フトシミフジクジラ (英:Splendid lanternshark、学名: Etmopterus splendidus )はカラスザメ科 に属するサメ の一種。日本 、台湾 [ 3] 、インドネシア などに分布する。100mより深い海に生息する。
IUCN は保全状況 について軽度懸念としている[ 1] 。
分類
1988年、 学術誌 日本魚類学雑誌 において、魚類学者 矢野和成 がEtmopterus splendidus の名で 記載 した[ 2] 。タイプ標本 は鹿児島県 下甑島 近辺水深210mから得られた24.7cmの雌。
形態
ほぼ全身に発光器 を持ち、特に腹部のものが強く光る。その様子が、2011年 に沖縄美ら海水族館 の研究チームが飼育していた個体を用いて観察された[ 4] 。
同属他種との違いとして、吻端から第1背鰭棘までの長さが棘から尾鰭上葉部までの長さより明らかに短いこと、鱗は非常に小さくて、棘状であり、体側面ではほとんど規則正しく配列しているが、頭部背面の眼間付近および腹部では明瞭に配列していないこと、生きている個体の体色は上方部の斑紋、尾鰭の斑紋は濃い藍色 をしていること、腹鰭上部の斑紋が後方で幅が広いこと等で区別できる[ 2] 。
眼球は発達していて、網膜神経節細胞 は概ね網膜を横切るように分布している[ 5] 。
体長は30cmに達する[ 6] 。
分布
日本では高知県沖[ 7] 、長崎県沖、鹿児島県下甑島沖で生息が確認されている。海外では台湾に生息が確認されており、インドネシアのジャワ島からも記録されている。
生態
他の多くのカラスザメ科 のサメと同様に、発光器を持つ。腹側の発光器がほかの部位の発光器よりも強く光ることから、捕食者から身を守るために自身の影を消し、姿をくらます、カウンターイルミネーション の効果があると考えられる[ 4] 。
眼球の神経細胞が概ね網膜を横切るように分布している事から捕食する生物のカウンターイルミネーションと 太陽光 を見分けるためだと考えられる[ 5] 。
深海に住むイカなどを捕食するとされる[ 6] 。
人との関わり
体はとても小さく、深海に住むことから人には害はない[ 6] 。IUCNは保全状況について情報不足としている[ 1] 。
脚注
^ a b c McCormack, C. & Valenti, S.V. (2009). "Etmopterus splendidus" . IUCN Red List of Threatened Species. Version 2014.3 . International Union for Conservation of Nature .
^ a b c Yano, K.(1988). “ A New Lanternshark Etmopterus splendidus from the East china sea and Java sea. Japanese Journal of Ichthyology Vol.34,NO.4 ,pp.421-pp.425 NAID 130003826269
^ Shoou-Jeng Joung, Che-Tsung Chen. “The occurrence of two lanternsharks of the genus Etmopterus (Squalidae) in Taiwan” . Japanese Journal of Ichthyology 39 (1): 17-23. http://bunken.org/pdf_store/isj/publication/pdf/39/391/39103.pdf .
^ a b “身を隠すため?光るサメ、撮影成功 沖縄の水族館チーム” . 朝日新聞 . オリジナル の2011年8月30日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110830001012/http://www.asahi.com/science/update/0816/TKY201108160198.html
^ a b Julien M. Claes, et.al. "Photon Hunting in the Twilight Zone: Visual Features of Mesopelagic Bioluminescent Sharks" (2014)
^ a b c Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2006). "Etmopterus splendidus " in FishBase . April 2006 version.
^ 三澤 遼ほか (2019). 標本および写真記録に基づいた高知県産サメ類チェックリスト . 板鰓類研究会報第55号. pp. 31-54