ブラックホール (1979年の映画)
『ブラックホール』(原題: The Black Hole)は、1979年のアメリカのSF映画。 1980年開催の第52回アカデミー賞で、撮影賞と視覚効果賞にノミネートされた[4]。日本公開時のキャッチコピーは「もうすぐ宇宙は発狂する。」[5][6]。日本版のイメージソングは須藤薫が歌った「THE BLACK HOLE」[5]。 ストーリー
人類の居住可能な惑星を探して、何カ月もの間宇宙を旅していたNASAの宇宙探査船U.S.S.パロミノ号。クルーは船長のホランド、副長のチャールズ、科学者のデュラントとケイト、ジャーナリストのハリーの5人、そして小型ロボットのV.I.N.CENT.(ヴィンセント)。疲れ果てた乗組員を乗せて地球への帰路を急いでいた船は、史上最大級のブラックホールに遭遇する。 ブラックホールのすぐ近くには、20年前に消息を絶ったアメリカの超大型宇宙船シグナス号の姿があった。シグナス号は巨大な引力を持つブラックホールの間近にいながらも、それに引き込まれずに宇宙空間を平然と漂っていた。ブラックホールの引力に翻弄されながらも、なんとかシグナス号の船内に侵入したパロミノ号の一行。彼らの前に現れたのは、銀色の仮面と黒装束に身を包んだヒューマノイド達と、不気味な赤いロボットマクシミリアン、そして天才科学者にしてシグナス号の唯一の生き残り、ラインハート博士だった。 一行を出迎えたラインハート博士は、シグナス号で起きたこれまでの出来事を語った。今から20年前、シグナス号が流星群によって破損した際に88名の乗組員たちは緊急用シャトルで脱出。ラインハート博士と共に残ったケイト博士の父親はすでに死亡。ラインハート博士は反重力装置と、博士の手足となって働くヒューマノイドやマクシミリアンを開発し、一人ブラックホールの研究を続けていたのだった。 船内を探検していたV.I.N.CENT.は、旧式のおんぼろロボットBO.B.(ボブ)に出会い、20年前の恐ろしい真実を知る。それは、ブラックホールを探検するという危険な探求心のために、ラインハートがケイト博士の父親を殺害、残った乗組員たちをヒューマノイドに改造し、シグナス号を乗っとったというものだった。V.I.N.CENT.からその話を聞かされた乗組員はパロミノ号で脱出しようとするが、デュラント博士はマクシミリアンに殺害され、ケイト博士はラインハートの命令で病院(ヒューマノイドの製造室)へと連行されヒューマノイドに改造されそうになったが、手術開始直後にホランドらによって救出された。 船長たちは脱出を急いだものの、ハリーにパロミノ号を乗っ取られてしまい、その船もシグナス号からの攻撃で破壊されてしまう。そこでブラックホール至近調査用の探査船で脱出を図ろうとするが、ラインハートの命令を受けたロボット警備兵と銃撃戦となり、その行く手を阻まれた。そこに流星群が迫り、シグナス号を直撃。シグナス号は徐々に船体を破損させながらブラックホールの超重力に分解され始め、動力炉までが破壊されて航行不能に陥ってしまった。脱出しようとしたラインハートは船の部品の下敷きになり動けなくなる。 立ちふさがるマクシミリアンをかろうじて倒したシグナス号の乗員たちは、ラインハートが解明したブラックホール突破用のコースにプログラミングされた小型探査船に乗り込んだ。 一方、シグナス号に閉じ込められたラインハートは、宇宙空間を漂っており、同じく宇宙空間に放り出されたマクシミリアンと同一化してしまう。そこは地獄をイメージする炎の燃えさかる謎の空間であった。 小型探索船に乗り込んだ一行は、重力圏を離脱するのではなく、ラインハートがセッティングしたブラックホール内部へのコースに突入して行くことになる。 登場キャラクター
キャスト
