フューチャー・イズ・ワイルド
『フューチャー・イズ・ワイルド』(原題: The Future is Wild)は、2002年にイギリスで製作されたテレビ番組、及びそれに基づいた書籍[5]。『アフターマン』の著者ドゥーガル・ディクソンが中心となり、何十人もの著名な科学者が5年以上に亘る調査研究を行い、未来の地球でどんな進化が起こりどのような生物が現れるか予想し、それらをコンピュータグラフィックスによる画像で表現した作品である。全13エピソード。 この作品は日本でも大きな人気を得ている。書籍の日本語版は2004年に初めて発行され、コミック版も発売された。テレビ版も同年1月に『オドロキ!これが未来の生き物だ』の題で3エピソードに分けてNHK教育で初放送され、後に『フューチャー・イズ・ワイルド』の題で4巻分のノーカット完全版DVDが発売された。また、ディスカバリーチャンネルにおいても The Future is Wild のタイトルで放送された。2005年には新江ノ島水族館で特別展や原作者を招いてのイベントなどが開かれたほか、登場する生物のフィギュア化もなされている。 2007年には本作を原作とする同名のアニメ作品 (en) がディスカバリーキッズで放送された[6]が、日本では放送されていない。 内容基本的には『アフターマン』と同様、人類をはじめとする現在の生物がほぼ絶滅することによって生態的地位(ニッチ)の空白が生じ、生き残った生物がそれを埋める方向に進化して新しい生物種が現れるというものである。 全体は500万年後・1億年後・2億年後の3つの時代に分れており、後の時代になるほど現在の生物相からかけ離れた姿になっていく。各時代ごとに4つ、全部で12の特徴的な地域を取り上げ、その地域での生態系を描いている[7]。テレビ版は全13回で、第1回を「後の各回についての簡単な概略 (Welcome to the Future)」とし、1話ごとに1つの生態系を紹介している。 日本語によるNHKの番組では「500万年後 氷の世界」「1億年後 しゃく熱の世界」「2億年後 超巨大大陸の出現」の三部作に分けられている[3]。 進化する地球冒頭ではプレートテクトニクスと進化について述べ、地球生物の誕生から人類の時代に至るまでの歴史の中に見られるいくつかのパターンを説明している。これらのパターンは人類絶滅後においても繰り返されることになる[8]。テレビ版では、地球を離れた人類が遺した衛星の視点(NHK教育にて放映時)、あるいは、地球を離れた人類が、故郷に送り込んだ探査機の視点(ディスカバリーチャンネルにて放映時)で捉えている。 500万年後の世界地球誕生以来最大級の氷期が500万年後の世界を襲っている。氷床は北半球の大部分を覆っており、北ヨーロッパは氷原と化している。寒冷乾燥化によって、豊かなアマゾンは草原へ、作物が豊富に収穫される北アメリカは砂漠へと変貌している。ヨーロッパ地中海は干上がり、海底の白い塩が残されている。陸上でも海洋でも生息地の多くが破壊され、生物達は寒冷適応を余儀なくされている[9]。 やがて氷河時代も終わり、地球は2000年かけてゆっくりと温暖化していく。寒冷な気候に適応していた生物の多くは滅び、新たな進化が始まる。 1億年後の世界人類のいた時代よりも温暖なため北極と南極に氷床は存在せず、海水面は100メートルも高く、地球表面の90%が海に沈み、現在の陸地の多くが水深20メートルほどの海に没している。高温多湿のため動植物にとっては育ちやすく、生物の多様化と大型化が顕著に見られるようになった時代である。ベンガル地方は豊かな沼地に姿を変え、赤道近くに移動した南極大陸には熱帯雨林が形成されている。現在のロシアにあたる極東地域では、オーストラリアと北アメリカとアジアが衝突したことにより世界最高峰の山脈が形成されている。ヨーロッパとアジアは分断され、間には広大な浅海が横たわっている[3][10]。 火山活動は更に激しさを増し、地球は火山灰の雲と酸性雨に包まれる。地球史上何度目かの大量絶滅が起きるが、それでも生物の進化は続いていく。 2億年後の世界全ての大陸がほぼ一塊となって第二パンゲアを形成している。