利用者:Eugene Ormandy/sandbox11 渡邊康雄稲門ウィキペディアン会のEugene Ormandyです。2024年7月4日、東京都台東区にある「学術バーQ」さんでウィキペディアに関する発表をしたので、発表メモを共有します。 挨拶本日はお越しいただきありがとうございます。稲門ウィキペディアン会のEugene Ormandyです。私は19時から20時の1時間程度、お話しいたします。 自己紹介発表の前にまずは自己紹介を。Eugene Ormandyと申します。まず強調しておきたいのは、私Eugene Ormandyおよび今夜登壇しているウィキペディアンは全員、ボランティアだということです。すなわち、我々はウィキペディアの記事を書いてお金をもらうことはありませんし、ウィキペディアを運営するウィキメディア財団のスタッフでもありません。ただの趣味としてウィキペディアを編集しています。 前置きが長くなりました。私の情報はこちらのとおりです。
全体の流れ
1. ウィキペディアの仕組み(15分)さて、第一部では「ウィキペディアの仕組みについてお話しします。構成は以下のとおりです。
1-1. 基本的には誰でも編集できる(実演)「Wikipedia:ウィキペディアについて」というページにおいて、ウィキペディアは以下のように説明されています。
要は、基本的には誰でも編集できるフリーのインターネット百科事典です。実は「ウィキペディア」という用語自体がその理念を体現しています。というのも「ウィキペディア」は「ウィキ」という単語と「エンサイクロペディア」という単語の合成語なのですが、ウィキは「不特定多数のユーザーが共同してウェブブラウザから直接コンテンツを編集するシステム」を意味し、エンサイクロペディアはご存知のとおり百科事典を意味しているのです。 しょうもない余談ですが、このような語の成り立ちをふまえると、ウィキペディアを「ウィキ」と略すのは、自動販売機のことを「自動」と略すようなものと言ってもいいかもしれませんね。ちなみに、ウィキペディアには「ウィキって略すな」というページやファンアートが存在しますので、興味がある方はご覧ください。 説明が長くなりました。ウィキペディアは誰でも編集できる百科事典であるということを実感していただくため、実際に編集してみましょう。 1-2. ウィキペディアには編集方針が存在するさて、ウィキペディアは誰でも編集できますが、なんでもかんでも書いていいというわけではありません。もちろん、著作権を侵害してはいけないといった常識的なルールは大前提としてありますが、そのほかにもウィキペディア特有の方針・ガイドラインが存在します。このような方針・ガイドラインは大量に存在するのですが、今回は基本的なものを抜粋して紹介します。 1-3. 三大方針ウィキペディアの最も基本的な方針は「三大方針」です。三大方針は「検証可能性」「独自研究の禁止」「中立的な観点」のから構成されます。一つずつ説明しましょう。 1-3-1. 検証可能性1つ目は「検証可能性」です。要はウィキペディアの記述にはきちんと出典をつけましょうという方針です。いわゆる学術論文と共通する理念ですが、実は異なる点もあります。それは「真実よりも検証可能性」を追求するという姿勢です。例えば「1960年生まれと自称しており、新聞記事などでも1960年生まれとされているが、実は1955年生まれだった。しかし1955年生まれであることを記した資料はない」という役者について、ウィキペディアに無出典で「1955年生まれ」と記すことはできません。なぜなら検証できない情報だからです。 また、出典はなんでもいいというわけではありません。基本的にウィキペディアの出典で用いる資料は「信頼できる二次資料」である必要があります。この言葉については様々な解釈があるので深入りはしませんが、簡単に言えば「信頼できる」とは学術出版社などによる資料であること、そして「二次資料」は「ひとつまたはそれ以上の一次資料または二次資料を要約したもの」とされます。詳しく知りたい方は、方針ページ「Wikipedia:検証可能性」やガイドライン「Wikipedia:信頼できる情報源」をご覧ください。 1-3-2. 独自研究の禁止三大方針の2つ目は「独自研究の禁止」です。出典を用いていないトンデモ論を改訂はいけないという話です。また、仮に出典を明記していたとしても、その資料に書かれていないことを推測して書いてはいけないということでもあります。例えば出典をつけた上で「資料には〜とあるが、〜と思われる」という解釈をしてはいけないということでもあります。さらに言えば、今まで誰も指摘していない新しい学術的な発見をしたとしても、ウィキペディアに記載することは禁止されています。新しい発見を記したい場合は、ウィキペディアではなく論文を書いてください。 1-3-3. 中立的な観点三大方針の3つ目は「中立的な観点」です。様々な「信頼できる情報源」を用いて、極力偏向のない記述としましょうという理念です。もちろん、純粋な中立性など幻想ではありますが、このような方針を明言しておくことに意義があると個人的には思っています。 1-4. 5本の柱1-5. その他方針・ガイドライン1-6. 運営体制1-7. イタズラにはどのように対処しているのかノートの議論 削除依頼 1-8. つまりウィキペディアでは何ができないのかさて、 ウィキペディア「文学作品」と呼ばれる 1-9. なぜこんな面倒くさい方針が存在するのか方針・ガイドライン、各種システムについて概説しましたが、どうしてこんな面倒くさい 2. ウィキペディアンとしての活動内容(15分)さて、第2部では私個人の活動内容についてお話しします。構成は以下のとおりです。主に4つの活動があります。
