利用者:Aoyajiro/sandbox/竜殺し竜殺し(英語: dragon slayer)は、想像上の動物である竜(英: dragon)を殺す行為、および行為者を指す称号である。これを扱った民話や神話が世界中に見られ、物語の類型の一つとされる。 概要竜殺しの物語は民話類型の中でもよく知られた代表的なものである。世界中の民話を分類したアールネ・トムソン・ウターの話型索引(ATU)では300番代「超自然的な敵」の筆頭(ATU 300: Dragon-Slayer)であるのみならず、上位カテゴリーである「魔法昔話」全体の筆頭でもある。ウターは、竜殺しの話型を下記のように帰納的に整理した。
実際の各々の物語がなべてこの筋に従っているわけではなく、多くは、「竜との戦い」のモチーフ(引用太字部分、トムソンのモチーフ番号 B11:11[2])を中核として、他のさまざまな話型(3人のさらわれた姫、黄金の若者、恩に報いる動物たちなど)と組み合わされて語られる[3]。 分布と事例竜殺しの物語は広く世界中に分布しており、ヨーロッパ、アジア、南北アメリカ、アフリカのすべての大陸で類話が見られる[3]。 以下は、各地の民話カタログ等から確認できる、竜殺しとされる物語の一覧である。
フィンランド 〇〇 〇〇 ラウスマー『フィンランドの昔話』 フィンランド系スウェーデン Hackman1917 エストニア アールネ1918 リーヴ Looritz1926 ラトヴィア Arajs/Medne1977 リトアニア Kerbelyte1999 ラップ Qvigstad1925 リーヴ、ヴェプス、ヴォート、リュディア、カレリア、コミ Kecskemeti/Paunonen1974 スウェーデン Liungman1961 ノルウェー Hodne1984 デンマーク Grundtvig1854 Holbek1990 フェロー Nyman1984 スコットランド Aitken/Michaelis-Jena1965 Briggs1970 アイルランド OSullivan/Christtiansen1963 Baughman1966 イングランド Baughman1966 Briggs1970 Bruford/MacDonald1994 フランス Delarue1957 スペイン バスク カタルーニャ ポルトガル オランダ フリジア フラマン ワロン ドイツ オーストリア ラディン イタリア コルシカ島 サルデーニャ マルタ ハンガリー チェコ スロバキア スロヴェニア セルビア ルーマニア ブルガリア ギリシャ ソルビア ポーランド ロシア、ベラルーシ、ウクライナ トルコ ユダヤ ジプシー オセチア アディゲア、チェレミス/マリ チュヴァシ、タタール、モルドヴィア ヤクート ブリヤート、モンゴル グルジア シリア、レバノン、パレスチナ、ヨルダン、イラク、カタール、イエメン アフガニスタン パキスタン インド ビルマ 中国 朝鮮 インドネシア 日本 イギリス系カナダ フランス系カナダ 北アメリカインディアン アメリカ スペイン系アメリカ メキシコ ドミニカ、プエルトリコ ブラジル チリ マヤ コロンビア 西インド諸島 カボ・ヴェルデ 北アフリカ、エジプト、チュニジア、アルジェリア、モロッコ 東アフリカ スーダン コンゴ、西アフリカ、マダガスカル ナミビア
解釈カオスカンプ比較神話学では、インド=ヨーロッパ、中東、北アフリカの神話に広く見られる、英雄が怪物と戦うモチーフを、秩序と混沌の闘争を象徴するものとしてカオスカンプ(ドイツ語: Chaoskampf、混沌との闘争)と呼ぶ。この怪物は、大海(混沌を象徴する大水)に住まう大海蛇(英語: sea-serpent)、またはこれと同様に長大な生物として観念される竜であることが多いことから、より直接的にドラッヘンカンプ(独: Drachenkampf、ドラゴンとの闘争)ということもある。 三機能仮説神話学者のジョルジュ・デュメジルは、インド・ヨーロッパ語族話者において、英雄や戦闘神が怪物と戦う神話に、若者戦士結社(Männerbunde)の儀礼に由来する共通の構造が見られると主張した(ギリシア、ローマ、インド、イラン、アイルランド、北欧に対応神話があるとする)。この仮説を宗教学者のブルース・リンカーンが別の観点から発展させ、次のような祖形があるとした。
この説ではギリシア、ローマ、インド、イラン、アルメニア、そしてゲルマン(図像のみ)が当てはまることになる。 詩学また、言語学者のカルヴァート・ワトキンスは、インド・ヨーロッパ語族の竜殺し神話をうたう叙事詩などにおいて、「英雄が蛇を殺す」という一定の詩の形式が見られると主張した。しかし比較言語学的に明確な対応が見られるのはインド - イランに限られている(ヴリトラ殺しのインドラ、アジ・ダハーカ退治のスラエータオナ/ウルスラグナ)。 受容竜殺しの類型は後世の創作においても広く受容され、特に空想上の存在を扱うファンタジーなどのジャンルにおいて非常に強力なモチーフとされている。 スマウグとバルド[ソースを編集]J・R・R・トールキンの児童文学『ホビットの冒険』に登場する火の息を吐くはなれ山の悪竜スマウグは、背中を堅い鱗で、柔らかい腹を宝石で覆っており、いかなる刀も貫くことはできなかった。しかし、左胸にあった隙間をギリオンの子孫バルドの黒い矢に射抜かれて退治された。 トールキン作品では他に祖竜グラウルング、黒龍アンカラゴン、大長虫スカサなどの大龍が『シルマリルの物語』などに登場している。グラウルングは竜殺しのトゥーリン・トゥランバールと黒剣グアサングに、アンカラゴンは空飛ぶ船ヴィンギロトと大鷲、ヴァラールの援助を受けた航海者エアレンディル、スカサはエオセオドのフラムにそれぞれ退治された。その他、『農夫ジャイルズの冒険』に登場する長者黄金竜Chysophylax Dives は噛尾刀(こうびとう)と呼ばれる、非常に強力な竜殺し専用の業物で無力化されている。
注
参考文献Uther, Types of International Folktales, vol. 1, p. 174.
Creation and Chaos: A Reconsideration of Hermann Gunkel's Chaoskampf |