フレアスタックフレアスタック(flare stack)は原油採掘施設、ガス処理施設、製油所などで出る余剰ガスを無害化するために焼却した際に出る炎、また、その手法である。 概要石油を精製する製油所などの生産・処理プラントでは原油を熱分解してガソリンや軽油を作る際にメタンなどの炭化水素ガスが発生する。しかし、これらのような余剰ガスは、そのまま大気中に放散すると、臭いも強く環境汚染につながり、特に硫化水素のような有毒ガスを含むこともあり危険なので、生産・処理施設から十分安全な距離に設置したフレアスタックに導き、煙突の先で燃やすことである程度無害化している。 製油所の各プロセスで通常運転時に発生する可燃性ガスはエネルギーの有効利用の観点からできる限りの回収・リユースがなされるが、プロセスの起動時や定期保守点検のための停止時、あるいは異常時・非常時の緊急停止時はこの限りでない。これらの操作をする際の膨大な可燃性液体とガスの混合物を安全に運転系統から引き抜くにはブローダウンタンクだけでは足らず、可燃性ガスを素早くかつ安全に処理するフレアスタックも必要である。また海上にある油田・ガス田では設置スペースが狭隘であるため有毒な硫化水素などが含まれる可燃性ガスのリユースが限定されるため、フレアスタックが広く用いられてきた。しかしながら可採年数の延長技術として地層への廃ガス圧入が広く実施されるようになり、海上油田のシンボル的存在であったフレアスタック(ガスフレア)も非常時のみの使用に留まりつつある。 フレアスタックには通常、処理する可燃性ガスと空気との混和撹拌、黒煙防止と腐食性物質の洗浄を兼ねて頂部にスチーム(水蒸気)が吹き込まれる。黒煙の正体は、ガスの不完全燃焼によるカーボンの”燃え残り”であり、炭素原子が多数連なった重質可燃性ガスではどうしても空気不足で黒煙が生じやすくなる。スチームを吹き込むことにより黒煙中の炭素と水蒸気との水性ガス反応を積極的に起こさせることで黒煙を減少させることができる[1](pp129‐130)。 フレアスタックの歴史
その他通常のフレアスタックが細長い塔状になっている理由は、狭い敷地でスペースを活用するとともに、燃焼ガスの輻射熱を高さ方向の距離で軽減させ、かつ大気中に十分拡散するようにするためである[1](pp129‐130)。しかし、その反面、輻射熱・騒音・可視炎といった周辺環境への影響を、より広範囲に及ぼすという欠点がある。一方、バーンピットのようにガスの輻射熱を水平距離方向で軽減させる方法もある。 フレアスタックは処分する可燃性ガスを量の多少にかかわらず安全に燃焼させるものであるため、常にパイロットバーナー(種火)が着火しており、たとえ燃焼させるガスの供給が一時的に止まっても処理ガスの燃焼が中断しないようになっている。また、燃焼の炎が逆火(炎が装置や施設内に逆流すること)しないように、逆火を防止するフレーム・アレスター(flame arrester)もしくは水封によりプロセスへの逆流を防ぐシールドラムが付いている[1](p128)。またフレアスタックへ導く配管の手前には液体を分離するためのセパレータドラムを置き液体を分離してガスだけをフレアスタックに送り[2](pp150‐152)、かつフレアスタックへのガス流量が過大にならないようオリフィスにより流量を制限する[2](pp150‐152)。 もし万が一パイロットバーナーの火が消えた場合は何らかの手段で再着火させる。着火には高信頼性のスパークプラグ点火装置をフレアスタック塔頂部に設けるか、パイロットバーナー用の配管を空気予混合として低部でスパークプラグ点火または手動で点火し、フレアスタック頂部のパイロットバーナーへ火炎を誘導する[2]。日本国外においては照明弾を発射する(フレアピストル)をフレアスタック上の放出ガスに向けて発射して着火する手法をとることもあるが[2](p152)[3]、混雑した石油化学プラントにおいては不適当な点火方法であり通常では用いられない[2](p152)。 他に停電などで化学プラント反応系内の圧力を緊急に下げる必要がある場合、安全弁とガス処理装置だけで賄え切れない場合にも反応系内部のガスをフレアスタックに導き、ガスを燃焼させて放出することもある。また、製油所や化学プラントにおけるスタートアップ時・停止時のように、大量の余剰ガスを放出させる必要がある場合にも使われる[4][5]。 フレアスタックの種類
類似施設
脚注
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