ラー・アンドロメダ・プロメシュームラー・アンドロメダ・プロメシューム(La Andromeda Promethium[1])は、松本零士の作品に登場する架空の人物。 正式名はプロメシュームII世だが、「II世」の呼称は省略される場合が多い。『銀河鉄道999』ではプロメシュームとしか呼ばれておらず、また『新竹取物語 1000年女王』TV版やOVA作品でも使用されていないため、本項目では便宜上「プロメシューム」と表記する。なお、本項目では主に初出の作品である『999』の描写を中心に解説する。 キャラクター概要『999』劇中において、機械帝国の最高権力者・女王プロメシュームとして登場。メーテルの母にして機械帝国の建国者であり、かつてはドクター・バンと婚姻関係にあった。「機械の体」による永遠の命を全宇宙に拡大すべく野望を燃やす。 2000年以降、『999』と『1000年女王』のミッシングリンクを埋める作品という位置付けがなされたOVA作品の『メーテルレジェンド』およびTVアニメ『宇宙交響詩メーテル 銀河鉄道999外伝』が発表され、『1000年女王』の雪野弥生=『999』のプロメシュームという設定が明確なものとなった。その結果、プロメシュームのフルネームは『1000年女王』の作中で明かされた弥生のラーメタル名となり、『1000年女王』は彼女の若かりし頃を描いた作品という位置付けが明確にされた[2]。 これに伴い『レジェンド』において、ラーメタルに帰還した弥生が機械帝国の女王プロメシュームへと変貌していく過程が描かれた。なお、この過程は『999』映画2作目などで本人やメーテルから語られる経緯とは大きく異なる。 性格・人物狂信的なまでの機械の信奉者であり、かつての夫・バン曰く「哀れな機械の女」。TV版では、自らを「全宇宙の支配者」と称している。メーテルに対しては並々ならぬ愛情を注ぐ(後述)一方、自分の野望を阻む者に対しては非情であり、たとえそれが夫や血を分けた娘であっても決して容赦はしない。TV版でのメーテルの台詞によれば、かつては「鉄郎のお母さんにも負けないくらい優しい母」だったという。だが、「機械の体による永遠の命の実現を目指すようになってから母は変わってしまった」とのことであり、劇中においては人間としての温かい心は既に失われていた。 若い頃は苦難の日々を過ごしている。原作ではメーテルが連れてきた少年・星野鉄郎の前に姿を現した際に、映画2作目ではメーテルの前に姿を現わした際に、自分がこれまで歩んできた道のりを語る場面がある。 メーテルを除き生身の人間を見下した態度をとり、鉄郎に対して「愚かな生身の2足動物」と言い放ったり、しばしば「愚かな人間ども」といった表現を用いている。もっとも、鉄郎に対しては接し方が原作とアニメでは異なり、原作に先んじて登場したTV版、劇場版2作品では敵愾心をむき出しにしているが、原作では侮蔑的表現を用いる一方でメーテルと共に旅を続けてきたことに対しては礼を述べ、かつての自分の姿を重ねてその人間性を評価するも、「鏡の中の自分を殺せるか?」という警句を発している。(メーテルはこの警句を『アンドロメダ大星雲や惑星大アンドロメダが、鏡に映った未来の銀河系や地球かもしれない、という意味』と説明し、『もしそうだったらこんな悲しいことはない。果たしてその通りなのか、自分で答えを出しなさい』と励ましている[3]) 機械化人にとっては偉大な存在であり、映画2作目の冒頭では鉄郎らと戦う機械化人の兵士達がシュプレヒコールでその名を連呼する場面があるほか、この映画での側近・黒騎士ファウストが管轄する銀河鉄道のコントロールセンター内には、プロメシュームの顔を模した巨大なレリーフが配置されている。限りある命の素晴らしさを信じて機械化人と闘う生身の人間にとっては脅威であり、倒すべき存在であった。 しかし、生身の人間を見下しているがゆえの詰めの甘さと機械に対する過信が、自身と機械帝国の破滅を招いた(後述)。 