製作概要製作映画が企画されたのは1974年のことで、当初の案は数百人を乗せた巨大な宇宙船が超新星爆発に遭遇するというSF版「ポセイドン・アドベンチャー」とも言えるパニック映画だった[7]。脚本を修正するうちに超新星はブラックホールに代わり、ディズニー映画らしく子供や動物を登場させるなどアイデアは二転三転した。一時は計画を中断したが、1976年に最初から脚本をやり直したことでようやくストーリーがまとまった。 1976年の時点で、タイトルは ”Space Probe One”(スペース・プローブ・ワン)、船名は「ケンタウルス号」だった。しかしゲイリー・ネルソン監督がこのタイトルが気に入らなかったためディズニー社内でアンケートを募り、最多数の「ブラックホール」に決定した[8]。船名もブラックホールが初めて発見されたシグナス(はくちょう座)の方が相応しいという意見があり変更した[9]。 シグナス号の模型撮影に使用したシグナス号は全長3.6メートル、重量約80キロ。10万ドルの予算で15人ほどのスタッフが1年がかりで2隻を製作した。骨組みのほとんどが真鍮製でアクリルパイプも多用している。船体中央には半透明の樹脂製の箱が並べられ、その中に約150個の車のポジション球を点灯した。これ以外にもクローズアップシーンの撮影用に部分的な巨大な模型がいくつか作られた。 完成したシグナス号を撮影スタジオに運搬する際、通常は木箱に緩衝材を詰めて梱包するのだが、いつものやり方では無数の突起物や繊細な骨組みが壊れてしまう恐れがあり、試行錯誤の末に何本ものストラップを用いてハンモックのように船体を吊るすことにした[10]。 1隻はクライマックスシーンの撮影で完全に破壊され処分した。もう1隻はニューヨーク近代美術館にしばらく展示されたあと木箱に入れてディズニーの小道具倉庫に保管したが、あるときフォークリフトが接触して落下しバラバラに崩壊してしまった。破片は従業員たちが記念に持ち帰ったという。 特殊効果ミニチュアを撮影する機材は「スター・ウォーズ」(1977)のために作られた「ダイクストラフレックス[11]」を借りる予定だったが、ILMが提示する条件とレンタル価格で折り合いが付かず断念した。ディズニーは100万ドルを費やして独自のA.C.E.S.(Automated Camera Effects System)を考案するのだが、結果的にダイクストラフレックスより優れたシステムが出来上がった。 マットペインティングは後に「ディズニーレジェンド」の称号を与えられるピーター・エレンショーに依頼し、150枚を超えるマット画を使用した。船長室に飾ってある絵は彼が描いたシグナス号の初期のコンセプト画である[12]。 ブラックホールの映像は透明なアクリル板で作った直径1.8mの円形の水槽の中で渦巻きを作り、そこに様々な色の塗料を流し込んで光を当て、水槽の下から撮影した[13]。 船内のシーンは全編を通して無重力状態のように描く予定だったが、実際に試してみると技術的に非常に難しく俳優への負担も大きいことがわかり、急きょ脚本を書き直してパロミノ号のシーンのみとなった[14]。 ソフト化日本ではVHS(ポニー版・バンダイ版)とLD(レーザーディスク版)で字幕版で発売され、現在DVD化はされていない。VHS版およびLD版、共に画面左右両端をトリミング・カットした4:3画面で収録されている(劇場公開されたオリジナルフィルムは、16:9シネマスコープサイズ)。ちなみにアメリカではDVD化されている。 リメイク2009年11月に、本作のリメイク企画が進行中であることを発表。ジョセフ・コシンスキー監督、ショーン・ベイリーをプロデューサーに迎え、ウォルト・ディズニー配給で「2012年公開予定」とされ、2011年にはヘイデン・パネッティーアの出演が噂されていたが、その後2012年には公開されず、延期になったのか中止になったのかも不明となっている。 脚注
外部リンク |