介護休業
介護休業(かいごきゅうぎょう)とは、一定の親族を介護する労働者が法律に基づいて取得できる休業のことである。本項目では、日本において、1991年に制定された育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)(通称:育児介護休業法)によって定められた介護休業及び同法に定める介護を理由とする措置、同法による指針(「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」最終改正・平成28年厚生労働省告示第313号、以下「指針」)について説明する。 対象となる労働者は、対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業を取得することができる。取得予定日の2週間前までに、書面にて事業主に申し出る必要がある。賃金の支払いは雇用主の任意であるが、不支給である場合、雇用保険の条件を満たす者は介護休業給付を受けることができる。 この育児介護休業法に基づいて介護休業申出があったときは、事業主はその申出を拒むことができない。 定義
「介護休業」とは、労働者(日々雇用される者を除く)が、法第3章に定めるところにより、その要介護状態にある対象家族を介護するためにする休業をいう(第2条2号)。
介護休業取得の要件介護休業を取得するには、以下の要件を満たすことが必要である。取得する者の男女は問わない。他の者の手伝いを受けている場合であっても、労働者本人が介護をしているのであれば、社会通念上、「対象家族を介護する」に該当する。休業は法律により定められている労働者の権利であるため、事業所に規定が無い場合でも、申出により休業することは可能である。事業所によっては就業規則等で独自の上乗せ規定を設けている場合もある。 事業主は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者からの介護休業申出があったときは、当該介護休業申出を拒むことができない(第12条1項)。ただし、労使協定に定めることにより、以下の労働者については、介護休業を認めないことができる(施行規則第23条)。
介護休業開始予定日までであれば、労働者は当該介護休業の申出を撤回することができるが(第14条1項)、平成29年1月1日以降は、同じ対象家族について連続して2回介護休業の申出を撤回した場合には、事業主はそれ以降の介護休業の申出を拒むことができる(第14条2項)。 事業主は、労働者が介護休業申出をし、又は介護休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない(第16条)。 雇用の形態有期雇用労働者については次のいずれにも該当していなければならない(第11条1項)。なお労働契約の形式上期間を定めて雇用されている者であっても、当該契約が期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となっている場合には、これらの要件に該当するか否かにかかわらず、実質的に期間の定めのない契約に基づき雇用される労働者であるとして介護休業の対象となる(指針)。
期間介護休業は、同一の対象家族の要介護状態ごとに1回ずつ、後述の短縮等の措置が講じられた期間と合算して93日まで取得することができる(第11条2項)。平成29年1月以降は93日以内であれば3回まで分割して取得することができる。
手続き介護休業申出は、次に掲げる事項を事業主に申し出ることによって行わなければならない(施行規則第23条1項)。事業主は、介護休業申出があったときは、当該介護休業申出をした労働者に対して、下記の3,4に掲げる事実を証明することができる書類の提出を求めることができる(施行規則第23条3項)。証明方法について、介護休業申出をする労働者に過大な負担をかけることのないようにすべきものであり、介護休業に関しては、特に情勢が様々に変化することがあるので、臨機応変かつ柔軟な対応が望まれる(指針)。
事業主は、労働者からの介護休業申出があった場合において、当該介護休業申出に係る介護休業開始予定日とされた日が当該介護休業申出があった日の翌日から起算して2週間を経過する日前の日であるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該介護休業開始予定日とされた日から当該2週間経過日までの間のいずれかの日を当該介護休業開始予定日として指定することができる(第12条3項)。この指定は、介護休業開始予定日とされた日(その日が介護休業申出があった日の翌日から起算して3日を経過する日後の日である場合にあっては、当該3日を経過する日)までに、介護休業開始予定日として指定する日を介護休業申出をした労働者に通知することによって行わなければならない(施行規則第26条)。つまり、介護休業開始予定日とされる日の2週間前までに申し出ないと、労働者の希望通りの介護休業ができない可能性がある。 介護離職を防止するための措置介護休業のほかに、対象家族を介護する労働者の取扱いなどについて、次の規定がある。なお、育児休業と共通する、法所定の事業主が講ずべき措置については、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律#事業主が講ずべき処置を参照のこと。