海から遠い内陸部は極端に乾燥し、砂漠に適応した動植物が僅かに見られるだけである。パンゲア大陸の北部の海に面した地域は多湿で広大な森林が広がっている生命の宝庫であるが、北西部の海沿いには山脈が聳えており海洋上の悪天候がさえぎられてやはり砂漠が広がっている。大陸が1つに纏まったことで海は1個の地球海になり、巨大な海流が発生している。魚類は大部分が絶滅してプランクトンの子孫が支配的になっている[3][11]。鳥類は既に絶滅している[12]。 第二パンゲアはいずれ分裂する。生物はその変化にも対応し、また新たな種を生み出していくだろう。 登場する生物以下、描かれている地域と生物を列挙する[7]。カッコ内は英語版のエピソードタイトルを意味する。 →詳細は「フューチャー・イズ・ワイルドの生物一覧」を参照
製作『フューチャー・イズ・ワイルド』はドゥーガル・ディクソンとジョン・アダムスの2名が中心となって製作した[13]。『フューチャー・イズ・ワイルド』では生物の進化という現象がテーマとして扱われており、架空生物を登場させて視聴者・読者の想像力を刺激し科学的原理を理解してもらう狙いがある。ディクソン曰くイギリスでも若者の科学離れの進行が指摘されており、彼は科学を学んで知識と創造力を育むことを推奨している[12]。 ディクソンによると、2億年後の世界が舞台の1つに選ばれたのはその時代に形成される超大陸の生物に彼が興味を惹かれたためである。彼の著書『アフターマン』の舞台となった5000万年後の世界は本作には登場しないが、彼は『アフターマン』の時代を『フューチャー・イズ・ワイルド』の1つの章として扱うことで違った楽しみ方ができると主張している[12]。各生物については、ガネットホエールについてはアシカやアザラシなど鰭脚類との類似性を指摘し、メガスクイドについては考案時にゾウを参考にしたと述べている。また、最も気に入っている生物はオーシャンフリッシュであり、絶滅した鳥類の生態的地位を飛翔性の魚類が埋めることについてエキサイティングだと語っている[12]。 『アフターマン』と同様に本作では人類は絶滅した設定であるが、ディクソンは人類が生き残る可能性を否定しておらず、本作で人類の絶滅が前提となっているのは人類の存在が他の生物に余りにも大きな影響を与えるため科学的な進化の予測が困難になるためである[12]。なお、ディクソンの著書『マンアフターマン』では進化した未来の人類が描かれるほか、『グリーンワールド』では人類が系外惑星に進出して環境を破壊し尽くす様子が描かれている。 出演者NHKにより発売されているDVDの情報に基づく[1]。
エピソードリスト
日本での放送
映像ソフト化
日本での展開書籍2004年と2005年にそれぞれダイヤモンド社から書籍版が出版された[21][22]。日本語版公式サイトでは回答することで毎月抽選で3名に書籍版2冊セットが当たるアンケートが実施されていた[17]。また、漫画アクション(双葉社)刊にて2006年2月21日号から2007年3月20日号まで[要出典]コミック版が不定期連載され、8編からなる単行本が2007年4月1日に発売された[23][24]。
その他2005年3月27日から4月27日まで、新江ノ島水族館でイベント『フューチャー・イズ・ワイルド・ワンダーランド』が開催された。記念写真コーナーやスタンプラリーがあったほか、予約者対象の未来生物体験教室も開かれた。体験教室には原作者であるドゥーガル・ディクソンとジョン・アダムス、特別講師として松井孝典が招待された[25]。 2006年7月17日にはフューチャーコレクションとしてフィギュアが登場し、全国のセブン-イレブンなどで発売された[17]。同年7月18日には携帯電話IP接続サービスのiモード上にて、戦略的ライフシミュレーションゲーム『KING of LIFE〜ダーウィンの誤算』というタイトルでゲームサイトが公開された[17]。 劇中に登場した生物のトラトンやメガスクイドなどは、全天周映画の「3Dワンダフルプラネット~絶滅!進化!地球アニマル図鑑~」にも登場している[1][26]。 脚注
外部リンク
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