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ペトル=ダグラス=ノイマンの定理 」は
暫定的なもの です。
(2024年6月 )
幾何学 において, ペトル–ダグラス–ノイマンの定理 (ペトル–ダグラス–ノイマンのていり、英語 : Petr–Douglas–Neumann theorem,PDN-theorem )は、平面 上の任意の多角形 と正多角形 に関する定理である[ 1] 。1905年と1908年、プラハ とドイツ におけるカール・ペトル (英語版 ) の出版による発表が初出であり[ 2] [ 3] [ 4] 、その後、それぞれ1940年と1941年にジェス・ダグラス とベルンハルト・ノイマン によって、独自に再発見された[ 4] [ 5] [ 6] 。命名はStephen B Grayによる[ 4] 。ペトル=ダグラス=ノイマンの定理は、ダグラスの定理 (Douglas's theorem)、ダグラス–ノイマンの定理 (Douglas–Neumann theorem)、ナポレオン–ダグラス–ノイマンの定理 (Napoleon–Douglas–Neumann theorem)、ペトルの定理 (Petr's theorem)、PDN定理 (PDN-theorem)などとも呼ばれる[ 4] [ 7] 。
ペトル=ダグラス=ノイマンの定理はナポレオンの定理 、ヴァン・オーベルの定理 の一般化となっている。
内容
ペトル=ダグラス=ノイマンの定理の主張は以下のとおりである[ 5] [ 8] [ 9] 。
頂角が
2k π /n で(
k は
1 ≤ k ≤ n - 2 を満たす整数)
底辺 をn角形
A 0 のそれぞれの辺とする
二等辺三角形 を作る。これら二等辺三角形の頂点から成るn角形
A 1 に対しても同様に頂角が
2m π /n である(
m は
1 ≤ m ≤ n - 2 ,
m ≠k を満たす整数)二等辺三角形を作る。このような過程を
n −2回くり返してn角形
A 0 , A 1 , A 2 ,..., A n -2を作成する。 ただし、
n −2回の間に、
1 ≤ k ≤ n - 2 を満たす、すべての
整数 k が(順序は無関係に)用いられるとする。このとき
A 0 , A 1 , A 2 ,..., A n -2の
幾何中心 はすべて一致し、さらに
A n -2は
正n角形 となる。
三角形の場合
ペトル=ダグラス=ノイマンの定理の系 、ナポレオンの定理の図解
n = 3 とすることで、1 ≤ k ≤ n - 2 を満たす整数は1のみである。つまり任意の三角形 のそれぞれの辺上に頂角120°の二等辺三角形を作ったとき、それら頂点からなる三角形であるナポレオンの三角形 と呼ばれる正三角形 の中心が、元の三角形の重心 と一致する。これはナポレオンの定理 である。
四角形の場合
四角形 の場合、n = 4 なのでk は1,2である。したがって二等辺三角形の頂角は以下のようになる。
(
2
×
1
×
π
)
4
=
π
2
=
90
∘
(
k
=
1
)
{\displaystyle {\frac {(2\times 1\times \pi )}{4}}={\frac {\pi }{2}}=90^{\circ }\quad (k=1)}
(
2
×
2
×
π
)
4
=
π
=
180
∘
(
k
=
2
)
{\displaystyle {\frac {(2\times 2\times \pi )}{4}}=\pi =180^{\circ }\quad (k=2)}
ペトル=ダグラス=ノイマンの定理によれば四角形A 2 は正方形 である。k = 1, 2 の順序によって、二つの方法でA 2 を作成できる。ただし頂角πの二等辺三角形の頂点は底辺の中点 とする。
A1 をπ/2、A2 をπとした場合の作図
A 1 を、頂角π /2 かつ、四角形A 0 の辺を底辺とする二等辺三角形の頂点が成す四角形とする。A 2 はA 1 の辺の中点が成す四角形で、正方形となる。
A 1 の頂点はA 0 のそれぞれ辺を一辺とする正方形の中心である。また、A 2 はA 1 のヴァリニョンの平行四辺形 であり、その同値 条件からA 1 は対角線 の長さが等しい且つ直交する四角形であることが分かる。すなわちこれは、ヴァン・オーベルの定理 である。
A1 をπ、A2 をπ/2とした場合の作図
A 1 は四角形A 0 のヴァリニョンの平行四辺形である。ペトル=ダグラス=ノイマンの定理よりA 2 をA 1 のそれぞれの辺を底辺とする、頂角π /2 の三角形の頂点が成す四角形は正方形である。すなわちこれは、テボーの問題I である。
