ヴァーノン・コールマン

Vernon Coleman

ヴァーノン・コールマン
2019年
生誕 (1946-05-18) 1946年5月18日（78歳）
国籍 イギリスの旗 イギリス
職業 ブロガー
代表作 『Mrs Caldicot's Cabbage War』
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ヴァーノン・コールマン（英: Vernon Coleman、1946年5月18日 - ）は、イギリスの元医師、反ワクチン活動家、エイズ否認論者、ブロガー、および小説家であり、健康・政治・動物問題などに関する執筆活動を行っている。コールマンの医学的主張は一般的に信用されておらず、疑似科学的であるとされている。以前は新聞のコラムニストや総合診療医として活躍していた。

生い立ち

1946年にイングランドで電気工事士の一人息子として生まれた[1]。ウェスト・ミッドランズのウォルソールで育ち、クィーン・メアリーズ・グラマー・スクール（英語版）に通った[1]。幼い頃のコールマンは進路を決めかねていたが、12歳のときに家族の友人の勧めで医師になることを決意した[1]。バーミンガムの医学校に通う前の1964年から1965年にかけて、リバプールでボランティア活動を行い、子供たちに高齢者の家のペンキ塗りや買い物の手伝いをしてもらった[2][3]。

キャリア

コールマンは1970年に医師の資格を取得し、総合診療医として働いていた。1981年、患者に関する守秘義務に違反すると考えて診断書に診断名を書くことを拒否したため、彼は英国保健省から罰金を科された。彼は2016年3月に医師免許を放棄したため、現在はGPプリンシパルとしての登録も免許も有していない[4]。反生体解剖主義者であるコールマンは、生体解剖（英語版）に関する貴族院での証人として、自らを「教授」と名乗っている[5]。彼は、スリランカに拠点を置くInternational Open Universityから名誉教授の称号を授与されている[2]。

執筆活動とメディア出演

コールマンは、陰謀論や疑似科学的な主張を行うブロガーであり、様々な書籍を自費出版しては批判を浴びている[1][6][7][8]。国民保健サービスが製薬会社に支配されていることを訴えた最初の著書『The Medicine Men』を上梓した後、コールマンは執筆活動に専念するために国民保健サービスを退職した[1][9][10]。

1989年、ダイアナ妃がハンセン病患者と握手することを発表した後、コールマンのハンセン病に関する発言を批判する論説がブリティッシュ・メディカル・ジャーナルに掲載された。この事件はチャンネル4の『Hard News』で取り上げられたが、コールマンは旅費が支払われないことを理由に出演を辞退した[11]。

1994年、反生体解剖主義者に狙われていたコリン・ブレークモア（英語版）の自宅住所や電話番号を公表しないよう、高等裁判所の判事が一時的な禁止命令をコールマンに下した。彼はまた、ブレークモアの安全を脅かすような情報を公表しないこと、およびコールマンが既に情報を提供した可能性のある人物の名前を弁護士に伝えることに同意した[12][13]。

1996年、コールマンは『医者を見限る勇気』（原題: How to Stop Your Doctor Killing You）という本を出版したが、後に広告基準局から広告禁止処分を受けた[14]。2004年には、飼い猫を題材にした『Alice's Diary』の出版を断られたため、自費出版を開始した[15][9]。コールマンは複数のペンネームで執筆しており、1970年代後半にはエドワード・バーノン（英: Edward Vernon）という名前で、開業医としての生活を描いた3つの小説を出版している[16]。

コールマンが1993年に著した小説『Mrs Caldicot's Cabbage War』は、2002年に同名で映画化された[要出典]。

コールマンは、『The People』紙で人生相談欄のコラムニストとして活躍していたが、2003年に辞職した[7][17]。在職中、彼は報道苦情処理委員会（英語版）から非難を受けていた[2][15]。

エイズ否認

→「エイズ否認主義」も参照

1980年代、ザ・サンに寄稿したコールマンは、エイズが異性愛者コミュニティにとっての重大なリスクであることを否定した。その後、彼は「エイズはデマである」と主張し、「エイズという病気は恐らく存在しないし、これまでも存在しなかったというのが私の考えである」と書いている。このような主張は医学界では否定されている[18][19]。

