労働者党 (ろうどうしゃとう、ポルトガル語 : Partido dos Trabalhadores [ 3] 、略称:PT [ 3] )は、ブラジル の左派 政党 [ 3] 。大統領ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ の所属政党である。現在の党首(総裁)は、グレイシ・ホフマン [ 6] 。
概説
黒猫に扮した労働者党がブラジル社会民主党 のマスコットであるツカーノ(オオハシ科 の鳥の一種)を追い掛け回している風刺漫画(カルロス・ラトゥッフ )
軍政下の1980年 2月、様々な労働運動家 や知識人が結集して結成され、1982年 2月 に正式な政党登録がなされた[ 7] 。規約では「民主的社会主義 を建設することを目標としている」とした上で、「搾取 、支配、抑圧 、不平等 、不正義、貧困 を一掃するために闘う」と明記している。政治的には社会民主主義 やマルクス主義 、トロツキスト 、キリスト教社会主義 など、中道左派 から極左 までの幅広い政治勢力を結集している。また労働運動 以外にも、環境保護 や人権 など多彩な分野の市民運動 ・社会運動 活動家の参加もみられる。
PTの政党登録がなされたのと同じ年の11月に行われた国会議員選挙では党首のルーラは落選、下院で8議席を得るに留まった(得票率3.5%)。1988年の憲法改正により大統領直接選挙制が復活後、初めて行われた89年12月の大統領選挙では、ルーラ が立候補したが決選投票でフェルナンド・コロール・デ・メロ に敗れた(決選投票の得票率38%)。その後、1994年の議会選挙では前回(1990年)より得票と議席を大幅に増やしたが、同時に行われた大統領選挙ではフェルナンド・エンリケ・カルドーゾ (ブラジル社会民主党 、略称:PSDB)に大差で敗れた。
1998年の大統領選挙でもルーラはカルドーゾ大統領に再び敗れたが、2002年10月の大統領選挙で6割余の得票を得て初の勝利を収めた。また同時に行われた国会議員選挙でも91議席を獲得し最大政党となった。そして、2006年10月の大統領選挙でもルーラが再選を果たし、PTは与党の座を維持した。この間、ルーラは貧困層向け家族手当「ボルサ・ファミリア 」(Pragrama Bolsa Familia:PBF)[ 8] [ 9] の創設を柱とした社会政策を実施する一方、現実的な経済政策を採用し、ブラジル経済の成長を維持した。
2010年10月の大統領選挙では、ルーラ大統領の後継候補としてジルマ・ルセフ 官房長官を擁立。決選投票でPSDBのジョゼ・セラ(サンパウロ州 前知事)を抑えて勝利し、引き続き政権与党の座を維持[ 10] 。2014年10月の大統領選挙でもルセフ大統領が対立候補であるアネシア・ネベス(PSDB)を僅差で抑えて再選を果たし、ルーラ政権も含めると4期続けて政権与党の座を占めることになった[ 11] 。しかしルセフは弾劾訴追され2016年8月に失職、副大統領でブラジル民主運動党のミシェル・テメル が大統領となった。
選挙結果
大統領選挙
年
候補者
第1回投票
決選投票
得票数
得票率(%)
得票数
得票率(%)
1989
ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ
11,622,673
16.1 (第2位)
31,076,364
47.0 (第2位)
1994
ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ
17,122,127
27.0 (第2位)
1998
ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ
21,475,211
31.7 (第2位)
2002
ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ
39,455,233
46.4 (第1位 )
52,793,364
61.3 (第1位 )
2006
ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ
46,662,365
48.6 (第1位 )
58,295,042
60.8 (第1位 )
2010
ジルマ・ルセフ
47,651,434
46.9 (第1位 )
55,752,529
56.1 (第1位 )
2014
ジルマ・ルセフ
43,267,668
41.6 (第1位 )
54,501,118
51.6 (第1位 )
2018
フェルナンド・アダジ
31,341,997
29.3 (第2位)
47,040,380
44.8 (第2位)
2022
ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ
57,259,405
48.4 (第1位 )
60,325,504
50.9 (第1位 )
出典: Election Resources: Federal Elections in Brazil – Results Lookup
