ヨーロッパクロマツ (学名 : Pinus nigra )は、マツ科 マツ属 の樹木である。
名前と分類
マツ科マツ属に属し、所謂「松」の一種。葉断面に維管束を2つ持つPinus 亜属に属する。
種小名nigra は「黒い」の意味[ 3] 。仏名:Pin noir、独名Schwarzkieferも共に「黒いマツ」の意味。
分布
ヨーロッパ南部の地中海沿岸諸国に分布する[ 4] 。海抜0メートルから標高1600メートルの高地にまでに自生する[ 4] 。
形態
常緑高木で雌雄同株である。高さ20 - 55メートル (m) に達し[ 4] 、幹は直径0.4 - 2 mになる。樹形は、クロマツ に似て、幼木時は整円錐形で、老木になると広円錐形になる。幹は、通直であり、1788年にはフランス艦隊のマスト にも用いられた。枝は輪生 し、太くてよく分岐する。上枝は上向、中枝より下部は水平に出る。樹皮は、幼木時は、薄くて平滑であるが、老木では厚く、深裂し、鱗片となって剥脱する。幼枝は、黄緑あるいは黄褐色で、光沢がある。冬芽は円錐形であり、色は鮮灰色、長さ1.2 - 2.4センチメートル (cm) である。
葉は2針、通直で、長さ8 - 15 cmであり、暗緑色である。葉の各面には12 - 14条の気孔 線がある。4 - 5年枝上に留まる。球果 は、長卵形、卵円錐形であり、光沢がある。色は、黄褐色あるいは暗褐色で、長さは40 - 80ミリメートル (mm) 、直径25 - 30 mmである。2年目に成熟、3年目に開裂する。種子 は灰色または淡い黄色で、光沢はなく卵状長楕円形である。長さ5 - 7 mmで、翼は長さ40 - 50 mmで、淡褐色の条線がある。
用途
生育は一般に遅い。耐寒力および耐乾力が強く、耐陰性も多い。都会地に適し、造園樹に用いられる。海岸防風林、耕作地防風林にも用いられている。
変種
コルシカマツ (Pinus nigra ver. crsicana )
クリミアマツ (Pinus nigra subsp. pallasiana (Lamb.) Holmboe)
樹形は、半球形である。球果は大型で、長さ100mmある。アナトリア半島 、クリミア半島 の石灰質地に自生している。造園樹として用いられている。
ピレネーマツ (Pinus nigra subsp. laricio Maire)
球果は小形で、長さ40 - 60mmで、直径25mmある。南西フランスのセヴェンヌ山脈 、ピレネー山脈 の石灰質地に自生している。造園樹として用いられている。
シノニム
Abies marylandica Dallim. & A.B.Jacks.
Abies novae-angliae K.Koch
Pinus austriaca Hoss
Pinus banatica (Georgescu & Ionescu) Georgescu & Ionescu
Pinus laricio var.austriaca (Hoss) Loudon
Pinus laricio subsp. austriaca (Hoss) Endl.
Pinus laricio var.moseri J.J.Moser
Pinus laricio var. nigricans (Host) Parl.
Pinus laricio var. prostrata Beissn.
Pinus laricio var. pygmaea Carriere
Pinus laricio var. pyramidata Carriere
Pinus nigra var. austriaca (Hoss) Badoux (和名:オーストリアマツ)
Pinus nigra var. banatica Georgescu & Ionescu
Pinus nigra subsp. croatica Lovric
Pinus nigra var. gocensis Georgev.
Pinus nigra f. hornibrookiana Slavin
Pinus nigra f. moseri (J.J.Moser) Rehder
Pinus nigra var. nigra
Pinus nigra f. prostrata (Beissn.) Rehder
Pinus nigra f. pygmaea (Carriere) Rehder
Pinus nigra f. pyramidalis Slavin
Pinus nigra var. pyramidata (Carriere) Fitschen
Pinus nigricans Host
脚注
参照文献
上原敬二『樹木大図説』 I(12刷)、1996年12月20日、170-171頁。
外部リンク