公物公物(こうぶつ)とは、国・地方公共団体等の行政主体により、直接に公の用に供せられる個々の有体物をいう。 概要私物に対する観念で、国有財産・公有財産でも単に収益を目的とする普通財産は、公物ではない。私有財産であっても、それが公共目的に供されるものであれば、公物となりうる。私有財産が公物として公の目的に供される場合、その公の目的を達成するために必要な限度で、私権が制限され、それについては正当な補償がなされなければならないが、その物についての私権が認められないこともある(道路法3条)。b:国家賠償法第2条の営造物と同じ意味である。直接公衆の使用に開放される公共用物と、国または公共団体自身の使用に供せられる公用物とを含む。公共用物は、特定物件が一般公衆に供される形態を備えていて、公用開始行為があって成立する(自然公物の場合、公用開始行為は不要)。形態的要素を欠くか、公用廃止行為があった場合には、消滅する。公用物は、公用開始行為があれば成立し、公用廃止行為があれば消滅する。公用開始行為には、一定の権限を有することを要し、何らの権限に基づくことなく、他人の物を公用物として公用開始行為を行っても、原則として無効である[1]。なお、公物について公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合には、黙示的に公用が廃止されたものとして、取得時効が成立する。 公物の管理に瑕疵があったために損害を受けた者は、公物の管理を担当する公務員が無過失であっても損害賠償を請求することができるが、この請求は公務員個人に対してではなく、公物の管理者である国または地方公共団体に対して行わなければならない[2]。 不動産登記法の適用除外となることがあるが、所有権の移転については、b:民法第177条の適用を受けるため、国は後に登記を備えた第三者に対抗することはできない。しかし、当該不動産は、私有公物となるため、第三者は、損害賠償請求や妨害排除請求はすることができないとするのが判例である[1]。公用廃止行為がなされない限り、当該所有権に加えられた制限は消滅しない。 分類
法的性質公物の不融通性融通性の制限の様態は多様である。国有公物に対して強制執行はできないとするのが通説であるが、公有・私有公物に対しては強制執行可能である。差し押さえられ、競売にかけられた公物を落札し、所有権を取得しても私権は制限されうる。黙示的にでも公用廃止行為があれば、取得時効の制限は妨げられない[3]。公物は公物のままでは収用の対象とならず、公物を他の目的に供するには、いったん公用廃止行為を行わなくてはならない。 公物の範囲の決定特段の定めのない限り、行政庁は、一方的に公物の範囲を決定することは許されず、不服のある者は、不服申立てや訴訟を提起することはできない。 公物の管理・使用特別の規定が多い。 判例
歴史的に国有財産とされてきた国有の公物であって、直接の根拠法がなく、地方公共団体が管理してきたものを言う。地方分権一括法により、所有権を国から市町村に移譲された(国有財産法、国有財産特別措置法の一部改正)。 公物法公物に関する法規範の体系をいい、公物と同様学問上の概念である。 使用関係
脚注
外部リンク |