連邦議会選挙
年
連邦下院
連邦上院
得票率(%)
得票数
議席数
+/–
得票率(%)
得票数
議席数
+/–
1982
3.5%
1,458,719
8
3.6%
1,538,786
0
1986
6.9%
3,253,999
8
–
–
0
1990
10.2%
4,128,052
19
–
–
1
1994
13.1%
5,959,854
14
13.8%
13,198,319
3
1998
13.2%
8,786,528
9
18.4%
11,392,662
3
2002
18.4%
16,094,080
33
21.3%
32,739,665
7
2006
15.0%
13,989,859
8
19.2%
16,222,159
4
2010
16.9%
16,289,199
5
23.1%
39,410,141
5
2014
14.0%
13,554,166
20
17.0%
15,155,818
3
2018
10.3%
10,126,611
12
14.5%
24,785,670
6
2022
13.9%
15,354,125[ 12]
13
12.2%
12,456,553
3
出典: Georgetown University , Election Resources , Rio de Janeiro State University
文献解題
脚注
^ Claire Rigby (14 November 2016). "How Lula's party fell from grace: the toppling of the Brazilian left" . New Statesman . Retrieved 20 July 2017.
^ Daniel Gallas (29 March 2016). "Dilma Rousseff and Brazil face up to decisive month" . BBC News. Retrieved 20 July 2017.
^ a b c d e f ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 コトバンク . 2018年10月27日閲覧。
^ Eduardo Porter (May 3, 2016). “Populist Policies Let Brazil's Tomorrow Slip Away” . The New York Times . https://www.nytimes.com/2016/05/04/business/economy/populist-policies-let-brazils-tomorrow-slip-away.html?_r=0 February 9, 2017 閲覧。
^ Progressive Alliance Parties & Organisations 2019.11.21閲覧
^ O PARTIDO Diretório Nacional (PTホームページ)2012年11月10日閲覧
^ O Partido(政党)
^ PBFは、カルドーゾ 政権(1995年-2002年)において一世帯あたりの月収が最低賃金の半分未満の低所得家庭を対象とした「条件付現金手当て」として実施されていた就学手当て(7~15歳の子どもを持つ家庭に学校への通学を条件として支給)、食糧手当て(妊婦や乳母、0~6歳の子どもを持つ場合において保険医療活動への参加を条件として支給)、ガス手当て(前2つと同じ所得条件の貧困家庭に家庭用ガス購入費用として支給)に加え、ルーラ政権で実施された食糧カードプログラムの4つを統合したものである。近田亮平 (2013年). “4章「ブラジルにおける現金給付政策」 ” (PDF). 『現金給付政策の政治経済学(中間報告)』 . アジア経済研究所 . 2014年10月28日 閲覧。
^ PBFでは対象となる低所得者世帯を、極貧家庭(月収が70レアル 以下の家庭)と貧困家庭(70~140レアル以下の家庭)の二つに分け、子どもの通学や妊婦の予防接種を条件として現金給付する。なお支給額は子どもの数や年齢によって異なってくるが、極貧家庭の場合は子どもや妊婦の有無に関係なく、基礎的扶助として70レアルが支給される。
^ “ブラジル、初の女性大統領誕生へ 与党ルセフ氏当選” . AFPBB . (2011年11月1日). https://www.afpbb.com/articles/-/2771121?pid=6395008 2012年11月10日 閲覧。
^ “ブラジル大統領 再選 ルセフ氏 革新政権4期目” . しんぶん赤旗 . (2014年10月28日). https://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-10-28/2014102808_01_1.html 2014年10月28日 閲覧。
^ 所属した政党連合「ブラジルの希望」全体の得票数。
参考文献
外部リンク