容姿・身体的特徴など『999』映画1作目で登場した際、能面の女面のような白い顔に黒目のみの瞳、額には歯車の意匠が施された姿で描かれ、TV版や原作でもこの容姿が踏襲されている。また、映画2作目で惑星ラーメタルの古城に描かれている、生身の人間だった頃の彼女の肖像画も機械化した後の顔とそっくりに描かれている。2000年以降のOVA作品では、人間時代の容貌(特に髪の毛の色・顔立ち)をメーテルが受け継いでいるという解釈がなされている。 また、90年代以降の作品においてメーテルとは姉妹となり、いま一人の娘として設定されたエメラルダスは性格・行動・正義感においてプロメシュームよりも彼女の妹(『1000年女王』TV版では姉)セレンに似ているところがある[4]。 プロメシュームの姿は上記の特徴を基調としつつも作品ごとで異なっている。以下に機械化後のそれぞれの姿を記す。
劇中での軌跡時系列順では、『1000年女王』→『レジェンド』→『宇宙交響詩-』→『999』となる。ただし、作品の発表順は『999』→『1000年女王』→『レジェンド』→『宇宙交響詩-』となっており、整合性も十分に図られていない。 銀河鉄道999
1000年女王時代設定が1999年から2001年となる『1000年女王』では、1000年周期で地球に接近する惑星ラーメタルにおける地球の統治者1000年女王として登場。地球では雪野弥生として暮らし、地球人達との交流を育んでいった。 →詳細は「雪野弥生 § 劇中での軌跡」を参照
円谷映像の『レジェンド』公式サイトに掲載されていた(現在は閉鎖)、原作者松本の筆によるwebコミックで彼女が雪野弥生として1001年から2001年の間を地球で暮らしたことを語る場面があったため、後述の『レジェンド』及び『宇宙交響詩-』は、原作漫画からの続きとみられる。 メーテルレジェンドラーメタル帰還後は女王となり、ドクター・バンという男性と結婚、彼との間にメーテルとエメラルダスの双子を儲けている。太陽系から遠く離れ、寒冷化が進んだラーメタルの民を救うべく、プロメシュームは苛酷な環境にも耐えられる機械の体になることを決意。彼女は機械化人の科学者ハードギアの進言に従い機械化手術を受け、額から肉体の機械化を促進するカプセルを脳に埋め込まれる。だがそれは激痛を伴って肉体を次第に機械の体へと変えてゆくものであり、ハードギアの狙いはラーメタルを機械化して自分の支配下に置くことだった。プロメシュームは増殖していく機械に体を蝕まれながらも、ラーメタルから娘達を送り出すべく999号に向けて救難信号を送る[9]。 母として娘達を999号で送り出すことはできたものの、自身は機械化人となってしまう。プロメシュームは自分との同化を図ってその力を吸収しようとしたハードギアを倒すと、彼に代わって惑星の機械化と生身の人間の駆逐を宣言し、機械の女王となる。 宇宙交響詩メーテル 銀河鉄道999外伝『レジェンド』から数年後、プロメシュームは惑星ラーメタルと人間の機械化を進めていた。メーテルにメッセージカードを送り、999で帰還した彼女の前に機械化する以前の姿で現われ、自分の後を継いで欲しいと頼むが、それは星の内部に眠らせている何体ものクローンを利用した影武者の内の一体であり、本体はラーメタルの中枢部の機械と一体化していた。プロメシュームは状況や相手に応じて優しい人格を持った個体や冷酷な性格を持った個体を使い分けており、エメラルダスの前にもクローンを差し向けている。 その急激な機械化は市民の反発を招き、部下のレオパルド達は表向きは忠義を装っていたが叛旗を翻して自身の艦隊で首都を攻撃、後を継ぐかに見えたメーテルも機械化人となった母を倒すべくこのラーメタルへ戻ってきたのであり、彼女が先の女王ラーレラの指示に従い惑星のコアを分離させたことで惑星ラーメタルを破壊される。 崩壊する惑星からプロメシュームの本体は脱出を図るが、そこにメーテルとエメラルダスが現われたために2人と戦うこととなる。強力な再生能力で2人を圧倒するが、メーテルの「母を倒す」という強い念が込められた血を体内に注ぎ込まれた結果、機械細胞を破壊されその肉体は砂のように崩れ去った。