2-1. ウィキペディア記事の編集まずは、私が執筆・編集したウィキペディア記事を3つ紹介します。 1つ目は「デジレ・デフォー」という指揮者の記事です。日本ではあまり知られていない指揮者の記事で、英語文献をメインで活用して執筆しました。おそらく、デジレ・デフォーに関する最も詳しい日本語文献だと思います。また、日本語文献についても、クラシック音楽オタクの知識を生かして工夫しました。というのも「デジレ・デフォー」について言及している日本語の「信頼できる情報源」はいくらかあるのですが、国立国会図書館サーチで「デジレ・デフォー」と検索してヒットするものは実はあまりありません。そういった資料をウィキペディアの出典として用いることで、国立国会図書館サーチの補足のようなものを行いました。 2つ目は名曲喫茶に関する記事です。例えば名曲喫茶ヴィオロンなどですね。名曲喫茶とはクラシック音楽を流す喫茶店です。たまに雑誌などで取り上げられることはありますが、それらの資料を集約した体系的な論考は見当たりません。そこで、名曲喫茶に関する記事をウィキペディアの出典として用い、個別の名曲喫茶についての情報ハブを作成しました。 3つ目はフルーツサンドの記事です。これは雑誌専門図書館・大宅壮一文庫のパスファインダーを用いて作成しました。パスファインダーとは、特定の主題に関する資料をいくつか紹介した資料です。実際に見てみましょう。また、自分が好きではないもの、すなわち前提知識のないものについて書くという意味でも印象に残っている記事です。というのも、私はフルーツが嫌いで、フルーツサンドを食べたことがないのです。 2-2. 編集イベントの開催2つ目の活動は、図書館などにおけるウィキペディア編集イベントの運営です。ありがたいことに、今まで、雑誌専門図書館の大宅壮一文庫、東京タワーの近くにある三康図書館、東京国立博物館、東京外国語大学などでイベントを開催できています。 これらのイベントでは、編集テーマを決めたのち、図書館などの資料を活用してみんなでウィキペディア記事を編集します。例えば、大宅壮一文庫で開催したイベントでは「飲食店」というテーマのもと、参加者たちが「キッチンオトボケ」や「不純喫茶ドープ」などのウィキペディア記事を作成しました。また、飲食店に関連するものとして「配膳ロボット」の記事を立項した人もいました。このような自分では考えたこともなかった面白い記事が立項されるのも、編集イベントの面白さですね。 このようなイベントを運営する上で意識しているのは、参加したウィキペディアン、および協力してくれる図書館などの双方にメリットを提供することです。私が想定しているウィキペディアンにとってのメリットは、図書館の資料とサービスを活用して記事を改善することです。そして図書館にとってのメリットは自館のサービスを知ってもらうこと、さらにはウィキペディアン視点での図書館活用法をライブで確認できることです。 なお、ウィキペディアの編集イベントは日本全国、さらには世界各地で開催されています。また、イベントのテーマお様々で、郷土情報の拡充を目的としたもの、ジェンダーギャップの改善を目的としたもの、人権侵害の記録を作成することを目的としたものなどがあります。 2-3. ウィキメディア・ムーブメントの記録3つ目の活動は、ウィキメディア・ムーブメントの記録です。 ウィキペディアをはじめとするウィキメディア・プロジェクトにまつわる動向は、あまり言語化されていません。私はこの状況を大変危惧しています。間違いなくインターネットの歴史に残る大プロジェクトがどのように形成されていったのか、そしてボランティアの参加者たちはどのようなことを感じていたのかは、きちんとアーカイブされるべきです。 そのような危機感のもと、私はウィキメディア財団のブログ「Diff」に様々な記録を作成しています。例えば、ウィキペディア記事を立項するにあたりどのような調査を行ったのか、自分が開催したイベントはどのように準備したか、ウィキメディア・プロジェクトを活用した面白いツールでどのように遊んでいるかなどです。 なお、自慢話となってしまい大変恐縮ですが、最初にお話しした「ウィキメディアン・オブ・ザ・イヤー」に選出されたのは、これらの記録活動が評価されたからです。ありがたいことに、Diffに寄稿する記事も増えてきています。 2-4. 国際交流4つ目の活動は、国際交流です。ありがたいことに、昨年からウィキメディアの国際会議に招待されるようになり、海外のウィキメディアンとのコネクションも色々と形成されたので、それを生かして国際プロジェクトをいくらか主催しています。特に繋がりが強いのはマレーシア、トルコ、ドイツで、一緒にオンラインの編集イベントを開催したりしています。また、これらの国際交流イベントには、東京外国語大学やゲーテ・インスティトゥート東京などに協力してもらっています。 3. ウィキペディア編集のモチベーション(10分)さて、第3部ではウィキペディア編集のモチベーションについてお話しします。構成は以下のとおりです。
3-1. モチベーションを端的に表すと「なぜ金も出ないのにウィキペディアを編集するのか」という質問に対しては、確固たる答えがあります。それは「自分の限られた能力の範囲内で最も効率よく社会の知的インフラを整備できるから」です。 3-2. インフラを改善したいインフラを改善する 3-3. 自分が天才ではないと気づいた後の人生3-4. 「楽しいから」という行動理由を排除して最低限のクオリティを担保する3-5. 読書の虚しさを昇華する4. 世界のウィキメディア・ムーブメント(10分)
4-1. リテラシー教育に活用4-2. ジェンダーギャップの改善に活用4-3. ウィキメディア財団とボランティアの関係4-4. ウィキメディアンの国際会議5. 質疑応答(10分)6. ウィキペディア以外のウィキメディア・プロジェクト紹介(質疑応答なかった場合)(10分)5-1. ウィキメディア・コモンズ5-2. ウィキデータ5-3. ウィクショナリー参考文献直接参照はしていないものの目を通したもの |