フェノキシエタノール Phenoxyethanol[ 1] [ 2] [ 3]
別称
Phenoxyethanol Ethylene glycol monophenyl ether Phenoxytolarosol Dowanol EP / EPH Protectol PE Emery 6705 Rose ether 1-Hydroxy-2-phenoxyethane β-hydroxyethyl phenyl ether Phenyl cellosolve
識別情報
CAS登録番号
122-99-6
PubChem
31236
ChemSpider
13848467
UNII
HIE492ZZ3T
ChEBI
ChEMBL
CHEMBL1229846
InChI=1S/C8H10O2/c9-6-7-10-8-4-2-1-3-5-8/h1-5,9H,6-7H2
Key: QCDWFXQBSFUVSP-UHFFFAOYSA-N
InChI=1/C8H10O2/c9-6-7-10-8-4-2-1-3-5-8/h1-5,9H,6-7H2
Key: QCDWFXQBSFUVSP-UHFFFAOYAU
特性
化学式
C8 H10 O2
モル質量
138.16 g mol−1
外観
無色の油状液体(常温常圧[ 注釈 1] )
匂い
バラのような芳香
密度
1.102 g/cm3
融点
-2 °C , 271 K, 28 °F
沸点
247 °C , 520 K, 477 °F
水 への溶解度
26 g/kg
溶解度
クロロホルム , アルカリ , ジエチルエーテル : 可溶
ピーナッツオイル への溶解度
微溶
オリーブ・オイル への溶解度
微溶
アセトン への溶解度
混和
エタノール への溶解度
混和
グリセリン への溶解度
混和
蒸気圧
0.001 kPa
熱伝導率
0.169 W/(m⋅K)
屈折率 (n D )
1.534 (20 ℃)
危険性
NFPA 704
引火点
121 °C (250 °F; 394 K)
半数致死量 LD50
2937 mg/kg(ラット雄、経口[ 4] )
関連する物質
関連物質
エチルフェニルエーテル
特記なき場合、データは常温 (25 °C )・常圧 (100 kPa) におけるものである。
フェノキシエタノール (英語 : phenoxyethanol )とは、エチレングリコール の水酸基の片方と、フェノール の水酸基とが、エーテル結合 をした構造の有機化合物 である。その構造からグリコールエーテル 、フェノールエーテル、芳香族アルコール に分類される。
名称
フェノキシエタノールは、フェニルセロソルブ (英語 : phenylcellosolve )の慣用名でも呼ばれる[ 5] 。これ以外にも、エチレングリコールに1分子のフェノールがエーテル結合した分子といった意味で、エチレングリコールモノフェニルエーテル と呼ばれる場合もある[ 5] 。ただし、IUPAC命名法 に従えば、エタノールの2位の炭素に結合している水素の1つがフェノキシ基に置換された化合物と考えて、2-フェノキシエタノール (2-phenoxyethanol)と呼ぶ。
用途
フェノキシエタノールは、ホルムアルデヒド を放出する防腐剤 の代用として使用され[ 6] 。日本及びEUでは、化粧品への使用濃度が1パーセントに制限されている[ 7] 。
また、ワクチンなどの医薬品・化粧品・染料・インク・樹脂・潤滑剤などのための防腐剤としても用いられる場合がある。その他のフェノキシエタノールの用途としては、塗料の防黴剤 [ 4] 、香料の保留剤 (英語版 ) 、防虫剤 、織物の捺染助剤 、写真フィルムの添加剤、消毒薬 、アセチルセルロース の溶媒、水産養殖用の麻酔薬 、有機合成化学 の材料に利用される。また、第4級アンモニウム化合物 と同様に、農薬用の殺菌剤 やゲル化安定剤 としても使用される。
製造
フェノキシエタノールは、フェノールのヒドロキシエチル化(ウィリアムソン合成 )によって、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属水素化ホウ素の存在下で生成される[ 1] 。
消毒薬としての効果
フェノキシエタノールは、グラム陰性菌 およびグラム陽性菌 、ならびに酵母型のカンジダ・アルビカンス に対して有効である[ 8] 。
危険性
フェノキシエタノールはワクチンの防腐剤としても使用されるが、潜在的なアレルゲン であり、注射部位で結節性反応を引き起こし得る[ 10] 。
また、フェノキシエタノールは神経細胞に毒性を有している可能性が有り、NMDAR媒介イオン電流を可逆的に阻害する[ 11] 。特にクロルフェネシン と併用した場合、乳児の中枢神経系の抑制、呼吸の抑制、嘔吐、下痢を引き起こす可能性がある[ 12] 。
規制