だが死んではおらず、宇宙塵などを取り込み自分の体を再生させると、ラーメタル内部のコアから切り離されて誕生した新惑星に機械化人の艦隊を差し向けた。艦隊はレオパルドやハーロックたちの活躍で撃退されるが、その間に惑星プロメシュームという人工の惑星を誕生させた。 惑星プロメシュームの強力な自己修復能力で、プロメシュームはハーロックのデスシャドウ号とクイーン・エメラルダス号を翻弄するが、トチローの発言にヒントを得たメーテルは、999の車内で知り合った少年・ナスカを惑星を破壊するために必要な部品(生きたネジ)に変え、彼の艦で惑星に突入。プロメシュームはメーテルの前にアンドロイドを多数差し向けるも、最終的にメーテルの手でナスカの魂を宿したネジを埋め込まれたことで惑星プロメシュームは内部から破壊され、プロメシュームも惑星と運命を共にした。 だが、これでも完全には滅んではおらず、プロメシュームは中核となるパーツだけの存在として復活を待つ身となるのだった。 能力機械化人となってからは、以下の能力が確認されている。
娘達への感情表現『999』原作及び映画2作目では、消滅する前に母親思いのメーテルに叫び、たとえ機械化された者でも母としての娘に対する思いを持ち、愛情表現をして人間らしさがあることを見せながら死んでいったが、TV版では、実の娘であろうと自分の野望を阻む者は殺すことをためらわず、鉄郎が自分に銃を向けた際には彼女の体を盾にしていた。また映画1作目では娘に裏切られたことへの仕返しとして、鉄郎をメーテルの目の前で絞殺しようとし、彼女が泣き叫ぶ様子を見て愉しむなど、先述の原作及び映画2作目の描写と併せ、彼女に対しては愛憎入り混じる感情を抱く姿が描かれた。原作でのメーテルの弁によれば、彼女が幼い頃朝露が付いてキラキラと光るクモの巣が好きだったという理由で、惑星大アンドロメダの街の灯をそれに似せて配置しており、メーテルに対し相当に愛情を注いでいるのが分かる。『宇宙交響詩メーテル 銀河鉄道999外伝』ではメーテルに対し異常な執着を見せており、彼女の代わりのアンドロイド(『999』映画1作目にてプロメシュームの左右に侍る侍女のような姿)を多数作り、それを「メーテル」と呼んでいた。だが、いずれも彼女のような心を持ち合わせたものにはなり得なかった。 もう一人の娘・エメラルダスについては、映画1作目が制作された時点では、2人が親子という設定はない(後述)。 『宇宙交響詩メーテル 銀河鉄道999外伝』の前日譚である『メーテルレジェンド』では、第二楽章(後編)のエンディングで能面のような顔をした姿になり果て、人間の心を完全に失ったが、『999号』に乗って悠久の旅に送り出したメーテルとエメラルダスの2人に対して、いつか自分を倒すために戻ってくるように願いかけるかたちで最後の「人間としての心」を持ってその願いを託している。 設定の変遷『999』作中では「プロメシューム」としか名前は出ておらず、『999』連載中にサンケイ新聞で連載が開始された『1000年女王』のヒロイン・雪野弥生のラーメタル名が「ラー・アンドロメダ・プロメシューム」と明かされた後に、原作者の松本自ら『1000年女王』はメーテルの母・プロメシュームの物語と明かしたことで、雪野弥生=『999』のプロメシュームということになった[10] 。が、映画化の際にキャッチコピーが「1000年女王はメーテルなのか?」というものに決まったことに加え、松本自身も後に弥生=メーテルと発言した[11]こともあり、「1000年女王」こと雪野弥生と『999』のプロメシュームは別の人物という線で落ち着き、メーテルとエメラルダスも『999』アンドロメダ編では「ライバル」であり「姉妹」ではなかった[12]。しかしその後、1990年代に発表した『ニーベルングの指環』第2部「ワルキューレ」で幼少時のメーテルとエメラルダスが登場、2人は姉妹ということとなり、第3部「ジークフリート」でメーテルが自分の母の名を「ラー・アンドロメダ・プロメシューム」と語る場面が描かれた。