フョードロフは生前表立つことを潔しとせず、まとまった形での著書を残していないが、死後弟子により編纂された主著に『共同事業の哲学』(Философия общего дела、1906-1913)がある。彼の基本的な思想は、自然を制御することによる死=重力の克服と、全ての父祖の文字通りの復活、そして人間の不死である。フョードロフはこの人間の復活と不死に向けた全人類的なプロジェクトを「共同事業」(obshchee delo)と呼び、全人類が一体となってこの「事業」に取り組むことによって血縁性(rodstvo)を取り戻し、人間の不幸の根本的原因であるこの世界の非血縁性から自らを解放せよと呼びかける。
また、ロシア宇宙主義の不死や自然の制御・改造を含む思想的側面は、英米圏を中心に起こった加速主義と呼ばれる思想潮流に影響を与えたとされる。加速主義関連文献のアンソロジー『#Accelerate―加速主義者読本』[9]には、ニコライ・フョードロフの論文「共同事業(The Common Task)」が収録されている。
^George M. Young (2012). The Russian Cosmists: The Esoteric Futurism of Nikolai Fedorov and His Followers. Oxford: Oxford UP. pp. 7-8 「ロシア宇宙主義」という用語の初出については諸説あるが、およそ1970〜80年代にかけて初めて用いられた用語であるとする説が多い(Римский, В.П. “Судьба термина «Русский космизм»”. Государственный музей истории космонавтики им. К.Э. Циолковского, г. Калуга. 2019年8月29日閲覧。)。
^Семёнова, Гачева (ред.) (1993). Русский космизм: Антолология философской мысли. М.: Педагогика-пресс. 抄訳:セミョーノヴァ、ガーチェヴァ 著、西中村浩 訳『ロシアの宇宙精神』せりか書房、1997年。
^Борис Гройс (ред.) (2015). Русский космизм. Антология. М.: Ад Маргинем.
^Boris Groys, ed (2018). Russian Cosmism. Cambridge: MIT Press
^Mackay; Avanessian, eds (2014). #Accelerate: The Accelerationist Reader. Falmouth: Urbanomic
Michael Hagemeister “Russian Cosmism in the 1920s and Today” in: Bernice G. Rosenthal, ed (1997). The Occult in Russian and Soviet Culture. Ithaca, London: Cornell UP. pp. 185-202. ISBN0-8014-8331-X
George M. Young (2012). The Russian Cosmists: The Esoteric Futurism of Nikolai Fedorov and His Followers. Oxford: Oxford UP