ブレイム・カナダブレイム・カナダ(Blame Canada)は1999年のアメリカ映画『サウスパーク/無修正映画版』の挿入歌である。同年のアカデミー賞の主題歌賞にノミネートされた。作曲はトレイ・パーカーとマーク・シャイマンである。
『サウスパーク』劇中の架空の町「サウスパーク」では、子どもたちがカナダ映画『テレンス&フィリップ:アス・オブ・ファイヤー』(Terrance and Phillip: Asses of Fire)を観てから、その映画の真似をするようになった。カイル(4人の主人公のひとり)の母シーラ(声優メアリー・ケイ・バーグマン)は、これを問題視し、PTAを率いてカナダの責任を追及し、批難するため、「ブレイム・カナダ」を歌う。 保護者たちは、自分の子どもたちが「テレンス&フィリップ」を視聴することを許しておきながら、子どもたちの問題行動の責任が自分たちにあるとは認めなかった。「ブレイム・カナダ」は責任転嫁(en:Scapegoating)と保護者たちが子供を「大衆文化の消費」に晒していることを揶揄した内容になっている[1]。 アカデミー賞ノミネート「ブレイム・カナダ」は1999年のアカデミー賞の主題歌賞にノミネートされた。 ノミネートされると論争が巻き起こった。というのも、ノミネート曲は授賞式のTV放送で披露されることになっているのだが、この曲の歌詞には、連邦通信委員会がゴールデンアワー帯での使用を禁じている「ファック(fuck)」という放送禁止用語があったからである。 懸念はほかにもあった。歌詞のなかには、有名なカナダ人歌手のアン・マレーを「ビッチ(bitch)」と呼ぶ部分があった。しかしマレー本人は冗談だから気にしないとの旨を表明し、この部分はそのまま歌われた。(マレー自身もアカデミー賞授賞式に招待されたが、先約があって出席を辞退している。) アカデミー賞授賞式当日、「ブレイム・カナダ」はコメディアンのロビン・ウィリアムズがコーラス隊を従えて歌うことになった。ロビン・ウィリアムズは、授賞式当日は口にダクトテープを貼り付けた姿で登場し、『サウスパーク』主要登場人物の一人であるケニーのようなスピーチを行った。その後、テープをはがすとスタンの決め台詞である「Oh my god! They killed Kenny!(なんてこった!ケニーが殺されちゃった!)」を演じてから歌に入った[2]。 ウィリアムズは、女優のマーガレット・トルードーや歌手ブライアン・アダムス(どちらもカナダ人)をジョークのネタにしながら、劇中の他の挿入歌である「ラ・レジスタンス」の歌詞も採り入れて歌った[2]。また、ウィリアムズは歌手のセリーヌ・ディオン(カナダ人)にも言及した。問題の部分では、サウスパークの住人に扮したバックコーラス隊が「fuck」に差し掛かったところで息を呑み、ウィリアムズはその瞬間にバックコーラス隊を振り返る、という演出で「fuck」を回避した。 偶然にも、カナダでのTV中継では、ロビン・ウィリアムズのパフォーマンス前後にモルソン・カナディアン・ビールのCM「アイ・アム・カナディアン」が流れた。(このCMはカナダ人に対するステレオタイプなイメージに対抗して作られ、カナダ人のナショナリズムに訴えるものとしてよく知られたCMだった。) アカデミー主題歌賞は、フィル・コリンズの「You'll Be in My Heart」(『ターザン』主題歌)が受賞したが、『サウスパーク』では翌年これをパロディにした「You'll Be in Me」という曲を「Timmy 2000」というエピソード(第4シーズン第3話)で用いた。この回でコリンズは常にオスカー像を抱いた敵役として登場、最後はオスカー像が尻に刺さる。 オリジナル声優の自殺授賞式当日に歌を披露するのは、オリジナル声優ではなく、代役(ロビン・ウィリアムズ)であることが決まったが、劇中でこの歌を担当した声優のメアリー・ケイ・バーグマンは、授賞式の1ヶ月前に拳銃自殺した。(詳細はメアリー・ケイ・バーグマン#拳銃自殺を参照。) 元カナダ首相のコメントカナダ元首相で、領事(当時)のキム・キャンベルはこの曲について尋ねられて、「ブレイム・カナダ」は明らかに風刺の効いたジョークであり、実際に母国が侮辱されたわけではないから、気にしない、と述べた。この点については、歌詞の最後の部分にも表れている。 脚注出典
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