さらにOVA『メーテルレジェンド』において弥生がメーテルとエメラルダスの母・プロメシュームとして登場し、機械帝国の女王へと変貌する様子が描かれた。 こうした設定の変更により、『レジェンド』で2人の母として久しぶりにプロメシュームを演じた潘恵子は、「自分も実際に母親として生活しているので、「子供を育てる母親」という苦悩の部分が彼女とダブって見えた」とコメントした[13]一方、『レジェンド』と『宇宙交響詩-』を経て機械化世界の女王として変貌していく様子が描かれたことについては『宇宙交響詩-』DVDの映像特典のインタビューで「生身の体から機械化していく過程を、絵面で変わっていくのと一緒に(演技でも)やっていくべきだとは思うけど、私としては生身の人間であるところをどこかに残しておいて欲しかった」と語っている。また、「人間の雪野弥生をもう一度やりたい」とも語っており、『1000年女王』でヒロイン・雪野弥生として演じてきた潘としては心残りな部分もあったようだ。 名前先述の通り、正式名にはII世と付く。プロメシュームの2代目ということで、メーテルとの関連性をうかがわせるものとなっている。ただし、『1000年女王』の原作で初めてラーメタル名を名乗った時には「II世」とはつけておらず、この正式名は松本の「弥生=メーテル」発言や映画化の際のキャッチコピーが決まったあたりから出てきたものである。また、プロメシュームという名は機械帝国(ラーメタル)の女王や最高権力者としての「称号」的な意味あいもあるとされ、『999』映画2作目で娘のメーテルがその後を継いだという噂が流れた時には、彼女の故郷であるラーメタル星で機械化人たちと戦っていたパルチザン・ミャウダーの弁によればメーテルがプロメシュームと呼ばれていたという。さらに映画2作目のその後を描いたスピンオフ作品の『銀河鉄道999 ANOTHER STORY アルティメットジャーニー』では、メーテルがプロメシュームの名を継いで正式に「メーテル・プロメシュームIII世」を名乗っている。この際「本来であれば長女のエメラルダスがプロメシュームの名を継ぐはずだった」という設定も追加されている。 「プロメシューム」という名前は、元素プロメチウム(プロメシウム)に由来する。松本によれば、この金属は原子炉の中にしかできない金属であり、非常に人工的なものなのだという[14]。彼女の名が示す意味について、『レジェンド』冒頭のナレーションでメーテルが「アンドロメダの太陽」、自然界に存在することのない重金属・プロメシウムの名と言及している。なお、プロメチウムの名前はギリシャ神話の神・プロメテウス(プロメーテウス)に由来し、一説によれば神々とそっくりの姿をした人間を生み出し、彼らに火の使い方を教えたという。プロメシュームも機械化文明を誕生させ、機械の体による永遠の命を宇宙に広く普及させようとしたという点で、『999』の作品世界においてこのプロメテウスのような文化英雄的キャラクターとなっている。 ゲームでの登場『松本零士999 〜Story of Galaxy Express 999〜』では、映画1作目に準じた姿をしている。行動や言動も映画1作目と原作版を合わせたものとなっている。なお、鉄郎とプロメシュームが直接対決するのは、この作品が唯一である。 鉄郎を「生きたネジ」にしようとするもメノウの裏切りで失敗。メノウを裏切り者として処刑すると、ボスキャラクターとして鉄郎に戦いを挑んでくる。映画1作目で登場した際に乗っていた円盤の上からバリアで攻撃を防ぎつつエネルギー弾で攻撃してくるが、体力ゲージがなくなると頭を抱えながら後ろに倒れて円盤から落ちる。これでも殺すことはできなかったが、メーテルから渡されたドクター・バンのカプセルを鉄郎が大アンドロメダのコアに投げ込むと、そのままコアに落下して死亡する。 声優
脚注
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