1988年11月3日、コールマンはザ・サン紙に「ストレート・セックスを楽しむ人々にとって、エイズが重大な脅威であると未だに主張している人々は、文盲か無責任な人である」と書いた。1989年8月3日、コールマンはインデペンデント紙の編集者に宛てた手紙を書き、「あなたの記事は、エイズは異性愛者にとって脅威であるという長年の神話を永続化させるのに役立っただけだ」と主張した。1989年8月10日、コールマンのコラム『Health Matters』は、エイズ啓発キャンペーンを放棄するよう要求した。1989年11月17日、ザ・サン紙は、「ストレート・セックスはエイズをもたらさない」という見出しの記事を掲載し、「致死の病気であるエイズは、ホモセクシャル、バイセクシャル、ジャンキー、汚染された輸血を受けた者にしか感染しない」と主張した。翌日、コールマンは「エイズ―世紀の作り話」という見出しの記事でザ・サン紙の主張を支持し、同様にエイズは異性愛者にとって重大なリスクではないこと、医療会社、医師、コンドームメーカーは大衆を脅かすために共謀しており、公共サービスから利益を得る既得権益を持っていること、道徳運動家は伝統的な家庭的価値観を確立するために若者を脅して独身にさせようとしていることを主張した。またコールマンは、ゲイの活動家が「エイズが異性愛者にとって重大な脅威ではないことが広く知られるようになると、エイズ研究の資金が減少するのではないかと心配している」と主張した[20][21]。

反ワクチン的主張

→「ワクチン忌避」も参照

コールマンは、「新型コロナウイルス感染症（COVID-19）はデマであり、ワクチンは危険である」と主張しており、医学界から批判を浴びている[22][23] 。

2021年、コールマンは、「臨床試験がまだ進行中であるため、ワクチンが安全で効果的であるかどうかは誰にもわからないし、ワクチンを接種した何千人もの人々が、ワクチンによって死亡したり、重傷を負ったりしている。法的には、ワクチン接種を行っている人たちは全員戦犯である」と主張した。この主張は、世界保健機関（WHO）が主導するプロジェクト「Vaccine Safety Net（英語版）」のメンバーである「Health Feedback」によって否定された[24][25]。コールマンはその後、「COVID-19ワクチンは危険であり、多くの人々を死に至らしめ、さらに多くの人々に深刻な副作用（脳卒中、神経障害、アレルギー、失明、麻痺）をもたらしている。COVID-19ワクチンを接種した人々は病原性のプライミングを受けており、ウイルスに接触すると免疫系が過剰に反応し、多くの死の原因となっている」と主張し、また「ワクチンを接種した人々の体は致死性のウイルスを作る実験室である」と主張している。いずれの主張にも正当な医学的エビデンスによる裏付けがないため、不正確で誤解を招く恐れがあるとファクトチェック機関により判定されている[26][27][28][29]。

反証されたにもかかわらず、コールマンの反ワクチン接種の見解は、新型コロナウイルス感染症の否定や反マスク運動のプロパガンダに利用されており、マンチェスターのプレストウィッチでは、コールマンの名前が記載された反ワクチン接種の宣伝ビラが撒かれる事態にもなっているため、警察官が住民にビラを捨てるよう促している。自治体の発表によると、「市民の皆さんには、発信されているメッセージを無視するようにお願いし、関連するすべての年齢層にワクチンの提供を受けるように呼びかけている」という[30]。同様のビラはスコットランドでも撒かれており、スコットランド議会のシャーリー・アン・サマービル（英語版）が非難している[31][32]。

イギリス広告基準局による決定

2005年、英国広告基準局（英語版）（ASA）は、「医師はあなたを殺す可能性が最も高い人物である」と主張するコールマン社出版の書籍『医者を見限る勇気』（原題: How to Stop Your Doctor Killing You）の広告を禁止した。ASAは、広告が誤解を招いており、不快感を与え、医療従事者を侮辱しているという苦情を支持した。ASAは、コールマンの主張は根拠に乏しく「無責任」であり、「弱い立場の人々が必要な医療を受ける意欲を失わせる可能性がある」と判断した[33]。この決定を受けて、コールマンはASAを非難するよう求め、その後「ASAの行為は人権法第10条に違反している」と主張し、英国公正取引庁に苦情を申し立てた[34]。公正取引庁は、コールマンの苦情を棄却した[35]。

