ユーザー中心設計他のデザイン哲学との大きな違いは、ユーザー中心設計ではユーザーがシステムや機能に慣れることを強いるのではなく、人々が欲しいと思っていることが何であるかを中心としてインタフェースを最適化しようとするという点にある。 UCDモデルと手法ユーザー中心設計のモデルは、ソフトウェア設計者がユーザーのための製品開発の目的を達成する助けとなる。そのようなモデルでは、ユーザーの要求仕様は設計当初から考慮され、製品サイクル全体に含まれる。その主な特徴は、実ユーザーの活発な参加と設計の反復である。
これらの手法はISO標準のISO 13407[注 1]に準拠している。 目的UCD では、まずユーザーとそのタスクや目標について様々な質問を行い、その答えを使って開発と設計に関する判断を行う。質問には次のような項目がある。
要素可視性可視性[注 2]は、ユーザーがその文書のメンタルモデルを構築する補助となる。それはユーザーがその文書を使ったときの活動の効果を予測する補助となる。重要な要素(例えば、ナビゲーションの補助となるような要素)は強調すべきである。ユーザーが文書を一目見て、何ができて何ができないかを把握できるようにすべきである。 アクセス可能性文書が膨大であっても短いものであっても、その文書全体から素早く容易に情報を探し出せなければならない。情報を探し出す方法はいくつも提供されるべきである(ナビゲーション要素、目次、明確にラベル付けされたセクション、ページ番号、色コードなど)。ナビゲーション要素はその文書のジャンルにおいて一貫性がなければならない。よく使われる「チャンキング[注 3]」は、情報を分類して意味のある順序や階層構造に構成する手法である。文書を精読しなくとも、斜め読みで必要な情報を読み取れるようになっていれば、アクセス可能性は向上する。 明瞭性テキストは読みやすくするべきである。修辞的状況の解析を通して、設計者は有効なフォントスタイルなどを決定できる。装飾的なフォントや全て大文字のテキストは読みにくいが、イタリック体やボールド体はうまく使えば明瞭性を向上させる。大きすぎるフォントや小さすぎるフォントも読みにくい。背景と文字のコントラストを高くすると明瞭性が向上する。 言語修辞的状況によっては、特定の種類の言語が必要とされる。文は短い方がよい。状況によって必要とならないかぎり、隠語や専門用語は使わない。能動態の単純な文型が好まれる。 修辞的状況ユーザー中心設計は、修辞的状況[注 4]を中心としてなされる。修辞的状況は、情報媒体の設計を形成する。修辞的状況においては、観客[注 5]、目的[注 6]、コンテクスト[注 7]という3つの要素を考慮する。
ドナルド・ノーマンのユーザー中心設計1986年、ドナルド・ノーマンは著書[注 8]の中で、彼が「良いデザイン」あるいは「悪いデザイン」と思うものについて例を挙げて、その背景となる心理を解説し、「よいデザイン」の原則を提示している。彼は悪いデザインに起因する誤りについて述べ、日常生活でのデザインの重要性を強調した。同書の中でノーマンは美学のような(彼が瑣末と考える)問題を脇においてユーザーのニーズに基づいて行うデザインを指して「ユーザー中心設計」という用語を使った。彼の言うユーザー中心設計は、タスクの構造を簡素化し、物事を可視化し、マッピングを正しくし、制約を利用し、誤りが起きないようにデザインすることである。ノーマンはこの過度に簡略化された手法を後に修正し後に出した著書[注 9]の中でそれを改めて解説している。 製品ライフサイクル管理システムにおけるユーザー中心設計CAD、CAMなどのコンピュータを利用したプロセスを典型とする製品ライフサイクル管理で使われるソフトウェアなどのアプリケーションは、そのユーザーが特定の職業に従事して、あるスキルレベルにあり、それらユーザーの様々なニーズに対して解決策を与えるという特徴がある。例えばCADによるデジタルモックアップは、設計技術者なら中程度の者、アナリストなら初心者レベルの者、製造プランナーなら高いスキルを持つ者が利用すると言えるだろう。 それらアプリケーションが真のユーザー中心設計となるには、カスタマイズ可能なユーザインタフェースを持ち、各ユーザーに最適なインタフェースを提供できる必要がある。 単なるコンピュータやシングルユーザー以上のものへの着目ユーザー中心設計は、コンピュータや紙のインタフェースの観点で語られることが多いが、その応用範囲はもっと広い。そのデザイン哲学は、自動車のダッシュボードから接客サービス(例えば、レストランでの座席への案内、注文、配膳、支払いなど)まで、ユーザーとの相互作用のある様々な分野に適用される。 ユーザー中心設計を複数人のユーザーとの相互作用に適用する場合を、ユーザーエクスペリエンスデザインと呼ぶ。ユーザーエクスペリエンスは、個別のインタフェース、人と人との接触/やりとり、概念的アーキテクチャをいくつも集めたものである。例えば、レストランの例で言えば、注文や支払いといった行為は個別のユーザー間の相互作用だが、全体として「外食」というユーザーエクスペリエンスを構成する。ユーザーエクスペリエンスを有効なものとするには、個々の相互作用を改善するだけでは十分ではない。最終的には、個々の相互作用が有機的に統合されることで1つのユーザーエクスペリエンスが完成される。 製品デザインでは、その製品を購入してから普通に使えるようになるまでの一連の作業を アウトオブボックス・エクスペリエンス(OOBE)と呼ぶ。これには、梱包を解き、説明書を読み、組み立て、使ってみるという一連の作業が含まれる。 関連項目脚注注釈出典参考文献
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