プラジカンテル
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IUPAC命名法による物質名 |
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- (RS)-2-(Cyclohexanecarbonyl)-2,3,6,7-tetrahydro-1H-pyrazino[2,1-a]isoquinolin-4(11bH)-one
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臨床データ |
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胎児危険度分類 |
- Only when clearly needed (lack of sufficient data in humans)
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法的規制 |
- U.S.: Rx-only (human use), over-the-counter (veterinary use)[1]
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薬物動態データ |
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生物学的利用能 | 比較的小さい |
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代謝 | hepatic |
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半減期 | 0.8~1.5時間 (主な代謝物は4~5時間) |
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排泄 | 主に尿 |
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データベースID |
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CAS番号
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55268-74-1 |
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ATCコード |
P02BA01 (WHO) QP52AA01 (WHO) |
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PubChem |
CID: 4891 |
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DrugBank |
EXPT02728 |
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ChemSpider |
4722 |
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UNII |
6490C9U457 |
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KEGG |
D00471 |
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ChEMBL |
CHEMBL976 |
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化学的データ |
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化学式 | C19H24N2O2 |
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分子量 | 312.411 |
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- O=C4N2C(c1c(cccc1)CC2)CN(C(=O)C3CCCCC3)C4
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- InChI=1S/C19H24N2O2/c22-18-13-20(19(23)15-7-2-1-3-8-15)12-17-16-9-5-4-6-14(16)10-11-21(17)18/h4-6,9,15,17H,1-3,7-8,10-13H2
- Key:FSVJFNAIGNNGKK-UHFFFAOYSA-N
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プラジカンテル (praziquantel) は、吸虫駆除剤の一つである。代表的な商品名はビルトリシドである。化学式はC19H24N2O2で、分子量は312.41 g/molである。
歴史
プラジカンテルはドイツの製薬企業バイエルの寄生虫学グループにより、1970年代中頃に開発された。世界保健機関は本薬を、医薬品の入手が困難な開発途上国で最小限必要な医薬品として、WHO必須医薬品モデル・リストの1つに採用している。
薬物動態
プラジカンテルは消化器系によって、よく(80%程度)吸収される。初回通過代謝でほとんどが代謝され、少量が体循環へと移行する。そのため血漿中半減期は短く、正常な腎・肝機能をもつ成人で、0.8-1.5時間である(代謝産物は4-5時間)。肝機能に重篤な障害をもつ患者 (Child-Pugh B/C) では、半減期は3-8時間となる。プラジカンテルと代謝産物は尿として排泄され、経口服薬から24時間以内に70-80%が尿中に検出される。このうち代謝されずに排出されるのは0.1%未満である。プラジカンテルはシトクロムP4503A4により代謝される。Cyp450 3A4に効果をもつ薬剤(フェニトイン、リファンピシン、アゾール系抗真菌薬など)は、プラジカンテルの効果にも影響を及ぼす。
プラジカンテルは住血吸虫症に大きな効果をもつ。カーター・センター (Carter Center) によると、6か月間プラジカンテルを服用することで、住血吸虫による器官の損傷の90%が治癒したとする研究があるという[1]。
作用機序
正確な作用機序は現在のところ理解されていないものの、プラジカンテルは寄生虫(住血吸虫)細胞膜のカルシウムイオン透過性を上昇させる。このことで寄生虫は収縮し、麻痺に至る。寄生虫の残骸は除去されて、循環系に移行するか、免疫系によって破壊される(ファゴサイトーシス)。他の作用機序として、虫卵の分解・障害がみられる寄生虫もある。
プラジカンテルの別の作用機序として可能性があるのが、培養寄生虫におけるアデノシン取り込みの阻害である。このことは、住血吸虫や、プラジカンテルが同様に効果をもつ条虫類や多包条虫などが、プリンを合成できないことと関連している可能性がある。
効能・効果
肝吸虫症、肺吸虫症、横川吸虫症
(日本住血吸虫症にも有用であるが、日本では住血吸虫症に対する効能は承認されていない)
副作用
多くの作用・副作用は、寄生虫が死ぬときに内容物が放出され、宿主の免疫系が活性化されることにより生じる。一般に、寄生虫の負荷が大きいほど、副作用も頻繁に生じ、かつ大きくなる傾向がある。
- 中枢神経系
- 頻繁に生じるのはめまい、頭痛、倦怠感である。眠気や疲労感、空間識失調を生じることもある。ほぼ全ての患者が、寄生虫が駆除されるのに伴い、中枢神経系内での脳嚢尾虫症を経験する(頭痛、既往症の悪化、クモ膜炎、髄膜炎など)。これらの副作用により死亡することもある。脳嚢尾虫症患者は、治療のあいだは入院することが望ましい。副作用は副腎皮質ホルモンの投与により緩和される。
- 消化系
- 約90%の患者が腹痛を感じ、吐き気や嘔吐を伴うこともある。下痢が生じ、疝痛を伴う場合もある。下痢は発汗、発熱、血便を伴う場合がある。
- 肝臓
- 肝臓の酵素(AST、ALT)の無症状的・一過的な上昇が、しばしば生じる(最大で27%程度)。肝障害による副作用は、いまのところ報告されていない。
- 過敏症
- じんましん、発疹、瘙痒感、白血球中の好酸球増加を認めることがある。
- その他
- 下部背部痛、筋肉痛、関節痛、発熱、発汗、多種の不整脈、低血圧など。
服用
医師の指示により、異なるスケジュールで服用される。1錠だけ、あるいは1錠を分割して1日服用するだけで充分な場合もある。
併用禁忌
リファンピシン(結核症、ハンセン病の治療薬)と併用すると本剤の血中濃度が極度に低下する。
商品名
- ビルトリシド(バイエル) 600mg錠(ヒト用)
- Cesol錠
- Cysticide錠
- プロフェンダー(バイエル)
- ドロンシット(バイエル)
- ブロードライン(メリアル) 獣医用
- D-ワーム (Farunum) 獣医用
- Tape Worm Tabs (Trade Winds) 獣医用
- Cestoved (Vedco) 錠・注射液 獣医用
- PraziPro (Hikari) 水槽用
脚注