四角形におけるペトル=ダグラス=ノイマンの定理の画像
A 0 =ABCD ,A 1 =EFGH ,A 2 =PQRS 。
A 1 , A 2 の頂角はそれぞれπ /2 , π 。
A 0 =ABCD ,A 1 =EFGH ,A 2 =PQRS 。
A 1 , A 2 の頂角はそれぞれπ , π /2 。
A 0 が自己交叉し、
A 1 , A 2 の頂角がそれぞれπ /2 , π である場合。
A 0 が自己交叉し、
A 1 , A 2 の頂角がそれぞれπ , π /2 である場合。
五角形の場合
A 0 をABCDE とする。A 1 (=FGHIJ )が72°、 A 2 (= KLMNO )が144°、A 3 (=PQRST )が216°の頂角から成る場合のペトル=ダグラス=ノイマンの定理
五角形 においては、n = 5 よりk = 1, 2, 3 で二等辺三角形の頂角は以下のようになる。
(
2
×
1
×
π
)
5
=
2
π
5
=
72
∘
(
k
=
1
)
{\displaystyle {\frac {(2\times 1\times \pi )}{5}}={\frac {2\pi }{5}}=72^{\circ }\quad (k=1)}
(
2
×
2
×
π
)
5
=
4
π
5
=
144
∘
(
k
=
2
)
{\displaystyle {\frac {(2\times 2\times \pi )}{5}}={\frac {4\pi }{5}}=144^{\circ }\quad (k=2)}
(
2
×
3
×
π
)
5
=
6
π
5
=
216
∘
(
k
=
3
)
{\displaystyle {\frac {(2\times 3\times \pi )}{5}}={\frac {6\pi }{5}}=216^{\circ }\quad (k=3)}
ペトル=ダグラス=ノイマンの定理によれば、 A 3 は正五角形 である。3つの角の順序によって下の表の様に6つの正五角形ができる。
数
A1 の頂角
A2 の頂角
A3 の頂角
1
72°
144°
216°
2
72°
216°
144°
3
144°
72°
216°
4
144°
216°
72°
5
216°
72°
144°
6
216°
144°
72°
定理の証明
この定理の証明はn角形の頂点を複素数 で表すことから始まる[ 4] [ 7] [ 10] 。 複素n 次元空間 の列ベクトル でn角形Aを以下の様に表す。
A
=
(
a
1
a
2
⋮
a
n
)
{\displaystyle A={\begin{pmatrix}a_{1}\\a_{2}\\\vdots \\a_{n}\end{pmatrix}}}
多角形B をAのそれぞれの辺を底辺とする頂角θ の二等辺三角形の頂点の成すn角形として、以下の様に置く。
B
=
(
b
1
b
2
⋮
b
n
)
{\displaystyle B={\begin{pmatrix}b_{1}\\b_{2}\\\vdots \\b_{n}\end{pmatrix}}}
ここでi を虚数単位 、eをネイピア数 として、α =eiθ とおくと
α
(
a
r
−
b
r
)
=
a
r
+
1
−
b
r
{\displaystyle \alpha (a_{r}-b_{r})=a_{r+1}-b_{r}}
が成り立つので
b
r
=
(
1
−
α
)
−
1
(
a
r
+
1
−
α
a
r
)
{\displaystyle b_{r}=(1-\alpha )^{-1}(a_{r+1}-\alpha a_{r})}
を得る。a r をa r +1 に変換する行列、線型作用素 をS :C n → C n とする(a n +1 =a 1 とする)。またI をn ×n の単位行列 としてB を以下のように表せる。
B
=
(
1
−
α
)
−
1
(
S
−
α
I
)
A
{\displaystyle B=(1-\alpha )^{-1}(S-\alpha I)A}
つまりj番目の過程で得られる多角形A j +1 がA j と以下の関係にあることを意味する。
A
j
+
1
=
(
1
−
ω
σ
j
)
−
1
(
S
−
ω
σ
j
I
)
A
j
…
(
1
)
{\displaystyle A_{j+1}=(1-\omega ^{\sigma _{j}})^{-1}(S-\omega ^{\sigma _{j}}I)A_{j}\quad \ldots (1)}