2007年、ASAは、コールマンが肉食と癌の関連性を宣伝する広告において、誤解を招くような主張をしていたと再び指摘した。コールマンはASAからの問い合わせに応じなかった。その後、コールマンは再びASAの行動規範に違反していたことが判明し、ASAはコールマンの広告は根拠を欠いており、過度の恐怖と苦痛を与える可能性が高いと再び判断した。コールマンは、この広告を今後掲載しないよう指示され、今後のASAの調査に応じるよう知らされた[36][14]。

私生活

コールマンはドナ・アントワネット・コールマン（英: Donna Antoinette Coleman、1972年 - ）と結婚している[37]。

脚注

  1. ^ a b c d e Walker, Esther (14 May 2008). “The doctor will see you now: Who does Vernon Coleman think he is?”. 15 May 2008時点のオリジナルよりアーカイブ。23 August 2019閲覧。
  2. ^ a b c Bedell, Geraldine (7 April 1996) "Doctor on the Make", The Independent. Retrieved 4 September 2020.
  3. ^ 'Volunteer for Kirkby', The Guardian, 14 May 1965
  4. ^ “Vernon Edward COLEMAN”. GMC - UK. General Medical Council UK. 24 September 2020閲覧。
  5. ^ “Supplementary memorandum by Professor Vernon Coleman”. www.parliament.uk. 22 January 2020閲覧。
  6. ^ Fennel, Oliver (27 June 2020). “An 'old man in a chair' pulling rabbits from his bag of 'truths'”. Bangkok Post. https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/1941816/an-old-man-in-a-chair-pulling-rabbits-from-his-bag-of-truths 24 September 2020閲覧。 
  7. ^ a b 'Conscientious Objectors'. Financial Times. London. 8 August 2003
  8. ^ Robson, David (29 November 2020). “It's only fake-believe: how to deal with a conspiracy theorist”. The Guardian. https://www.theguardian.com/society/2020/nov/29/how-to-deal-with-a-conspiracy-theorist-5g-covid-plandemic-qanon 7 December 2020閲覧。 
  9. ^ a b Johnson, Rachel (6 March 2004). “You have been warned, Mr Blair”. The Spectator (London). https://www.spectator.co.uk/article/you-have-been-warned-mr-blair 24 March 2020閲覧。 
  10. ^ Khashimova Long, Katherine (28 January 2021). “Amazon algorithms promote vaccine misinformation, UW study says”. The Seattle Times. https://www.seattletimes.com/business/amazon/amazon-algorithms-promote-vaccine-misinformation-uw-study-says/ 6 February 2021閲覧。 
  11. ^ “Medicine and the Media”. BMJ 299 (6706): 1036. (1989-10-21). doi:10.1136/bmj.299.6706.1036. ISSN 0959-8138. 
  12. ^ “Animal rights man restrained”. The Guardian (London). (3 August 1994) 
  13. ^ Schoon, Nicholas (3 August 1994). “Scientist wins right to keep address secret: Professor hounded by anti-vivisectionists wins court battle with journalist”. The Independent (London). https://www.independent.co.uk/news/uk/scientist-wins-right-to-keep-address-secret-professor-hounded-by-anti-vivisectionists-wins-court-1381039.html 22 March 2020閲覧。 
  14. ^ a b “ASA Non-broadcast Adjudication: Publishing House”. Advertising Standards Authority. (22 June 2005). https://www.webarchive.org.uk/wayback/en/archive/20141024155206/http://www.asa.org.uk/Rulings/Adjudications/2007/5/Publishing-House/TF_ADJ_42600.aspx 23 March 2020閲覧。 
  15. ^ a b Ross, Deborah (12 July 1999). “What seems to be the problem Doctor Coleman?”. The Independent (London). https://www.independent.co.uk/arts-entertainment/what-seems-to-be-the-problem-doctor-coleman-1105857.html 22 March 2020閲覧。 
  16. ^ Tickety Tonk (Vernon Coleman's Diaries), Blue Books, 2019
  17. ^ The Morning Show with Patrick Timpone, 31 January 2017
