マルトレイヴァース男爵 (英 : Baron Maltravers )はイギリスの古い男爵 位。イングランド貴族 爵位。廷臣ジョン・マルトレイヴァース (英語版 ) が1330年に貴族院 に議会招集されたことに始まる。男爵位は、女系継承を経てアランデル伯爵 、ついでノーフォーク公爵 の従属爵位となっている。ゆえに公爵家の男子の嫡孫が名乗る儀礼称号 に使用されている。
爵位に対して臨時紋章官のマルトレイヴァース紋章官補 (英語版 ) が割り当てられている[ 1] 。
歴史
11代男爵トマス・ハワード 彼の代に男爵位が伯爵位に附属することが決まった。
ジョン・マルトレイヴァース (英語版 ) (1290-1364) は国王エドワード2世 及びエドワード3世 につかえた廷臣である[ 2] 。彼は1330年 に王族初代ケント伯 (英語版 ) 処刑の是非に関する調査委員に任命されたが、その年の6月5日 にマルトレイヴァース男爵 (Baron Maltravers) として議会招集を受けた[ 註釈 1] [ 2] [ 4] 。
初代男爵が1364年に亡くなると、早世した彼の長男ジョン(?-1359/60) の2人の娘ジョアンとエレノアの間で優劣がつかず、爵位は停止 した[ 5] 。
その後、ジョアンが子供のないまま死去すると、エレノアが継承者に確定して1383年に停止解除となった[ 6] 。
2代女男爵エレノア(1345-1405) はアランデル伯爵家に嫁いだため、マルトレイヴァース男爵位は伯爵家に流出することとなる[ 4] [ 5] 。
その子ジョン(1385-1421) は母の死去に伴って男爵位を継承、さらに1415年には父よりアランデル伯爵を相続した[ 7] 。
伯爵家(のちノーフォーク公爵家)はのちに私権剥奪 を受けることとなるが、第21代アランデル伯爵 の代に爵位を回復するとともに、1627年制定の議会法によって「マルトレイヴァース男爵位はアランデル伯爵位と恒久的に不可分一体である[ 註釈 2] 」と定められたため、現在に至るまで伯爵位ひいてはノーフォーク公爵の従属爵位として公爵家によって継承され続けている[ 4] [ 8] 。
1887年、当時の軍務伯 (第15代ノーフォーク公爵 )の指名に基づいて、男爵位に対する紋章官 「マルトレイヴァース紋章官補 (英語版 ) 」が創設された[ 9] 。臨時紋章官であるため幾度かの休止を挟むものの、現在まで紋章官としてその名を残している[ 1] 。
マルトレイヴァース男爵(1330年)
以降の歴代男爵はアランデル伯爵 及びノーフォーク公爵 を参照。
脚注
註釈
^ エドワード2世廃位ののちは、王妃イザベラ とその愛人ロジャー・モーティマー の傀儡のもとエドワード3世が即位した[ 3] 。モーティマーは専横を極め、敵対するケント伯を公開裁判を経て処刑した[ 3] 。初代男爵はその処刑に強く疑問を抱いていたという[ 2] 。
^ この際に、1627年 創設のフィッツアラン=クラン=オズワルデスタ男爵 に関しても同様の趣旨の決定がなされている[ 8] 。
出典
^ a b スレイター, スティーヴン 著、朝治 啓三 訳『【図説】紋章学事典』(第1版)創元社、2019年9月30日、39頁。ISBN 978-4-422-21532-7 。
^ a b c Kingsford, Charles (1893). "Maltravers, John" . In Lee, Sidney (ed.). Dictionary of National Biography (英語). Vol. 36. London: Smith, Elder & Co . p. 6-7.
^ a b 森護 『英国王室史話』大修館書店 、1986年(昭和61年)、138-139頁。ISBN 978-4469240900 。
^ a b c “Arundel, Earl of (E, c.1139) ”. www.cracroftspeerage.co.uk . 2020年5月17日 閲覧。
^ a b Richardson, Douglas (2011). Magna Carta Ancestry: A Study in Colonial and Medieval Families, ed. Kimball G. Everingham . I (2nd ed.). Salt Lake City: Douglas Richardson. pp. 28-32 ISBN 1449966373
^ Cokayne, G.E. (1932). The Complete Peerage, edited by Vicary Gibbs . VIII (2nd ed.). London: St Catherine Press. pp. 583-586
^ Gibbs, Vicary, ed (1910). “Arundel” . The Complete Peerage . 1 (2nd ed.). London: St. Catherine Press. p. 246. https://archive.org/details/completepeerageo01coka/page/246
^ a b Debrett's peerage, and titles of courtesy, in which is included full information respecting the collateral branches of Peers, Privy Councillors, Lords of Session, etc . Wellesley College Library. London, Dean. (1921). p. 680. https://archive.org/details/debrettspeeraget00unse
^ "No. 25763" . The London Gazette (英語). 2 December 1887. p. 6721.
関連項目