要介護状態にある対象家族の介護等を行う労働者(日々雇用される者を除く)は、その事業主に申し出ることにより、一の年度において5労働日(要介護状態にある対象家族が2人以上の場合にあっては、10労働日)を限度として、当該介護等を行うための休暇(介護休暇)を取得することができる。この申出は、対象家族が要介護状態にあること及び介護休暇を取得する日を明らかにして、しなければならない(第16条の5)。事業主は、労働者からのこの申出があったときは、当該申出を拒むことができないし、取得日を変更することもできない。介護休暇は、1日又は半日単位で取得(1日の所定労働時間が4時間以下の者は半日単位での取得は不可)することができる(施行規則第39~40条)。令和3年1月からは時間単位での取得も可能となる[3]。ただし以下の労働者については、労使協定に定めることにより、介護休暇を認めないことができる(第16条の6)。
要介護状態にある対象家族の介護等を行う労働者(日々雇用される者を除く)は、その事業主に申し出ることにより、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて労働させてはならない(所定外労働の制限、第16条の9)。この請求は、一の制限期間(1月以上1年以内)について、制限開始予定日・終了予定日を明らかにして、制限開始予定日の1月前までにしなければならない。この制限は、対象家族を介護しなくなった場合、労働者が産前産後休業・育児休業・介護休業をすることとなった場合は労働者の意思にかかわらず、終了する。ただし以下の労働者については、労使協定に定めることにより、所定外労働の制限の請求を認めないことができる。
要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者(日々雇用される者を除く)で次のいずれにも該当しない者が、当該対象家族を介護するために請求したときは、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、制限時間(1月について24時間、1年について150時間)を超えて時間外労働をさせてはならない(時間外労働の制限、第18条)。この請求は、一の制限期間(1月以上1年以内)について、制限開始予定日・終了予定日を明らかにして、制限開始予定日の1月前までにしなければならない。
要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者(日々雇用される者を除く)で次のいずれにも該当しない者が、当該対象家族を介護するために請求したときは、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、午後10時から午前5時までの間(深夜)において労働させてはならない(深夜業の制限、第20条)。
事業主は、その雇用する労働者(日々雇用される者を除く)のうち、その要介護状態にある対象家族を介護する労働者に関して、労働者の申出に基づく連続する3年以上の期間における所定労働時間の短縮その他の当該労働者が就業しつつその要介護状態にある対象家族を介護することを容易にするための措置を講じなければならない(所定労働時間の短縮措置等、第23条3項)。なお、労働者が、その対象家族について介護休業をしたことがある場合には、93日から介護休業をした期間の日数を差し引いた日数以上の期間について措置等を講ずればよい。ただし、労使協定に定めることにより、以下の者については所定労働時間の短縮措置等を講じないこととすることができる。
「労働者が就業しつつその要介護状態にある対象家族を介護することを容易にするための措置」とは、以下のいずれかの方法によって講じなければならない。さらに4.を除き2回以上利用できる措置でなければならない(施行規則第79条)。
介護休業給付制度介護休業期間中の賃金については、法令上は賃金の支払いを事業主に義務付けておらず、各事業所の就業規則等による。そのために賃金の支払いを受けられない者に対して、雇用保険法(昭和49年法律第116号)の規定により介護休業給付金の支給を受けることができる。次の条件をすべて満たした場合、介護休業給付を受けることができる。
支払われる介護休業給付金の金額は、支給対象期間(1か月)当たり、当分の間休業開始時賃金日額×支給日数の67%相当額である。ただし、各支給対象期間中(1か月)の賃金の額と介護休業給付金との合計額が賃金日額×支給日数の13%を超えるときには、当該超えた額が減額されて支給される。 なお、育児休業の場合と異なり、介護休業期間中であっても社会保険(健康保険、厚生年金保険)の保険料は免除されない(平成11年3月31日保険発46号・庁保険発9号)。介護休業期間中の保険料の支払いについては、あらかじめその支払方法を労働者に周知させておかなければならず、事業主は、労働者が介護休業申出をしたときは、当該労働者に対し、書面でこの取り扱いを明示しなければならない(第21条、施行規則第70条)。 脚注
関連項目外部リンク
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