  18. ^ McCredie, Jane (21 November 2011). “Reining in Mavericks”. InSight+ (44). https://insightplus.mja.com.au/2011/44/jane-mccredie-reining-mavericks/. 
  19. ^ “AIDS & HIV”. VernonColeman.com. 12 November 2020閲覧。
  20. ^ Eldridge, John (2003). Getting the Message: News, Truth, and Power. Routledge. pp. 198-224. ISBN 9781134895823. https://books.google.com/books?id=WNGIAgAAQBAJ&pg=PA221 
  21. ^ Felton, James (2020). Sunburn: The unofficial history of the Sun newspaper in 99 headlines. Sphere. ISBN 978-0-7515-8077-8 
  22. ^ “COVID Has Created a Perfect Storm for Fringe Science”. サイエンティフィック・アメリカン. 2024年8月9日閲覧。
  23. ^ Reuters, Fact Check. “Fact Check-UK government data does not show pandemic is a hoax”. ロイター. https://www.reuters.com/article/idUSL1N2MS1ZR/ 2024年8月9日閲覧。 
  24. ^ Carballo-Carbajal, Iria (2021年2月11日). “COVID-19 vaccines approved for emergency use prevent the disease and are generally safe based on rigorous clinical trials and ongoing monitoring”. Science Feedback. Health Feedback. 2024年8月9日閲覧。
  25. ^ Staff, Reuters (2021年2月4日). “Fact check: Staff administering COVID-19 vaccines are not war criminals”. ロイター. https://www.reuters.com/article/idUSKBN2A42H5/ 2024年8月9日閲覧。 
  26. ^ Portela Carballeira, Rubén (2021年4月1日). “COVID-19 vaccines don’t hamper the function of the immune system and are likely to limit the generation of variants; no evidence that they produce more lethal variants”. Science Feedback. Health Feedback. 2024年8月9日閲覧。
  27. ^ “Fact Check: COVID-19 Vaccines Are NOT 'Weapons of Mass Destruction'”. Lead Stories. 31 May 2021閲覧。
  28. ^ “Doctors and nurses who administer the coronavirus vaccine can be "tried as war criminals."”. ポリティファクト. 2024年8月9日閲覧。
  29. ^ “People giving Covid-19 vaccines won’t be tried as war criminals”. Full Fact. 31 May 2021閲覧。
  30. ^ Bowman, Jamie (4 May 2021). “Police urge residents to 'dismiss' anti-vaccination leaflets being distributed in Prestwich”. Bury Times. https://www.burytimes.co.uk/news/19278234.police-urge-residents-dismiss-anti-vaccination-leaflets-distributed-prestwich/ 8 May 2021閲覧。 
  31. ^ “Dunfermline MSP condemns coronavirus hoax leaflet” (22 September 2020). 28 September 2020閲覧。
  32. ^ Amery, Rachel (15 October 2020). “Coronavirus survivors hit out at hoax leaflets posted through doors in Perth”. Evening Telegraph. https://www.eveningtelegraph.co.uk/fp/coronavirus-survivors-hit-out-at-hoax-leaflets-posted-through-doors-in-perth/ 6 February 2021閲覧。 
  33. ^ “Criticism for 'deadly doctor' ad”. BBC. (21 June 2005). http://news.bbc.co.uk/1/hi/england/devon/4117064.stm 5 January 2021閲覧。 
  34. ^ “Does The ASA Do More Harm Than Good?”. VernonColeman.com (June 2005). 5 January 2021閲覧。
  35. ^ “The Advertising Standards Authority and the Office of Fair Trading”. VernonColeman.com (June 2005). 5 January 2021閲覧。
  36. ^ “Books and publications”. www.asa.org.uk. Advertising Standards Authority Committee of Advertising Practice (22 July 2013). 2020年3月22日閲覧。
  37. ^ Mrs. Caldicot's Knickerbocker Glory, 2014, page 1

外部リンク