ここでω =exp(2i π /n ) は1の原始n乗根 で、σ j は整数列(1,2,...,n -2) の j 番目の項である。
下記のように、A 0 からすべての作用素 を掛け合わせたものは、行列S - ω j I が巡回行列 であるため、積 は順列σ の順序に依らない。
∏
j
=
1
n
−
2
(
1
−
ω
j
)
−
1
(
S
−
ω
j
I
)
{\displaystyle \prod _{j=1}^{n-2}(1-\omega ^{j})^{-1}(S-\omega ^{j}I)}
多角形P =(p 1 ,p 2 , ..., p n ) が正多角形 であることを示すには、P の辺が隣の辺をπ (n - 2)/n で回転したものであること、つまり
p
r
+
1
−
p
r
=
ω
(
p
r
+
2
−
p
r
+
1
)
{\displaystyle p_{r+1}-p_{r}=\omega (p_{r+2}-p_{r+1})}
を示さなければならない。
この条件は以下の様にまとめられる。
(
S
−
I
)
(
I
−
ω
S
)
P
=
0
{\displaystyle (S-I)(I-\omega S)P=0}
または、
(
S
−
I
)
(
S
−
ω
n
−
1
I
)
P
=
0
(
∵
ω
n
=
1
)
{\displaystyle (S-I)(S-\omega ^{n-1}I)P=0\quad (\because \omega ^{n}=1)}
A n -2 が正多角形であることは、次のような計算を施すことで示すことができる。
(
S
−
I
)
(
S
−
ω
n
−
1
I
)
A
n
−
2
{\displaystyle (S-I)(S-\omega ^{n-1}I)A_{n-2}}
=
(
S
−
I
)
(
S
−
ω
n
−
1
I
)
(
1
−
ω
)
−
1
(
S
−
ω
I
)
(
1
−
ω
2
)
−
1
(
S
−
ω
2
I
)
…
(
1
−
ω
n
−
2
)
−
1
(
S
−
ω
n
−
2
I
)
A
0
{\displaystyle =(S-I)(S-\omega ^{n-1}I)(1-\omega )^{-1}(S-\omega I)(1-\omega ^{2})^{-1}(S-\omega ^{2}I)\ldots (1-\omega ^{n-2})^{-1}(S-\omega ^{n-2}I)A_{0}}
=
∏
j
=
1
n
−
2
(
(
1
−
ω
j
)
−
1
)
⋅
∏
j
=
0
n
−
1
(
(
S
−
ω
j
I
)
)
⋅
A
0
{\displaystyle =\prod _{j=1}^{n-2}{\Bigl (}(1-\omega ^{j})^{-1}{\Bigr )}\cdot \prod _{j=0}^{n-1}{\Bigl (}(S-\omega ^{j}I){\Bigr )}\cdot A_{0}}
=
∏
j
=
1
n
−
2
(
(
1
−
ω
j
)
−
1
)
⋅
(
S
n
−
I
)
A
0
{\displaystyle =\prod _{j=1}^{n-2}{\Bigl (}(1-\omega ^{j})^{-1}{\Bigr )}\cdot (S^{n}-I)A_{0}}
=
0
(
∵
S
n
=
I
)
{\displaystyle =0\quad (\because S^{n}=I)}
幾何中心 c A が一致する事を示すには、すべての頂点の相加平均 を求めればよい。Aをn個の成分をもつベクトルとして、幾何中心を複素 内積 によって表すことを考えると、E :=(1/n ) (1, 1, ..., 1) として
c
A
=
E
A
{\displaystyle c_{A}=EA}
である。式(1)の両辺にE をかけると、
c
A
j
+
1
=
E
A
j
+
1
=
(
1
−
ω
σ
j
)
−
1
E
(
S
−
ω
σ
j
I
)
A
j
=
(
1
−
ω
σ
j
)
−
1
(
1
−
ω
σ
j
)
E
A
j
=
E
A
j
=
c
A
j
{\displaystyle c_{A_{j+1}}=EA_{j+1}=(1-\omega ^{\sigma _{j}})^{-1}E(S-\omega ^{\sigma _{j}}I)A_{j}=(1-\omega ^{\sigma _{j}})^{-1}(1-\omega ^{\sigma _{j}})EA_{j}=EA_{j}=c_{A_{j}}}
を得る。したがってすべての幾何中心は一致する。
出典
外部リンク