フェノキシエタノールは可燃性の物質であり、常圧での引火点は、121 ℃である[ 5] 。また、酸化剤とも激しく反応し得る[ 5] 。日本の消防法 では、危険物 第4類第3石油類に区分される[ 4] 。なお、オクタノール・水分配係数 は、1.16であり[ 5] 、したがって、どちらかと言えば親油性の化合物である[ 注釈 2] 。
脚注
注釈
^ 常圧における融点は13 ℃前後であり、寒冷地の冬期などでは、容易に固体に変化し得る。
^ オクタノール・水分配係数の定義式は、分液ロートなどでn-オクタノールと水に同時に溶解させた際に、{n-オクタノール中の濃度)を(水中の濃度)で割った値なので、この値が1を超えているという事は、水よりもn-オクタノールのような親油性の溶媒に溶解し易い事を意味する。
出典
^ a b Helmut Fiege; Heinz-Werner Voges; Toshikazu Hamamoto; Sumio Umemura; Tadao Iwata; Hisaya Miki; Yasuhiro Fujita; Hans-Josef Buysch et al. (2007), “Phenol Derivatives”, Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry (7th ed.), Wiley, doi :10.1002/14356007.a19_313
^ British Pharmacopoeia , 2 , (2009), ISBN 978-0-11-322799-0
^ David R. Lide, ed. (2010), CRC Handbook of Chemistry and Physics (90th ed.), CRC Press
^ a b c “2-フェノキシエタノール ”. 厚生労働省 職場のあんぜんサイト (2014年3月31日). 2018年9月23日 閲覧。
^ a b c d e “フェニルセロソルブ ”. 化学物質DB/Webkis-Plus 化学物質詳細情報 . 国立環境研究所(National Institute for Environmental Studies、日本). 20 November 2020 閲覧。
^ “Phenoxyethanol as a nontoxic preservative in the dissection laboratory”. Acta Anat (Basel) 136 (2): 155–158. (1989). doi :10.1159/000146816 . PMID 2816264 .
^ 徳永裕司、竹内織恵、高 玲華、内野 正、安藤正典 (2003). “市販化粧水中のフェノキシエタノールおよびパラベン類の分析法に関する研究 [Studies for analyzing phenoxyethanol and parabens in commercial lotions]” (日本語) (PDF). 国立医薬品食品衛生研究所報告 (121): 25–29. PMID 14740401 . https://www.nihs.go.jp/library/eikenhoukoku/2003/2003_notes_25.pdf .
^ “The antimicrobial activity of phenoxyethanol in vaccines”. Lett Appl Microbiol 18 (2): 115–116. (1994). doi :10.1111/j.1472-765X.1994.tb00820.x . PMID 7764595 .
^ Hans-P. Harke (2007), “Disinfectants”, Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry (7th ed.), Wiley, pp. 1–17, doi :10.1002/14356007.a08_551
^ M. H. Beck; S. M. Wilkinson (2010), “Contact Dermatitis: Allergic”, in Tony Burns; Stephen Breathnach; Neil Cox et al., Rook's Textbook of Dermatology , 2 (8th ed.), Wiley-Blackwell, p. 26.46, ISBN 978-1-4051-6169-5
^ “2-Phenoxyethanol: a neurotoxicant?”. Archives of Toxicology 74 (4-5): 281–287. (July 2000). doi :10.1007/s002040000110 . PMID 10959804 .
^ “FDA Warns Consumers Against Using Mommy's Bliss Nipple Cream ” (2008年5月23日). 2018年9月23日 閲覧。 [リンク切れ ]