塩化アルミニウムの存在下で芳香族化合物と反応し、対応する酸塩化物を発生させる。この反応はフリーデル・クラフツ反応として知られている[6][7]。続く加水分解により、対応するカルボン酸が生成する。
ジエステルの合成
他の酸塩化物と同様、アルコールと反応するとエステルが生成する。
この反応はピリジンのような塩基の存在下で行われることが多い。なおフェノールと反応するとフェニルオキサリルエステルを生成するが、この反応はサイリュームに応用されている。
アルコールの酸化
塩化オキサリルとジメチルスルホキシド、トリエチルアミンを組み合わせると、アルコールを対応するアルデヒドやケトンへと酸化できる。この反応はスワーン酸化として知られている。
危険性
水と激しく反応し、塩化水素を発生する。
参考文献
- ^ a b Nomenclature of Organic Chemistry: IUPAC Recommendations and Preferred Names 2013 (Blue Book). Cambridge: The Royal Society of Chemistry. (2014). p. 797. doi:10.1039/9781849733069-FP001. ISBN 978-0-85404-182-4
- ^ Oxalyl chloride: odor
- ^ a b c d e Oxalyl chloride MSDS
- ^ Salmon, R. "Oxalyl Chloride" in Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis 2001, John Wiley & Sons, New York.DOI: 10.1002/047084289X.ro015
- ^ Vogel, A.; Steffan, G.; Mannes, K.; Trescher, V. "Oxalyl chloride" DE 78-2840435 19780916.Chemical Abstracts Number 93:94818
- ^ Neubert, M. E.; Fishel, D. L. (1990). "Preparation of 4-Alkyl- and 4-Halobenzoyl Chlorides: 4-Pentylbenzoyl Chloride". Organic Syntheses (英語).; Collective Volume, vol. 7, p. 420
- ^ Sokol, P. E. (1973). "Mesitoic Acid". Organic Syntheses (英語).; Collective Volume, vol. 5, p. 706
外部リンク